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( 香水工場の )

香る生活


暗い時代こそ、豪華な香水を

名香の話題「JOY」


名香「JOY」(ジョイ、喜び)

この名に恍惚とした思い出を重ね合わせる人もいるかもしれません。初出荷は1930年。ネーミングがすばらしいですよね。


香水の危険なネーミングは平和の裏返し?


現代になるに従い香水の製品名には、刺激的で危険で毒々しい名前が増えてきます。

思い当たるでしょうか?他社さんの製品ことであまり言及できませんので、心の中だけにとどめておきますが相当あります。

そういう危険なネーミングは実は、逆に平和な社会の世相を反映している面もあると思います。


ジャスミン香水として有名な「JOY」


Jean Patou(ジャン・パトゥ)の香水「JOY」は、香水の勉強を始めると名香として必ずラインアップされる一つです。

私のイメージでは、ジャスミンの華やかな香りがフランス・プロヴァンス地方の暖かさと開放感を感じさせてくれる香りです。

この香水のおもしろさは、中身の実力ももちろんですが、中身のことは今さら香水ファンのみなさんにお話しても「釈迦に説法」なので、ビジネスサイドでこの製品の逸話をお話します。

この逸話、タイミングがドンピシャリ。まさに「リーマン・ショック」(※1)の年として歴史に刻まれるこの2008年を語るにふさわしいエピソードです。

(※1)2008年9月15日に米国の投資銀行リーマン・ブラザーズがサブプライムローン問題により破綻し世界金融危機の要因となった事件。1929年の世界同時不況の再来とも言われた。


ブランド総合プロデューサー


ジャン・パトゥ氏は、パフューマーではなく一般にはクチュリエと呼ばれます。

クチュリエとは、裁縫師で英語のテーラーに当たりますが、現在ではファッションブランド、特にオートクチュールのデザインと制作の総責任者的な意味で使用されます。

映画制作でいえば、制作の総責任者であるエグゼクティブ・ディレクター(総監督)あたりかな?

しかし、ジャン・パトゥ自身、メゾンを構えたブランドオーナーであり会社オーナー。映画制作でいえば資金調達からアウトプットのディストリビューションと販売まで企画し実施しますので、映画やテレビ界ならエグゼクティブ・プロデューサーに近いかもしれません。


現代マーケティングの開拓者


要はジャン・パトゥはたんなるデザイナーではなく辣腕のビジネスマンでありブランドビジネスの仕掛け人なのです。ことのほかアメリカ市場を重視した彼の営業スタイルにもビジネスマンとしての才覚が見え隠れします。

有望顧客(今で言うところの「セレブ」さんたち)やマスコミ関係者を多数招いて派手なファッションショーやパーティを頻繁に開くことは、現在のファッション業界ではごく普通のマーケティングですが、ジャン・パトゥが切り開き確立させた手法です。


「世界一高価な香水」


そんなジャン・パトゥ社がリリースした香水が「JOY」。

JOYは、以前から個別に販売されたらしいのですが1930年に一般販売へと踏み切られます。

1930年は、1929年10月ニューヨーク証券取引所の株価大暴落を契機として始まった世界大恐慌勃発の翌年です。大恐慌の余波は1930年代を通じて続き第二次世界大戦の原因の一つにもなりました。

企業倒産の連鎖と世界中の都市で溢れる失業者。モノが売れなくなる時代です。カネが流れなくなる時代です。このような悲惨な時代にジャン・パトゥが投入した香水はなんと

「世界一高価な香水」

でした。こんへんの正確な事情は不明ですので推測ですが、おそらくジャン・パトゥ氏本人が意図的に「世界一高価な香水」と思われるようなプライシングで価格を設定したはず。

(高価なジャスミンをふんだんに使用しただけではそんな価格にならない)

意図的に「世界一高価な香水」であることを公言し・宣伝し・利用したことは想像に難くありません。


大不況にあえて高額香水をリリースする意図


人は生来的に明るいモノ、明るい話、明るい生き方に惹かれることをジャンは知っていたんですね。

私の先輩は株投資で大穴を開けるすると豪華な食事に行って心と気持ちをチャージしていましたが、曰く「落ち込んだときこそ、旨いモノを食え!」だそうです。それに近いものを感じます。

暗黒の時代に「世界一高価な香水」を手にする明るさと興奮。

価格だけならいくらでも世界一高価な香水を作れますが、それが「世界一」にふさわしいストーリーを備え「世界一」にふさわしいイメージにまで昇華させることができた彼の手腕にこそブランドビジネス仕掛け人として才能が存分に発揮されています。

失業者が溢れ治安の維持さえおぼつかない世界の大都市でJOYは記録的な大ヒットを飛ばします。このようにしてJOYは香水史の歴史に新しい一ページを刻むことになりました。


リーマン・ショックと香水


今年2008年は、1929年の世界大恐慌を凌ぐ波乱の一年となりました。

経済評論家たちはそろってそう言いますし、規模的にも1929と比較にならないほどの大きな経済損失が発生していますが、私たちの実感として現在「大恐慌真っ只中?」かどうかは人によって意見が分かれます。

ひょっとしたら影響は今後徐々に加速し私たちの生活を苦しめるのかもしれませんし、もしかしたらお偉いさんたちが煽るほど大袈裟な不況にならずに済むかもしれません。



「香水苦戦」の2008年クリスマス商戦


今年のクリスマス商戦。欧米では「香水苦戦」がささやかれています。

香水は、欧米ではクリスマスプレゼントの毎年トップファイブに入る超ポピュラー商品。毎年さまざま商材がクリスマスプレゼントの人気ランキングの順位表を塗り替えますが、香水は安定して毎年ランキング入りを果たします。

しかし、今年多くのブランドさんが、クリスマス商戦を前に例年より香水の生産計画を「弱気調整」との裏事情が聞こえています。不況時、実用性の乏しい香水はコストカットの最初の方でカットされる出費であることは欧米も日本も変わりないようです。

さあ、どうなるのでしょうか?



香水マーケティングの事例


いずれにしても私たちの「明るいモノ、明るい話、明るい生き方」に惹かれるという生来の本質は昔も今も同じハズ。もし来年「新世界一高価な香水」が世の中に現れるようなことがあれば、それは世界が本当に大不況に陥った証拠になるかもしれませんね。


香水を学ぶ人にだけでなく、香水マーケティングを学ぶ人にJOYは多くの教訓を残した名香なりました。


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(2008-12-02)
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