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( 香水工場の )

香る生活


生命が発する香り、菜の花
スイレンやハス(ロータス)は、瞑想中の大仏さまの台座として描かれるため神秘的な印象を人々に与え続けます。これは仏教の影響を受けた地域の人々だけの話かと思いきや、エルメスのトワレ「Un Jardin sur le Nil(ナイルの庭)」のパッケージに描かれたロータスを見たとき、日本的な印象を受け、ヨーロッパ人がロータスに抱く神秘的なイメージを垣間見た気がしました。

私は仏教系幼稚園に通い、朝に感謝・夕べに祈りという生活を過ごしました。お寺のいたるところに彫り物や置物として装飾されるスイレンやハス。また、法事・仏事で焚かれる線香の匂いや、葬儀やお通夜で見たスイレンやハスを象った走馬燈が強く記憶に残り、私にとってスイレンやハスは天国とイメージがリンクしています。

※ちなみに私にはスイレンとハスの違いがあまりつきません。

しかし、どちらかというとスイレンやハスは「死語の世界」のイメージです。神秘的で永遠で深く孤高です。


一方、私にとってもう一つ天国にイメージがリンクする花が「菜の花」と「れんげ」です。これらはどちらかというと現世に近いというか、庶民的な天国の花のイメージです。

え「彼岸花」?、いやいや。それもまた奥が深いのですが、その話題はまた後日させていただくとして、今日は今東京で真っ盛りの「菜の花」について。

私の叔母は若い頃、胸の病気で死にかけましたが、10時間以上に及び手術を受け一命をとりとめました。手術中天井が一面、菜の花畑の大パノラマになったそうです。

そして、そこには清流が流れ、穏やかな空気が漂っていました。吸い込まれるように菜の花畑に入り込もうとすると呼ぶ声が聞こえ、はっと目を覚ますと手術がちょうど終わったところでした。

なんとか下界に戻れて、感謝の気持ちで満たされる話です。

そのお花畑を今でも彼女は「本当に綺麗だった」と回顧しています。

「その小川を渡りきっていたらどうなっていたか?」と空想しながらこの話を私は聞くわけですが、これも日本中で体験者が絶えない「三途の川伝説」でしょうか。

このような危機的状況では自分もそういう幻影をビジュアルに大画面で見る機会が来るかもしれないと感じています。

この究極のシチュエーションで大地を覆い尽くす花が菜の花であることは、私たち日本人にとって菜の花がどれくらい特別な花か、その一面を物語ります。

何年も前から社内的に「菜の花、お願いします」と企画を上げていますが、あのオシッコ臭い独特の香りは「気は確か?」と言われます。

菜の花は晴れた日、暖かくなるととたんに香りを強めます。ミツバチを呼び寄せているに違いありません。香りの質まで濃厚になっていきます。そのため菜の花の香りには静寂の中に響く「ミツバチの羽音」と「暖かくほがらかな日」というイメージがリンクしています。

今年も東京には菜の花の季節が来ています。思うに菜の花は、香水のように液体の自然揮発を利用した芳香ではなく、能動的に生命活動として香りを発しています。菜の花の香り作りを困難にしている一つの原因です。

生命の香りにかなう訳がありません。

仮に「菜の花オードパルファン」ができても世間の笑いモノになるか「ウケ狙い?」ととられ、ビジネス的には有望と言えないこのプロジェクト。何年かかけて実現したいと考えています。

(2008-04-15)
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