Home > ブログ
リスト表示 | (edit)
( 香水工場の )

香る生活


低アルコールやアルコールフリーの潮流
香水にも影響が及ぶかも? (2022/07/06)

アルコールフリー( アルコールフリー香水の制作は、技術的にはカンタンだが・・・ )


※本記事は昨年、投稿した記事を更新・加筆したもので元記事は削除 (長文)

世界的な脱アルコール・トレンド


これは飲むアルコールの話ですが、世界的に「脱アルコール」がトレンドとして進行中です。

その影響もあって、飲むアルコールだけでなく、アルコール自体がちょっと敬遠されがちな昨今。

コスメや医薬品でもアルコールに刺激を感じて、避けたがる人も昔より増えている印象です。

私は昭和生まれの人間ですが、大学生の頃、先輩は「今の連中は酒を飲まなくなった」とよく嘆いていました。

(昔の日本人には「酒が飲めること」に価値観を持っていた人が多かったような・・)

このように昭和の時代ですら、すでに脱アルコールが進んでいましたが、当時よりも現代はさらに進んでいます。

日本では、酒の席での失敗は大目に見てもらえる風潮があります。

海外では酔っぱらいは「自己管理ができないダメ人間」と見なされますが、日本にもこういう価値観が生まれつつあるかもしれません。


WHOは、飲用アルコールを駆逐したい!?


10年くらい前、WHOの下部組織である国際ガン研究機関(IARC) が、アルコールを「グループ1」に入れた時から、世界のトレンドが「飲まない」方向に加速しました。

IARCは、食品や物質の発ガン性に関して、「発ガン性あり」から「発ガン性なし」まで、「グループ1」から「グループ4」のカテゴリーを作成し、食品や物質が、それぞれどのグループに入るか継続的に発表しています。

それによるとお酒(アルコール飲料)は、なんとアスベストやカドミウムとともに「グループ1」

はじめてこの記事に接したとき信じられなかったですね。

お酒がアスベストやカドミウムと同じグループ?・・

IARCの意図的な誘導ではないかと疑いたくなりました。

これが原因かどうかわかりませんが、過去10年、欧米の酒造メーカーさんの身売りが増えている印象を受けます。

そして、それらを精力的に M&A しているのが、日本や中国の酒造メーカーといった構図を感じちゃいますね (タバコはそういう図式でしたね)

・Group 1「発ガン性がある」
 アスベスト、カドミウム、受動喫煙、アルコール飲料・・・

・Group 2A 「発ガン性がおそらくある(probably)」
 サーカディアンリズムを乱す交代制勤務、ディーゼルエンジンの排ガスなど

・Group 2B 「発ガン性があるかもしれない(possibly)」
 携帯電話、ガソリンエンジンの排ガス、鉛など

・Group 3「発ガン性が分類できない」
 原油、カフェイン、お茶・・

・Group 4 「発ガン性がおそらくない」


日本の若い世代も圧倒的に「飲まない派」へ


また、お酒を飲まないことが世界中の若い世代でブームになっているという記事もあふれている。

たとえば、

あえて“お酒を飲まない”人が急増中!?(Esquire)

脱アルコール。「ソバーキュリアス」という新トレンド(フィガロジャポン)

若い世代がお酒を飲まない現象は日本でも顕著です。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査(令和元年/2019年)」によると、「飲酒の頻度」で「毎日」飲む人は、50代なら21.0%なのに対して、20代では4.9%。


世界的な VOC規制の強化


「VOC」とは「Volatile Organic Compounds = 揮発性有機化合物」。

文字通り揮発する成分に対する規制です。

「VOC」といえば、イメージは自動車や工場の排ガス、塗料や有機溶剤などですが、アルコールもVOCの一つ・・というか、かなりの物質がVOCだし、ご家庭の料理ででる煙もVOCであり PM2.5。

VOC規制問題は、歴史も長く政治的経済的に広範囲に及ぶテーマだけに、私などが語れるテーマではありませんが、化粧品や香水に関して言えば、 VOC規制には、化粧品メーカーも影響を受けます。

ずばり言えば、アルコールなどの揮発成分は、やはり「なるべく出さない方が良い」という発想がスタンダードになってくると思われます。

とにかく「ゼロエミッション」(廃棄物を何も出さないこと)が理想とされる時代、直接的な有害性はないものも、とにかく出さない、または可能な限り少なくすることが求められます。

コロナパンデミックの現在、アルコール消毒液には、多くの人が毎日お世話になっています。

大量のアルコールが消費されている現状は、VOCポリシーからすれば、ゆゆしき事態だと思います。


ヘアスプレーが地球のオゾン層を破壊


VOC規制のもともとの出発点は、「ヘアスプレーが地球成層圏のオゾン層を破壊している」という仮説でした (1974年、アメリカ化学会の学会でのカリフォルニア大学ローランド教授の発表)。

当時ヘアスプレーのプロペラント(噴射剤)として、フロンガスが使用されており、フロンガスは冷蔵庫やエアコンの冷媒としても多用されていました。

オゾン層破壊は、皮膚ガンの増加を招きますが、皮膚ガンの発症比率が少ない日本では白内障リスクの方がより深刻。

当時は、たかがヘアスプレーでオゾン層破壊?と世界は懐疑的でしたが、次第に受け入れられ、わずか4年後の1978年、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、フロンガスの化粧品への使用を禁止しました。

すぐにエアゾール業界全体、冷蔵庫やエアコンなどの家電製品にも波及し、現在では世界的に全廃へと向かっています。

この課程で、フロンガスに代わって「代替フロンガス」が開発されましたが、な、なんとこちらは強力な地球温室効果があり、2017年モントリオール議定にて、こちらも全廃方向へと。


環境意識が高い米国カリフォルニア州


もともとカリフォルニア州は、自動車排ガスによる大気汚染がひどく問題意識を持つ住民が多いという背景があり、VOCに関する規制強化が進みました。

カリフォルニアでは、フロンガスだけでなく、すべての揮発性物質が規制対象となっています。

(正確には、炭素原子を1~10個を持ち、蒸気圧が20℃で0.1mmHg以上あるほぼすべての有機化合物)

炭酸飲料に含まれる炭酸ガスは、さすがに規制外ですが、たとえば、ワインの世界的産地として有名なナパバレーでは、ワイン製造時に自然発酵するエタノールなどの放出に関して、何らかの規制がされるべきではという議論がなされています。

我らの感覚からすれば、ブドウ果汁が発酵して生成されるエタノールが問題なの?と驚きますが、牛のゲップ・オナラによる「メタンガス排出問題」同様、まじめに議論されているようです。


牛ゲップによるVOC問題


牛ゲップ問題も、最初聞いたときは笑い話か?と疑いましたが、世界中の牛全体のゲップは、なんと「中国・米国に次いで世界で3番目に温室効果あり」とのこと。

国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界中で排出される温室効果ガスの約14%が家畜由来らしい。


世界の化粧品企業は、カリフォルニア州 VOC規制が気になる


カリフォルニア州以外の州やEU、日本などでの、一般的な VOC規制は、自動車排ガス、工場排ガス、塗料や有機溶剤などがメイン・ターゲット。

しかし、カリフォルニア州の VOC規制は、広範囲で厳しくかつ最先端であり、世界への影響力が大きいため、世界の大手化粧品メーカーやコスメブランドは、カリフォルニア州の VOC規制に対して敏感であると言われています。


カリフォルニアで香水売るなら、75%以下のローアルで


香水やコスメに関するカリフォルニア州の現在の規制 (California Air Resources Board (CARB)'s Consumer Product Regulation) は、下記の通り:

VOC Standard - Personal fragrance product : 75%

香水から出るであろうVOCの中で、エタノールが一番多いと思われるので、カリフォルニアで香水を売るためには、最低でもアルコール濃度75%以下が求められることになる。

カリフォルニア州以外の米国や日本ではこのような規制はありませんが、先はわからない。

以上のように、世界のトレンドとして、低アルコール、もしくはアルコールフリーの時代が来ようとしているようです。






(2022-07-06)
【関連記事】 ノンアルコール香水
search
月一メルマガ

TOP