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( 香水工場の日常 )

ローアル香水 (低アルコール香水)
Low Alcohol = 低アルコール香水のモニター製品リリース (2021/10/04)

試作中のローアル香水モックアップ( 手作り感あふれる試作中ローアル香水。モックアップでラベルは自分で作成した手張り。プレゼント時には印刷されたラベルで、商品っぽいものになりますからご安心ください )


ローアル香水とは?


「ローアル」とは「ローアルコール、Low Alcohol」の意味で命名しました。

「低アルコール香水」ともいいます。

平均的な香水の場合、アルコール濃度は何パーセントかご存じですか?・・「85%~95%」

(案外、高濃度でしょ?)

当社では、この濃度を「50%~60%」に低減した香水製品の試作を行っています。

現在、コロナパンデミックゆえ、アルコール消毒は日常的な風物詩となっていますが、これらのアルコール濃度は「60%~70%」程度。

だから、アルコール消毒液と同等か、やや低い濃度での香水制作を模索中です。


ローアル香水のモニター製品版、11月からプレゼント


今月、数百本のモニター製品の製造が現在工場で行われています。

ボトルは、当社の4mLキューブボトルを使用。

香りは、今回下記2品しか製造しません:

(1) 白檀2019 (Sandalwood)
(2) 柑橘系 (Kay)

11月からプレゼント予定ですが、すべてのお客様にプレゼントすると数日でなくなりますので、お買い物金額などで制限を設けさせて頂く予定で、詳細は、今月10月下旬までに決定公開します。


アルコールフリー香水の定義


ローアルではなく、ノンアルやアルコールフリーといった場合、これらは文字通り、アルコール未使用で、アルコール濃度0%を差します。

とはいえ、化粧品業界内では、まだアルコールフリーの厳密な定義はありません

有機物には自然発酵という自然現象がありますので、濃度完全0%は、なかなか難しいと思います。

濃度0%でも、厳密には、やはり0%~1%未満くらいで「アルコール濃度0%」という表現に落ち着くかも知れません。


アルコールフリー香水の試作は?


いずれにしてもアルコールフリー香水とは、明示的にアルコール未使用であることはまちがいないでしょう。

アルコールフリー香水の試作もやっていく予定です。

こちらは、アルコールに代わる代替基剤の選定が、まだできていませんので、ちょっと先の話です。



以上、本日の記事「ローアル香水」はここまで。

ここから下は、ローアル香水のテーマや問題点を書きました。

製造側の事情で退屈と思いますので、飛ばしていただくか、斜め読み推奨。


なぜ、今ローアル香水? ローアル香水開発の背景は?


ローアル香水開発の背景は何でしょうか?

下記3点の要因があります:

(1) 配送規制の強化

(2) 世界的な脱アルコール・トレンド

(3) 世界的なVOC規制の強化


(1) 配送規制


アルコールを含む化粧品・香水・ネイル製品・へアスプレーなどは、航空機への搭載が厳しくなっていることは、前回の記事で書いたとおりですが、国内トラックによる陸上輸送も厳しくなる傾向があります。

たとえば、当社が通販配送をお願いしているヤマト運輸さんでは、近年、下記のように、規制配送物として「(引火性液体)」が追加されました:

(引火性液体)化粧品・香水・ネイル製品・ヘアスプレーなど、アルコール濃度が60℃以上または濃度が不明なものは禁止

この規制によって、個人の方が香水の配送をヤマト運輸さんに依頼することは、すでに厳しい状況になっていると思われます。

多くの通販会社では、現在でも香水の配送は可能ですが、特例的な措置のようですので、いつ全面禁止になるか不明です。


(2) 世界的な脱アルコール・トレンド


これは飲むアルコールの話ですが、世界的に「脱アルコール」がトレンドとして進行中です。

その影響もあって、飲むアルコールだけでなく、アルコール自体がちょっと敬遠されがちな昨今。コスメや医薬品でもアルコールに刺激を感じて、避けたがる人も昔より増えている印象です。

今時の若い世代は、本当にお酒を飲まなくなりました。

私は昭和の人間ですが、大学生だった頃は、先輩に良く「今の連中は酒を飲まなくなった」と言われました。

昭和の時代ですでに脱アルコールは進んでいましたが、当時よりも現代は、さらに進んでいます。

日本では、酒の席での失敗は大目に見てもらえます。酔っぱらいに比較的優しい風潮が日本にはありますよね。

これは、おそらく世界的には珍しい日本だけの特異な文化・価値観。

海外では、酔っぱらいは「自己管理ができないダメ人間」と見なされる。


WHOは、飲用アルコールを駆逐したいのかも


10年くらい前に、WHOの下部組織である国際ガン研究機関(IARC) が、アルコールを「グループ1」に入れた時から、世界のトレンドが「飲まない」方向に動き出した感じです。

IARCは、食品や物質の発ガン性に関して、「発ガン性あり」から「発ガン性なし」まで、「グループ1」から「グループ4」のカテゴリーを作成し、食品や物質が、それぞれどのグループに入るか継続的に発表しています。

それによるとお酒(アルコール飲料)は、なんとアスベストやカドミウムとともに「グループ1」。

はじめてこの記事に接したとき信じられなかったですね。お酒がアスベストやカドミウムと同じグループ?・・

IARCの意図的な誘導ではないか、と疑いたくなりました。

これが原因かどうかわかりませんが、過去10年、欧米の酒造メーカーさんの身売りが増えている印象を受けます。

そして、それらを精力的に M&A しているのが、日本や中国の酒造メーカーといった構図を感じちゃいますね (タバコはそういう図式でしたね)

・Group 1「発ガン性がある」
 アスベスト、カドミウム、受動喫煙、アルコール飲料・・・

・Group 2A 「発ガン性がおそらくある(probably)」
 サーカディアンリズムを乱す交代制勤務、ディーゼルエンジンの排ガスなど

・Group 2B 「発ガン性があるかもしれない(possibly)」
 携帯電話、ガソリンエンジンの排ガス、鉛など

・Group 3「発ガン性が分類できない」
 原油、カフェイン、お茶・・

・Group 4 「発ガン性がおそらくない」


日本の若い世代も圧倒的に「飲まない派」へ


また、お酒を飲まないことが世界中の若い世代でブームになっているという記事もあふれている。

たとえば、

あえて“お酒を飲まない”人が急増中!?(Esquire)

脱アルコール。「ソバーキュリアス」という新トレンド(フィガロジャポン)

若い世代がお酒を飲まない現象は日本でも顕著です。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査(令和元年/2019年)」によると、「飲酒の頻度」で「毎日」飲む人は、50代なら21.0%なのに対して、20代では4.9%。


(3)世界的な VOC規制の強化


「VOC」とは「Volatile Organic Compounds = 揮発性有機化合物」。

文字通り、揮発する成分に対する規制です。

「VOC」といえば、イメージは、自動車や工場の排ガス、塗料や有機溶剤などですが、アルコールもVOCの一つ。

というか、かなり物質がVOCだし、ご家庭の料理ででる煙もVOCであり、PM2.5です。

VOC規制問題は、歴史も長く、政治的経済的に広範囲に及ぶテーマだけに、私などが語れるテーマではありませんが、化粧品や香水に関して言えば、 VOC規制には、化粧品メーカーも影響を受けます。

ずばり言えば、アルコールなどの揮発成分は、やはり「なるべく出さない方が良い」という発想がスタンダードになってくると思われます。

とにかく「ゼロエミッション」(廃棄物を何も出さないこと)が理想とされる時代、直接的な有害性はないものも、とにかく出さない、または可能な限り少なくすることが求められます。

コロナパンデミックの現在、アルコール消毒液には、多くの人が毎日お世話になっています。大量のアルコールが消費されている現状は、VOCポリシーからすれば、ゆゆしき事態だと思います。


ヘアスプレーが地球のオゾン層を破壊?


VOC規制のもともとの出発点は、「ヘアスプレーが地球成層圏のオゾン層を破壊している」という仮説でした (1974年、アメリカ化学会の学会でのカリフォルニア大学ローランド教授の発表)。

当時ヘアスプレーのプロペラント(噴射剤)として、フロンガスが使用されており、フロンガスは冷蔵庫やエアコンの冷媒としても多用されていました。

オゾン層破壊は、皮膚ガンの増加を招きますが、皮膚ガンの発症比率が少ない日本では白内障リスクの増加の方がより深刻かもしれません。

当時は、たかがヘアスプレーでオゾン層破壊?と世界は懐疑的でしたが、次第に受け入れられ、わずか4年後の1978年、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、フロンガスの化粧品への使用を禁止しました。

すぐにエアゾール業界全体、冷蔵庫やエアコンなどの家電製品にも波及し、現在では世界的に全廃へと向かっています。

この課程で、フロンガスに代わって「代替フロンガス」が開発されましたが、な、なんとこちらは強力な地球温室効果があり、2017年モントリオール議定にて、こちらも全廃方向へと。


環境意識が高い米国カリフォルニア州


もともとカリフォルニア州は、自動車排ガスによる大気汚染がひどく問題意識を持つ住民が多いという背景があり、VOCに関する規制強化が進みました。

カリフォルニアでは、フロンガスだけでなく、すべての揮発性物質が規制対象となっています。

(正確には、炭素原子を1~10個を持ち、蒸気圧が20℃で0.1mmHg以上あるほぼすべての有機化合物)

炭酸飲料に含まれる炭酸ガスは、さすがに規制外ですが、たとえば、ワインの世界的産地として有名なナパバレーでは、ワイン製造時に自然発酵するエタノールなどの放出に関して、何らかの規制がされるべきではという議論がなされています。

我らの感覚からすれば、ブドウ果汁が発酵して生成されるエタノールが問題なの?と驚きますが、牛のゲップ・オナラによる「メタンガス排出問題」同様、まじめに議論されているようです。


牛ゲップによるVOC問題


牛ゲップ問題も、最初聞いたときは笑い話か?と疑いましたが、世界中の牛全体のゲップは、なんと「中国・米国に次いで世界で3番目に温室効果あり」とのこと。

国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界中で排出される温室効果ガスの約14%が家畜由来らしい。


世界の大手化粧品企業は、カリフォルニア州の VOC規制が気になる


カリフォルニア州以外の州やEU、日本などでの、一般的な VOC規制は、自動車排ガス、工場排ガス、塗料や有機溶剤などがメイン・ターゲット。

しかし、カリフォルニア州の VOC規制は、広範囲で厳しくかつ最先端であり、世界への影響力が大きいため、世界の大手化粧品メーカーやコスメブランドは、カリフォルニア州の VOC規制に対して敏感であると言われています。


カリフォルニアで香水売るなら、75%以下のローアルで


香水やコスメに関するカリフォルニア州の現在の規制 (California Air Resources Board (CARB)'s Consumer Product Regulation) は、下記の通り:

VOC Standard - Personal fragrance product : 75%

香水から出るであろうVOCの中で、エタノールが一番多いと思われるので、カリフォルニアで香水を売るためには、最低でもアルコール濃度75%以下が求められることになる。

カリフォルニア州以外の米国や日本ではこのような規制はありませんが、先はわからない。

以上のように、世界のトレンドとして、低アルコール時代が来ようとしているようです。

おわり。


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(2021-10-04)
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