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( 香水工場の )

香る生活


龍涎香、買いませんか?
高価な香料ですが、買いたい人は限られている (2017/12/01)


日本テレビ『沸騰ワード10』2017年10月27日放送分で取り上げられた龍涎香


テレビで龍涎香(りゅうぜんこう)


先日テレビを付けていたら、バラエティ番組で "龍涎香" が取り上げられていました。

龍涎香(りゅうぜんこう、別名アンバーグリス)と言えば、香水業界では、有名な4大動物香料の一つ。

一番有名な動物香料は、おそらくムスク。その次くらいに話題に上る香水原料です。

「なんで龍涎香が」と見始めたのですが、オチまできっちり、バラエティ番組仕上げとなっており楽しめました。


海岸で龍涎香を探す人


内容は、沖縄の海辺で龍涎香を探す人々の取材からはじまり、その鑑定のため大阪にある香料会社さんに持ち込むというストーリー。

我らから見れば、龍涎香が海岸に落ちていることは、まあ、普通はありませんので、オチはみえみえ。

にもかかわらず、龍涎香を売ったお金で何を買おうかと百貨店に立ちよって夢を膨らませる父娘の姿・・・

(鑑定してもらう前に、百貨店まできて皮算用やるかな?)

と、演出臭くもありましたが、夢を膨らませる父娘の姿がいじらしく、ドキドキしながら見ました。

結果は、龍涎香らしき物は発泡スチロールの塊と判明、残念。

ブツから漂う香りは、アンバーグリスの妖艶な香りではなく、たぶん磯臭い香りだったはずです。


香水には、龍涎香はほぼ使用されない


ところで、龍涎香は、希少な香水原料として高価なんですが、実は一般の香水にこの原料が使われることはほぼありません。

使用されるとしたら、龍涎香にマニアチックな思い入れがあるごく一部の顧客層をターゲットとする希少な製品、一般への販売を目的としないクローズドな製品くらいと思われます。

なぜなら、

(1) 龍涎香はワシントン条約の対象物

(2) 安定した品質&量の確保が不可能

(3) 品質がよい合成龍涎香の香料が存在する


香水原料としてのムスクが、香水業界では、ほぼ100%合成ムスクしか利用されない事情とよく似ています。

このように香水ブランドや香水メーカーでは本物の龍涎香を必ずしも必要としていません。

上のテレビ番組でも仮に「本物」と鑑定された場合、さて、買い取ってくれる売り先・買取業者が問題となります。誰が買い取ってくれるのでしょうか?


当社にも打診が来る龍涎香


「龍涎香を見つけました、興味ありませんか?」と、たまに電話やメールで連絡が来ます。

買い取り打診です。

日本の香水ブランドや香水メーカーでは関心は薄いでしょう。

その理由は上記事情以外にプラスして、香水原料取引の特殊な事情があります。

話が長くなるので割愛しますが、一言で言えば信用と実績がある商社や代理店を通さないと、香水原料はリスクが高すぎるという事情、いや恐怖心と言うべきか。

「海辺に打ち上げられた」というだけの出所不明の原料は、恐ろしいものです。

成分分析を行ったとしてもです。


ワシントン条約の規制


さらに海外産の場合は、ワシントン条約の規制がありますので、原産国証明以外に、輸出元政府及び日本国政府から発行される双方の正式な許可証も必要となります。

(学術的な理由がないと発行されないかもしれない)

ワシントン条約の規制対象物を所有し使用するということは、国産・海外産を問わず、正規に入手したブツであることを証明する何らかの書面や手続きをしていなければ、いつ誰から、後ろを刺されるかわかりません、そんなリスクがあります。

リスクが高く手続きも大変な龍涎香に関心を抱く香水ブランドやメーカーは少ないはずです、日本の場合。

もちろん、多彩な価値観を持つ経営者さんは山のようにおられますので、龍涎香を買いたいという企業もそれなりにあるでしょう。

しかし、平均的な日本の企業では少ない気がします。

日本では、むしろ、「お香」や「漢方薬」のメーカーさんの方が関心が高いかもしれません(あくまで個人的な空想)


世界の龍涎香の販路


現在、龍涎香が見つかる海域は、インド洋やアラビア半島周辺が多いようです。マダガスカル島とか。

これら地域で発見される龍涎香の一部は、世界に密輸されるものもあります。とくに世界の香水ブランドがひしめくフランスへの持ち込みが多いようです。

とはいえ密輸されたものは、(ここからは空想ですが)通常の企業では、少なくとも表向きは購入できませんので、裏ルートや闇チャネルへと流れていくものもあるでしょう。

麻薬もそうですが、密輸ビジネスはテロリストの資金源となるケースも多い。

テロリストへの警戒が国際的に高まる昨今、海辺で龍涎香を見つけても、その売り先となると、今の時代、なかなか厳しいものがありそうです。


(2017-12-01)
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