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( 香水工場の )

香る生活


過剰な製品回収騒ぎ
昨今、食品偽装問題が多発して返品や商品回収が相次いでいますが、メーカーサイドにいる私が感じるあの種のニュースは「あれだけの回収製品、どうやって廃棄する?」という身に迫る思いです。

たとえば、数年前ある大手飲料メーカーさんが日本では使用が許されない食品香料(食品フレーバー)を使用して数十万本という清涼飲料水を回収しました。

意図的に使用したのではなく世界の大手香料会社から仕入れた調合済みフレーバーに配合されていたものですが、調合香料(食品フレーバー)の成分は企業秘密として公開されないことが世界のスタンダードですので、その大手飲料メーカーさんの「知らなかった」という弁明は信じてよいと思います。

この使用許可がなされていない成分は、危険だから禁止なのではなく、日本ではまだ使用許可を申請した人がいないというだけの、行政上の理由で許可申請がされていない成分(=禁止成分)でした。実際世界的に使用され実績のある成分です。

日本の食品衛生法では添加物の使用許可は認可制となっています。

認可制度では、危険か危険でないかの判定の前に、そもそも誰かがすでに厚生労働省に申請したかどうかが問題になります。申請されていないモノはすべて禁止成分です。そういうシステムなのです。

申請のためのコストは、実験資料の提出やその他の費用で一説に数千万円から数億円がかかります。その資料には動物実験の結果データも必要です。

いったん許可されるとすべての人が自由に使用可能となります。

つまり、最初に許可を願い出る人だけに負担がかかるため相当使用を迫られた成分以外は誰も申請しないわけです。

実際、申請されずに使用されている成分も現在でも存在すると推測されます。それらは内部告発などによって表面化することもありますが、氷山の一角と思われます。

さらに言うと輸入食品には日本の認可制度では本来禁止添加物がかなり豊富に含まれていることが簡単に推測されますが、ここでは突っ込みません。

この事件の後、認可制度そのものに対する問題意識が高まりましたが、社会のシステムが硬直化している印象を残しただけの後味の悪い事件でした。

この無認可添加物事件の報道の際、日本を代表するある新聞社は、悪党どもを吊し上げろ!と言わんばかりの厳しい報道をしていました。実状を知る業界関係者は報道内容の浅薄さと消費者を煽るような内容に怒りさえ感じたと言います。

攻撃された世界最大の飲料会社は、事情がどうであれ、日本では法律違反には違いなくひたすら平身低頭、自主回収を行っていました。

その後どのように数十万本の清涼飲料水が処理されたかは明かではありません。

そのまま川に流されるようなことはないと思いますが、過剰な回収騒ぎは社会全体の不利益ですし環境への負担が伴いますので心が痛みます。

(2008-08-20)
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