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香りと脳の関係 (8)・・・嗅覚のメカニズム
脳科学は驚異的な進歩を遂げていますが、人の脳はまだまだ未知の世界のようです。嗅覚の仕組みも不明なことが多く、メカニズム解明にはまだ遠い道のりがありそうです。


鼻から脳までの道筋


鼻腔内にの上皮には、香り分子をキャッチするレセプター(受容体)があります。ここでキャッチされた分子によって嗅神経が興奮し微弱な電位変化を起こします。これが電気信号とした脳に伝達されます。

このレセプターから脳までの神経回路は、解剖学的にかなり判明しています。

・鼻腔内の香りレセプター →
・嗅神経 →
・嗅球(きゅうきゅう=嗅神経の1次ニューロン) →
・嗅索(きゅうさく=嗅神経の2次ニューロン) →
・扁桃体(へんとうたい) →
・海馬


扁桃体から先は?


「扁桃体」とは脳の重要なパーツで、感情や情動の中心的な役割を担うとされます。

鼻腔内でキャッチされた香りの信号は、嗅覚細胞の神経(軸索)に伝わり、その先の「嗅球」という部分でシナプス結合している「嗅索」という神経にわたされます。

それが扁桃体に繋がっていることがわかっていますが、嗅索は扁桃体だけでなくその周辺の脳の様々なパーツにも繋がっています。

複雑なので、ここでは扁桃体だけに繋がっているとして、扁桃体は「海馬」(かいば)というパーツに連絡しています。

扁桃体までは単線的なルートでしたが、扁桃体は大脳の一部でありこの先の物理的なルートは複雑に交差しあい信号がどのように、そして、どこに伝達されるかわかりにくくなっています。

(※脳内の信号は、もしかしたら選択的なルートで伝達されるのではなく繋がっている回路全方向にブロードキャストして受け取る側で選択的にアクティブになっているのかも)

最先端のfMRI装置などで観察すると、香りの信号は下記のパーツに伝達されることがかわってきました:

・視床下部 → 視床 → 大脳皮質の嗅覚野(きゅうかくや)
・海馬 → ?

「視床下部」とは自律神経の最高中枢です。血圧・呼吸・体温・ホルモンの分泌など生体を24時間安定運用させるための指令中枢です。

「海馬」は、記憶とくに短期記憶の形成と保持を担うとされます。海馬は認知症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病などで萎縮が発生することでも知られています。海馬はストレスによってダメージを受けやすい反面、脳内では珍しく再生可能な脳とも考えられています。

扁桃体・視床下部・海馬は「大脳辺縁系」(だいのうへんえんけい)と呼ばれます。

大脳辺縁系は、理論的な思考を担う「大脳皮質」と比較して、脳の進化における初期に形成された原始的な脳と考えられます。


香りは大脳辺縁系をダイレクトに刺激する


嗅覚は人間の五感の中で特殊です。見る・聞く・味わう・触るなどの他の感覚は、脳の視床を経て大脳皮質の視覚野・聴覚野などに伝達されますが、嗅覚だけは大脳辺縁系に直結します。

この事実は、香りやニオイはそれだけダイレクトな刺激を脳に与えることができると予想される根拠の一つになっています。香りで強烈な記憶再生のフラッシュバックが発生する一因もここにあるのかもしれません。


しかし、あまりわからない


どのように香りの信号が、脳のどの部分に伝わり、どうのように信号が処理されているのか、まだ未知の部分が大きくはっきりとしたこはわかっていません。

これは嗅覚だけの問題でなく脳科学全般に言えることです。解剖学によって脳の物理的な構造、神経繊維のつながり方などはある程度判明していますが、生命活動における脳内の情報の生成・伝達・処理方法はあまりわかっていません。

嗅覚の働きの解明は、現在、fMRIという装置が活躍しているそうです。これは最先端の装置で、脳内の血流の動的な変化をビジュアルに表現し記録できます。生体を傷つけずに脳内を観察できる驚くべき装置です。

しかし、脳神経の活動と血流の相関関係は事実としても、血流は脳内の情報処理そのものの活動ではありません。逆に言えば、脳内のこのパーツが活動しているというくらいしか判断できません。最先端の装置をもってしても脳の活動を解明するためには、道のりはまだまだ険しいですね。


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※この記事は(8)嗅覚のメカニズム)

香りと脳の関係 (8)嗅覚のメカニズム
香りと脳の関係 (7)香りで痩せる
香りと脳の関係 (6)リアルに蘇る記憶
香りと脳の関係 (5)香り成分は脳に届く?
香りと脳の関係 (4)再生可能な嗅神経
香りと脳の関係 (3)香りと脳内血流
香りと脳の関係 (2)香りと認知症
香りと脳の関係 (1)なぜ脳の話
(2015-08-29)
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