香水biz+香る生活


贋物(ニセモノ)でもハッピー
テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」のおかげで骨董品ブームが起きたり古美術品に関心を抱く人が増えました。逆に古美術品を投機目的、商売として参入する層も増えて骨董品市場の混乱気味になっていないかと余計な心配もしてしまいます。

「開運!なんでも鑑定団」の功罪は、いろいろ賛否両論あると思いますが、番組自体はエンターテイメント・ショーですので娯楽として割り切って楽しんでいる方も少なくありません。

掘り下げた分析より、ショーらしく「ホンモノ」「ニセモノ」そして「いくら」と、わかりやすく一刀両断にスパッと行くところに、茶の間の私たちも、出品者と同じくドキドキハラハラしながら期待と失望を共感できます。

番組を見ていると見事な絵画や渋い陶器がアップでグーと映し出されると・・・「オレなら欲しい!」とテレビを見ていて心中声に出すことがあります。

ところが、多大な期待も、鑑定結果で「ニセモノ」と宣言され、会場から爆笑を浴びたり、本物でも極端に市場価格が安かったりすると出品者の表情がうつろに緩むみます。その微かな哀愁がまたなんとも人生の悲哀を感じさせます。

骨董収集が転売目的なら「ホンモノ」か「ニセモノ」かは、売上のリアルな分かれ目ですが、自分の趣味で集めているコレクターさんなら自分が「好き」かどうかが価値の分かれ目であり、自分が持ち込んだ特別な一品が、仮にも「ニセモノ」と鑑定されても、好きなら気にしないし、持ち続けるし、使い続けるコレクターが多いのではないかと思います。

鑑定団で付けられるプライスの定義を私は知りませんが、常識的に考えてると「予想市場価格」でしょうか?

持ち主がそれを販売できる価格でもなければ、鑑定人がそれを買い取る価格でもなく、鑑定人がもし市場でそれを売りさばくとしたら「自分なら、これくらいの値段を付ける」という値段で、売れるかどうかは別問題。

プライスの決定は、それを欲しがる人は多いか、希少性があるかなどマーケティング事情が重要であり、作品の芸術的価値や資料的価値、モノのよさとは必ずしも連動していません。

だから、真のコレクターには、肩書きにはとらわれず、品質・内容重視で、好きならニセモノでもいいという人も少なくないかもしれません。



ながながと骨董ファンの話をしてきましたが、香りファンも似たようなことが言えるかもしれません。

先日、あるお客さまから海外で購入したある精油が100%ナチュラルピュアかどうか判断できませんか?という質問をいただきました。現地で気に入り海外旅行のお土産に購入されたそうですが、帰国後、現地で説明されたように本当に「100%ナチュラルピュア」かどうしても気になるそうです。理由は「お値打ち」だったからのようです。

「その香りは好きですか?使い心地に問題はありませんか?」

とても気に入っているし、日本でも売っていたらもっと買いたいくらいとのこと。それなら問題はないと思います。

「100%ナチュラルピュア」かどうかはそもそも技術的に判別不可能です。先日投稿した「花の香気成分はナゾだらけ、ガスクロ体験」は香気分析の限界に触れました。

ヨーロッパでは100%ナチュラルピュアと言いながら合成香料がよく使用されると聞いています。それは天然香料の定義が日本と違うためですが、「オーガニック」「有機栽培」「無農薬」なども同様な状況を呈しています。近年はオーガニックなどのサーティフィケイト(有機証明書)を発行する認証会社によって定義されはじめましたが、まだまだ混沌としています。

たとえば、バラのある香気成分はバラからも採れますし、石油からも合成可能ですが、出来上がった成分はそれがバラ由来か石油由来か分子構造的に判別不可能です。あるヨーロッパの香料会社の方はそれをどちらも「天然香料」と説明していました。会社の正式な見解かどうかは不明ですが、腰を抜かしたものです。

天然由来成分は一般に純度が低く雑多な微量成分や農薬、さらに言えばヒ素や水銀などの重金属などが微量に混じっていることが多いので、変な話ですが、これらが観察されると天然由来の証拠の一つになります。

逆に不純物の混入が少なく純度が極めて高いと合成香料の可能性が高いです。合成香料は純度が高いため医薬業界からは愛されます。

このように分析には技術的に限界がありますし、分析コストの問題もありますので、香水メーカーでさえ原料香料の仕入れは、トレーサビリティがしっかりしていて、信用できる取引先から仕入れるというスタンス的な取り組みを重視しています。

「どこかの貿易会社や商社で安く売っていたから」とか「知らない営業マンが行商に来たから」というプライスだけの理由で仕入先を決定するのは恐ろしくてなかなか取り引きできないものです。

(余談ですが、信じがたいような価格で化粧品原料が売りに出されることがありますが、ちゃんとした事情があるものもあるはずですが、一般の化粧品はそのスポット的なお値打ちには手を出さないところも多いと思います。)

そんな背景があり「100%ナチュラルピュア」かと質問されても、お答えできない状況です。だから、自分の感性と理性とで判断し選んで頂くしかありませんとお答えするのがやっとです。一応原則は「購入は信用できるショップで」であること。

一回限りの出店や出品したショップなどでは手を出さす、何年も専門的にやってきているショップなら仕入れも信用のあるルートを使用しているでしょうし、自分達である程度品質を知っていますので鑑識眼もありデタラメな商品は扱わないと思います。観光地のお土産やさんで販売されているものは私などは若干心配です。

しかし、最終的には使う本人が自分が気に入るかどうかが最大の分かれ目であり、それが「好き」で、使用しても問題が起こらなければ、天然であろうと合成であろうと関係ないと私は考えています。

ある方から持ち込まれた精油は鼻が利かない私でも「これは天然だけではムリ」と即断したものがありますが、ご本人は心底その香りに惚れられていました。これが大切です。
(2008-04-13)
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