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( 香水工場の )

香る生活


九州の櫨7 化粧品原料としてハゼ蝋
●化粧品原料としてハゼ蝋

私は製造中のハゼ蝋(櫨蝋)をひとつまみ手に取り口の中に放り込んでみました。天然物の成分試験は高度な分析機を駆使しますが、最終的には香料も原料も「味で見る」という職人芸的な研究者は少なくありません。

実はパフューマーの中にもそれが本物の天然香料かどうかを判断する際、最終的に舐めたり口に入れる人がいます。私は残念ながら味で成分まで判別する職人芸は持ち合わせていませんが、まねごとでなめて噛んでみるとハゼ蝋(櫨蝋)にはまったく味がありませんでした。

まさに噛むほどにロウを噛む感触(当たり前ですが)。上下の歯にまとわりつく粘り気はハゼ蝋(櫨蝋)の特徴である強靱さを感じさせます。

植物蝋(ベジタブルワックス)として世界的に流通しているものは、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、そしてハゼ蝋(櫨蝋)(ジャパンワックス)。動物蝋としてミツロウ(ビーズワックス)、鉱物蝋としてパラフィンワックスなどがあります。

それぞれに特徴があり優劣は付けられないと思いますが、化粧品の原料という観点からすれば化粧品メーカーとってはパラフィンワックスがもっとも優れているとする意見が圧倒的。

たとえば、コスト。たとえば、安定供給性。

その他、純度の高さ(純度の高さは品質の安定性となります)、安全性(アレルギー反応を起こす人が少ないとされています)、汎用性、色・匂い(化粧品原料は一般に無色無臭か白色無臭が好まれます)・・・どれもこれもパラフィンワックスは絵に描いたような理想的な原料です。

しかし、私はこの目前に独特の匂いとともに高温で流れ出ているオリーブ色の素朴なハゼ蝋(櫨蝋)を使用して化粧品を作りたいという気持ちでいっぱいです。

植物性であること、天然であること、環境循環型の産物であること、トレーサビリティーがしっかりしていること、そして日本産であること。私は日本産の原料を使用することにとても心惹かれます。魅力的な要素がいっぱいです。

それにしても化粧品原料としてのハゼ蝋(櫨蝋)は個性が強すぎます。濃厚なオリーブ色、独特の強い匂い。それらは扱いにくさの要素ですが、強い粘靱性は魅力です。

その粘靱性はリップクリームには向きそうです。天然成分で「落ちない口紅」を作ることは実現不可能ですが、ハゼ蝋(櫨蝋)なら強い強度で残り、そして適度に落ちて、しかも完全に安全なリップケア用の製品になる予感がします。

この粘靱性の立て役者が「日本酸」(Japan Acid)。

ハゼ蝋の成分はパルミチン酸などがメインですが、「日本酸」というとても珍しい成分が含まれています。


日本酸(にほんさん)とは、脂肪酸の一種ですが、ハゼ蝋に特徴的な成分で他の植物性オイル・バター・ワックスに見られない成分です。当然動物性のワックスや脂肪にもありません。実は中国産のウルシの木にも日本酸が含まれていることが発見されていますが、その含有率は零点数パーセント。

一方日本のハゼ蝋(木蝋・モクロウ)には数パーセント〜5パーセント含有されています。これがハゼ蝋(木蝋・モクロウ)の「腰の強さ」(粘靱性)を支えているのではと考えられています。

両端をカルボキシル基にはさまれた21個の炭素鎖有機化合物とのことです。ネーミングについておもしろい記述がありまあした。

「これはドイツの化学者が20世紀の初めごろ、日本産のハゼの木の木蝋から単離したものです。なぜ日本酸というネーミングになったか、詳しいところは明らかになっていません」

日本酸のおかげで、天然ながら「付けやすく落ちにくい」リップクリームが期待できそうです。

また、スキンケアとして、荒れた肌の強力な保護クリームとしてはどうでしょうか?・・・様々な構想やアイデアが浮かんできますが、試作や検証してみないとわからないことばかりです。他の成分との相性も気になります。


(2007-11-24)
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