香水Bizブログ

日本の香水メーカー武蔵野ワークス
香水創りのブログ (誤字脱字多し、気になる方は近づかないで欲しい)

ついにAI香水、お披露目
AI (人工知能) による香水の実力はいかに? (2091/08/04)

summer
( "Egeo ON Me & ON You" by O Boticario。AI調香による、おそらく世界初の市販香水。「ON」のデザインが電源ボタンになっている、デジタル世代のための香水を表現? それとオリジナルボトルを投入している点で気合いの大きさがうかがえる。成功を祈りたい )


コンピューターが調香した香り


以前、紹介した「AI が香水を作る日はすぐそこ」の香水が発売された。

ブラジルのコスメ大手 O Boticario (オ・ボチカリオ)からリリースされた香水「Egeo ON Me & You」がそれ。

Boticario は日本でも展開しているブランドさんだが、AI香水は、今のところ日本では発売されていないようだ。

米国 Amazon や eBay も見てみたが、米国でも発売されていない模様。

簡単には入手できないので、どんな香りか、私からの生レポートはないが、海外の記事から、ちょこっとご紹介。


「香水におけるデジタル時代の到来」


参考にした記事はこちら → The Digital Era in Perfumes Arrives First in Brazil

IBM Research 社と世界的な香料会社 Symrise による AI香水開発は、昨年からニュースなどで話題だった。そして、早くも具体的な形となって、今年の5月に発売された。

調香とは、単品香料や調合香料を組み合わせて、目標とする香りを創り出すこと。

調香を行うためには、香料と化学の知識と経験が求められ、その上で香りのセンスが要求されるため、アート系のクリエーションと見なされる。


処方と販売データをディープラーニング


こうやってできた処方(フォーミュラ)は、調香師や調香師が所属する企業にとって一つの知的財産となるわけだが、Symrise には、170万件もの処方データベースがあるそうだ。

(処方を作成する当社から見れば170万件とは凄い。さずが創業200年の偉大な香料メジャーさんだ)

それらが、どこの国・性別・世代で人気だったかなどの販売データとともにインプットされ、ディープラーニングという手法で、売れる香水の成分構成を割り出したらしい。

ターゲットは、ブラジルの「ミレニアル世代」「ジェネレーションZ世代」、おおむね10代から30代まで。

「ミレニアル世代」とは1981~96年に生まれた世代(2019年現在、23~38才)、それ以降が「ジェネレーションZ世代」。デジタル・ネイティブで、リベラル的で、"今風な"世代。

AI香水も受け入れてくるのでは、という思惑もあるのだろう。


意外な処方


成分には、フルーツ・花・スパイス・ウッド・キャラメル・コンデンスミルクなどが採用された。

(コンデンスミルク? えーと、人間の調香師だと思いつきにくい発想かも)

AIが出した処方に対して、下記3種類の香水を試作:

(1) 人間調香師が、AIレシピを参考に自分で制作
(2) 人間調香師が、AIレシピに少し手を加える
(3) AIレシピのまま、人の手を加えない

これらをフォーカスグループ(ユーザーモニター)に試してもらうと、圧倒的に「(3) AIレシピのまま、人の手を加えない」が人気だったそうだ。


その評価は?


こうしてリリースされた商品だが、2ヶ月が経過した。

売れ行きや評判の程は、調べたが、よくわかりません。

どこかのサイトでは、5段階評価で、3個の「★」を獲得していた。

そのサイトで他の有名な香水を見ると、おおむね ★4個 くらいあったので、そのサイトの評価がフェアなものと仮定すれば、人々の世界初のAI香水の評価は、まずまずといったところではなかろうか。


私の感想


天気図から天気予報を行う能力は、もはや人間はAIにまったく勝てない。

また、MRI画像から病気の進行予想も、人はAIに勝てない時代。

AIは心揺さぶる音楽も絵画も描ける時代になりつつあり、調香もできる時代になると思う。

ただし、分析に使うデータだが、売れる香水は、香りの質とは別に、ブランド力やイメージや広告などで大きく変化する。

そのため、売れる香水と処方の相関関係を分析させても、なんか違うところに連れて行かれそう。元データの問題が今後の課題か?


行き詰まる香水業界の救世主?


しかし、香水業界には、AI香水に期待している人々も多いはず。というのは、実は香水業界は、もうかなり行き詰まっている。

毎日毎日、世界中でどこかのブランドさんが新作香水をリリースし続けているのだが、かなり似ており、新鮮味がないという状況に陥っている。

ラベルや見た目は変わるけど、肝心の香りが「今ひとつ、どこか他の製品と似ているな」と感じる人々が多くなっていると思う、世界中で。

この状況を打開するためには、いままで人類が体験したこともない驚くべき香料の発明しかない(100年前のシャネルNo.5 はこんな香水だった)。

しかし、そう簡単にできるものではない。

そんな中、AIなら既存の原料で人間が思いつかないようなコンビネーションで、かつアコードが取れた処方を提示できる可能性があり、この部分は大いに期待したいところだ。

(しかし、AI調香が一般的になったら、勝者は世界の大企業だけだろう。当社は廃業かも・・)




(2019-08-04)
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