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( 香水工場の )

香る生活


肌はオイルを吸収できる?
アロマテラピーの悩ましい疑問の一つが「キャリアオイルの肌への吸収」です。

アロマテラピーを勉強されている方やサロンなどで施術されている方はどのように教わりましたか?

古典的には「皮膚はカラダのバリア。体内の老廃物を排出しても、何かの成分を体内に取り込むことはない」とされてきましたので「吸収されない」と教わりましたか?それともキャリアオイルのネーミングの通り精油を肌深く運ぶためのキャリアなので、キャリアオイルは「吸収される」ということだったでしょうか?

正解は実はよくわからないです。

キャリアオイルに溶かし込んだ精油(エッセンシャル・オイル)は、血中や尿のなかで精油の成分が検出可能なので全部ではないにしろ一部「吸収されています」。ところが、キャリアオイルは血中や尿のなかで検出不可能です。

一つには分子量が大きく血管に吸収されないこともありますが、分解されて吸収されたとしても、血中にはすでにコレステロール(脂肪酸から生成される)やビタミンがありますのでそれが肌に塗布したキャリアオイル由来の脂肪酸やビタミンなのか特定できないためです。

肌に吸収可能な分子量は一説に500とされています(定説ではありません)。それは意味がないという説もあります。たとえば、直径1ミリの穴があり、そこに直径3ミリのボールが飛んできても絶対に通過できません。

ところが直径1ミリ、長さ100ミリの棒なら通る可能性があります。そのことから分子量から吸収の可否を判断するのは間違いで、吸収されるかどうかは「分子量だけでなく分子構造に依存する」ようにも思いわれます。

皮膚に成分が吸収されることを「経皮吸収」と言いますが、医学的な定義ではたんに肌に吸収されるだけでなく血管に取り込まれて血中に吸収されること(=全身に運ばれる)を指します。この意味での吸収に関して言えば、キャリアオイルの経皮吸収はされていないと考える研究者が多いのでは?

また、皮膚は肌に塗布されたオイルや薬剤の成分を選択的に吸収しているという人がいます。これは何を選択し、何を選択しないかそのメカニズムが解明されない限り、信じがたい説です。

吸収されるかどうかは皮膚による選択的・意図的な吸収ではなく、成分濃度と皮膚内部の濃度差による受動的な拡散現象とする考え方が有力です。

面白いところでは、キャリアオイルは肌表面で分解され小さな分子になって吸収されるという説もあります。私の知る限り、皮膚でキャリアオイルを分解する酵素が発見されたというニュースは聞きたことがありません。

細胞膜は油脂性であり水に対してバリア機能がありますが、キャリアオイルを構成する脂肪酸は細胞膜に「溶ける」、だから吸収されるという人もいます。

皮膚に吸収されるとは皮膚の細胞に取り込まれるのか、細胞間に取り込まれるのかも解明されていません。皮膚は多層構造(表皮、真皮、皮下組織)になっていますが、そのどの層まで到達するのかデータも少ないようです。それらしい写真を撮影した文献はありますが、どう評価してよいのやら?・・・


わからないことばかりです。


少なくとも「皮膚はカラダのバリアなので何も通さない」という説は間違っているます。たとえば、皮膚科で多様されているステロイド外用剤や、肌に貼るタイプのニコチンパッチ、ニトログリセリン(狭心症用のクスリ。ダイナマイトの原料にもなりますね)は成分が皮膚に浸透し効果が発揮されます(経皮吸収)。

精油にしてもステロイドを構成する合成ホルモンにしろ、ニコチンもニトログリセリンも、これらは分子量は小さく吸収され一部は血液に乗って全身に運ばれます。経皮吸収されていることは事実です。

一方分子量が大きく皮膚通過が可能とされる分子量と比較すると同程度で、どうかなと思われる脂肪酸類(キャリアオイル)はその吸収メカニズムが不明です。しかし、塗布後しばらして肌がサラサラになる場合は、血中まで到達するかどうかは別として、実感としてある程度肌に吸収されることが感じられます。

そこで経験的にある程度吸収されていると私は考えています。

しかし、その吸収量や吸収率はキャリアオイルの種類によってもまったく違いますし、カラダの部位によっても違います(人の皮膚で一番吸収性がよいのは、口や胃腸を除いて、順番に陰部->脇の下->頭部->首など皮膚の薄い部分だそうです。足の裏などは何も吸収しないかも?)。個人差もあるし、同じ人でも時間帯や状態によっても変化します。

コンシンのオイルの理想は、肌への吸収です。吸収され肌表面でのベタつきをなくし、水洗いしても洗い落とされず、効果を継続的に発揮してくれることです。

キャリアオイルの肌吸収に関する説はいろいろあり、また根拠なく断言する先生方も多く混乱気味ですが、正しいデータはありません。

データがないので、試作しては試すことを繰り返すしか開発手法は見あたらないようです。


試す、試す、試す・・・
(2007-07-02)
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