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( 香水工場の )

香る生活


香りの花:葛の花
(2025/07/20)

クズの花( 案外身近に咲いているクズの花、秋の七草の一つ )


クズとは?


「葛(クズ)」はマメ科のツル性植物の一種だが、おもしろいことに「葛」を「カズラ」と読むと、ツル性植物全般の総称となる。ツル性植物とは自立せずに塀や柵、他の植物などに巻き付いたり這ったりして伸びていく植物のこと。

ツル性植物には非常に多くの種類がある。たとえばバラ科のノイバラやモッコウバラ、ブドウ科のブドウやヤマブドウ。野菜ではキュウリ、スイカ、カボチャなど(これらはすべてウリ科)。

そして忘れてはならないのが、『ジャックと豆の木』に登場するマメ科植物。フジやインゲン、そして今日のテーマであるクズもマメ科である。

『ジャックと豆の木』では、豆の木が一夜にして天まで伸びるが、これはツル性植物の旺盛な生命力を象徴しているように思える。ツル性植物には、巻き付いた他の植物を枯らしてしまうほど強靭なものも多く、他の植物からは“ハゲタカ”的存在として恐れられているのではないかと私は感じている。

(以前、山奥でニシキヘビのように太く成長したフジがスギやヒノキの巨木を枯らしている光景を目撃して以来、そう思うようになった)


人々の生活に深く根ざすクズ


クズはそんなツル性植物の一つで、日本全国の山野に広く自生している。都市部の河川沿いや公園などでもごく普通に見かける存在だ。秋の七草の一つでもある。

クズの根からは多量のデンプンが採れるため古くから「葛粉(くずこ)」として利用され人々の飢えを救ってきた。現在でも葛餅(くずもち)や葛切り(くずきり)などの和菓子、葛根湯(かっこんとう)や葛湯(くずゆ)といった漢方・養生食品の原料として重宝されている。


クズの花と香り


夏から初秋にかけて咲く花は赤紫色の小花がブドウの房のように密集しており、ブドウジュースのような甘くフルーティーな香りを漂わせる。強く香る個体も多く視覚よりも先に香りで「どこかに葛の花が…?」と気づくこともある。

山野を歩いているとき、ふとクズの花の甘い香りに出会うとその芳香に心が踊る。当社の香水『葛の花は、そんな感動を元に制作した香りである。

クズの花


このようにクズは、食用・薬用・観賞用の面で非常に優れている一方、成長すると幹が木質化し他の樹木に巻き付いて枯らしてしまうほどパワフルで、厄介者としての一面も持つ。人類にとって実に複雑な関係を持つ植物である。


米国で嫌われるクズ


米国ではクズは侵略的外来種に指定されている。Wikipediaによれば、クズがはじめてアメリカに紹介されたのは1876年のフィラデルフィア万国博覧会とのこと。

クズの葉は栄養価の高い牧草として、またマメ科植物であるため根に根粒菌を持ち土壌を肥沃にするメリットがあった。加えて根が深く張るため土壌流出を防ぐ目的で栽培が奨励された時期があった。

しかしフィラデルフィア万博から150年後、日本のクズはアメリカ南部を覆い尽くす勢いで拡大し続けている。

その旺盛すぎる生命力と繁殖力により送電線、建築物、そして固有植物までもが被害を受けている。駆除活動も行われているが、その除去は多くの場合困難を極める。

現在では「南部を飲み込んだ蔓(Vine that ate the South)」と呼ばれ、生態系に対する重大な脅威として認識されている。日本では米国ほどの被害はないように思うが、その差はわからない。





(2025-07-20)
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