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( 香水工場の )

香る生活


安眠香水の時代?
医師の処方による「睡眠薬」、処方箋なしで買える「睡眠改善薬」、「安眠枕」に「安眠体操」、「安眠CD」・・・世は安眠の時代のようです。ボクら香水関係者が安眠に目を向けないわけがないのに、考えてみればなぜか「安眠香水」は少ないようです。その理由はこうです。

ヨーロッパ生まれの香水は、生まれも歴史もテーマはずっと同じです。

ロマンチックでセクシーであること。

女を、男を、最大限に色っぽくするという使命を帯びる香水は、安眠とはほど遠い関係にあります。愛されるにしても眠れないくらい愛されること(結果的にクマができる=アイシャドウ)であることをテーマとしています。

シングルフローラルを追求する武蔵野ワークスのフローラル・フォーシーズンズは、実はヨーロッパ香水の王道とは言えず、ヨーロッパ人にすれば本流でないし「古典っぽい」とさえ評価されかねません。

先日、取引先との打ち合わせ中、あるヨーロッパの香水を見せてもらいました。ハーブ類ではありません。香水としてまじめに製品化の途上にある香りでしたが、テーマは「安眠」でした。香りはセクシーというより落ち着きがあり深いものでした。

世の中には、さまざまなブランド香水やセレブ香水が発売されていますが、それらはほぼすべてジボダン、IFF、フィメルニッチ、シムライズなどのような大手香料会社やそこに所属するパフューマーさんによって調香され制作されます。そのため、大手香料会社さんに来る開発依頼案件を見れば、次の時代のトレンドを予測するにはよいヒントとなります。香料会社さんがお持ちの案件内容を知る由はないのですが、世間話程度ならパフューマーネットワークに漏れ出てきます。

トレンドをごく簡単にいえば「ファンタスティックから自然への回帰」と言えるかもしれません。

ここでいう「ファンタスティック」とは、シャネル5番以降、現代まで綿々と続く合成香料による未知の香りを中心とするモダンパルファンの潮流を指します。90年代、エコロジーや環境意識が高まりからグリーンノートやオゾンノート(マリンノート、アクアノート)といった自然界の香りが好まれましたが、それでもアーティフィシャルでケミカルどころかキャローンのようなニューケミカルが主役だったりしました。

見せてもらった安眠香水にはEU規制に指定された26種類のアレルギー性香料フリーで、さらに「バレリアン」という天然香料が高濃度に配合されていました。バレリアンとはヨーロッパ原産の草。日本名「かのこ草」。バレリアンは、精神の鎮静作用があるとされるギャバを脳内で分泌促進する安眠ハーブとして有名です。本当に強い安眠作用があるか私自身試したことがないので何ともいえませんが、一般にはそのように評価されいます。

「EU規制に指定された26種類のアレルギー性香料フリー」は、さらりと書きましたが現在の市販香水で、実現できている製品は現状ほとんどないでしょう。

この一例からもヨーロッパの香水が、ハーブ系やアロマ系へ歩み寄る気配を見せていると感じさせられます。安眠香水が、はたして消費者に歓迎されるのか不明ですが、あってもおかしくないテーマです。

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(2007-07-03)
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