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( 香水工場の )

香る生活


ワインと香水の意外な共通性#6(よい製品はよい畑作りから)
素材がよくなければ料理にも限界がある。ワインの葡萄、香水の香料植物
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グラースという街をご存じでしょうか?香水関係者の間では「香水のメッカ」などと表現されることもあるフランス南部・プロバンス地方の一都市です。プロバンスの穏やかな気候に育まれる豊かな香料植物、ジャスミンやミモザ、ローズ、ラベンダー・・・などが豊富だったため香料産業が起こり、それが香水産業へと発展、人口のかなりの人々が香水・香料関係の仕事に尽き、また世界的なパフューマーを多く輩出する土地として有名です。

しかし、現在グラース周辺はすでに香料植物の産地と呼ぶにはふさわしい状況とは言えません。産業も香料・香水産業からバイオテクノロジーなどのハイテク産業に移行している印象を受けます。

第二次世界大戦以降、人件費の高騰や経済的要因の変化により香料植物の産地は世界中に拡大しています。それはどこの国でも同じこと。北海道はハッカ(ミント)の世界的産地として昭和10年代には一時世界のミント需要の9割を供給したとも言われていますが、第二次世界大戦後、世界の主要産地はブラジルに移り、そのブラジルのミントもやがてパラグアイなどへと主要産地の地位を奪われていきました。

グラースの香料植物の産地も変遷しています。たとえば、ローズ。香料産業としてのローズ栽培の主要産地はブルガリアをはじめトルコ、モロッコなど中東・北アフリカへと移動しました。イラン産のローズには近年勢いがでてきましたし、今後中国やアフガニスタンへと主要産地が変遷していく可能性があります。

しかし、グラース周辺の丘陵地帯を車で走るとジャスミン畑やラベンダー畑を維持する農家がまだまだ点在し、一家総出でジャスミンの刈り取りを行っている光景を目にすることができます。それは日本の農家が一家総出で稲刈りに勢を出している風景とそっくりな田園風景です。

それを見たとき産業として成り立つのか?と疑問がわきましたが、多くは特定ブランドさんや特定のメーカーさんなど販売先はすでに決まっていたり、ブランドさんの特定製品専用のジャスミンやローズだったりします。つまり委託栽培や契約栽培となっているケースがほとんだそうです。

あるブランドさんは、自社製品(香水)の原料を自社専用の畑から採れた香料を使用することで有名です。すべての原料を自社畑だけから全量まかなうことは絶対に不可能ですし、また社員が農作業に従事しているわけではないでしょうが、そういう心意気には感心させられます。

多くのブランドさんが大資本に買収され系列化される過程でこのような粋な心意気は維持できなくなる傾向にありますが、「よい香水の源によい畑」があることを忘れないようにしたいと思います。

ちなみに上記のブランドさんはワインのシャトー(ブドウ畑とワイン醸造所)なんかも買収されており、驚くばかりです。ボルドーの有名な伝統のシャトーでワイン好きの方には当時は大きなニュースだったようです。もっともフランスの5大シャトーは、いまやすべてロスチャイルド家やピノーグループのようなブランド大手に買収されているそうで、畑作りの意味も少し変遷しているのかもしれません。


(続く・・・)

ワインと香水の意外な共通性#8(保管方法)
ワインと香水の意外な共通性#7(オリ)
ワインと香水の意外な共通性#6(よい製品はよい畑作りから)
ワインと香水の意外な共通性#5(優勢なフランス語)
ワインと香水の意外な共通性#4(アッサンブラージュで奥深く)
ワインと香水の意外な共通性#3(明記されない賞味期限)
ワインと香水の意外な共通性#2(香りを楽しむモノ)
ワインと香水の意外な共通性#1(似た関係)
(2009-07-03)
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