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( 香水工場の )

香る生活


映画『パリの調香師』を勝手にレビュー
ボクら日本人にも共感できる映画 (2021/05/13)

(※画像はYoutubeに公開されている予告編から)

『パリの調香師』


今年1月、『パリの調香師』という映画が渋谷 Bunkamura に来ていて、観たいけど、人口密集度が高い渋谷、仕事が仕事だけに感染リスクは極力避けたい、どうしたものかと煮え切らないうちに劇場公開は終了。

幸い、5月からシネマ映画.comさんで放映が始まり、ついに観ました。

映画レビューはネットに多数でているので、このブログでは、調香師(パフューマー)の仕事場面にフォーカスして紹介。

すでにWikipediaに内容が掲載されていますので、映画を観た後の確認に利用させてもらいました。

(配給会社の人が書いたのかな?)

Wikipediaでは「フランスのコメディ映画」とされている。コメディではないけど、コメディタッチ、子供から大人まで安心して観られる内容です。

映画の原題は『Les Parfums』、日本語訳にすると「香水」・・うーん、短い普通名詞だけのタイトルなんですね。

主人公は、嗅覚障害でトップ調香師の座から転落した失意の中年女性アンヌと、離婚調停中の運転手ギヨーム。

ギヨームは子供の親権に関して、妻と係争中であり、また交通違反で仕事も失いかけている崖っぷち野郎。

アンヌのハイヤー運転手になることで二人は出会う。

「調香師さんゆえのシーン」が、いくつも散りばめられています。


タバコの場面



( タバコを車外に投げ捨てる = 一般に調香師はタバコを吸わないことになっている )

タバコ好きのギヨームからタバコを取り上げて、匂いを嗅いでタバコの銘柄「ウィンストン」を言い当て、しかも、その葉が「バージニア葉」と言って、車の外に投げ捨てる。

調香師としての能力とアンヌの傲慢な性格がさらっと描写されます。

現在の平均的なタバコは、ブレンド葉を使うし、フレーバーで風味を変えるので、ボクには、これが実話かどうかわからない。


ホテルシーツの場面



( 調香師あるあるネタかも )

ホテルにマイシーツを持参して、取り替える場面。これは実話ベースと思われる。

字幕には「洗剤のせいで、ガラクソリドの香りがする」。

ガラクソリドは合成ムスクの一種。専門用語なので、一般には「ムスク」と言った方が通りやすいかも。

洗剤には、だいたいムスクが入っています。

これが消費者の心を掴むのですが、一部の人には辛いんです。

日本でも、柔軟剤の匂いに苦しんでいる人は多数いますが、ボクもかなり苦手で、強烈なムスクは困りものです。

なお、アンヌは、出張の時、ドでかいスーツケースを3個~4個持ち歩きます。その中身を解説するシーンはありませんが、自分のシーツを持ち歩いていることがこの場面でわかります。

残りのスーツケースは?・・香料瓶を香料棚ごと持ち歩いているのかもしれません。


洞窟の匂い調査



( 「私は鼻だから」の場面 )

観光用の洞窟レプリカ制作で、匂いまで再現したいという観光課のリクエストで、洞窟の匂い調査に行きます。

ネアンデルタール人みたいな人々が暮らしていた洞窟でしょうか?

ギヨームは、この時点でアンヌの仕事内容を理解していない。このときの会話です:


アンヌ:「さっき嗅いだ匂いの香料を私が作るの」
ギヨーム:「可能なの?」
アンヌ:「ええ、私ならね。"鼻"だから。鼻よ、わかる?」
ギヨーム:「鼻くらい知ってます」


アンヌが言う「鼻 = Nez(ネ)」は「調香師(Parfumeur)」の別称。ギヨームは顔にある鼻と解釈します。


石鹸の場面


( 予告動画にはこの場面がありませんでした、映画から取るわけにいかないので、残念 )

日本では、石鹸の香りに対する関心が高く、それを香水にしてほしいという要望があるのですが、それをフランスの香水業界人や、調香師さんに話しても、ピンと来ない表情をする人が多い。

「石鹸香水に、全然関心ないんだな」とボクは思っていたが、この映画では、天才調香師が石鹸の香りに癒やされる描写がありました。

(日本人と同じじゃん)

設定では、子供の頃のバカンスの記憶だとか。


タクシー会社の社長との会話



( それって、何て職業だ?・・ニヤリとする場面 )


ギヨーム:「(アンナは) あらゆる匂いを覚えてる。例えば皿の上のレモンでも産地が分かるんだ、嗅ぐだけでね」

社長:「それって・・・何て職業だ?」

ギヨーム:「匂いを嗅ぐ仕事だよ」


職業名は、「調香師」なんですが、ここに至ってもギヨームは、答えられないし、社長も知らないところに、フランスでも調香師ってのは珍しい職業なんだな、と感じさせる場面。


調香の場面



( カエデを思わせるムエット台は、日本では入手できない )

調香台に多数の香料瓶、ムエット・・

香料棚や香料を保管するワインセラーのような設備も見えます。

詳しくは見せてくれませんが、雰囲気は伝わってきます。


その他の香りの場面



( 工場の悪臭対策コンサルタントとして・・ )

シャネル5番の原料として使用されているアルデヒドC-10 について、ゴミのような匂いで、オレンジの皮のような香りと表現されています。

バッグ(皮革製品)の刺激臭を、他の香りで中和する案件のシーンがあります。これはまさにフランスで香水産業が隆盛する歴史上の事実なんですが、ちょっと入れたかのかも。

芝生を刈ると、草の匂いが強く感じられます。草の匂いとして、青葉アルコールや、リファローム、トリプラールといった香料名が出てきました。

また、工場の悪臭対策を依頼されて、硫化水素、ベンズアルデヒドといった香料名がでてきます。

以上、長くなりましたので、これくらいで。

最後に気になる場面、というか、ボクが好きな映像を最後に紹介。

(調香とは関係ないけど)


ボクのお気に入りショット



( しびれちゃう~ )

ギヨームが勤務する配車サービス会社がこれです。

パリ市内の高級アパルトマンで暮らすアンヌとの対比が効くショット。

フランスは、都会に行っても田舎に行っても、すべてのモノが、デザイン的にクールに見えますが、この会社のたたずまいや「RESTAURANT」という看板には、しびれるう~

食堂も兼ねた多角経営のタクシー会社さんなんですね、車は最新鋭のメルセデスばかりのようです。

ボクには、どこか日本の田舎の、タクシー会社さんを彷彿させてくれる、懐かしい風景、国は違っても雰囲気、似てるな~と思いましたね。



(2021-05-13)
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