( 香水工場の )
香る生活
調香技術普及協会セミナー
今日は、調香関連のちょっとプロっぽいセミナーをご紹介します。パフューマーを目指す人も、そうでない人も調香に関心ある方にはおすすめのセミナーです(2015/09/17)
新作フレグランス・セミナー(写真はイメージでセミナーとは無関係です)
プロのパフューマーさんが多く集まるコミュニティです。調香関連分野の関係者が集まり、情報交換や切磋琢磨して調香技術の向上をはかることが会の趣旨です。
しかし、「調香って何だ?」や「調香って楽しい!」を啓蒙する活動も行われていますので、一般の方々にも公開されたコミュニティです。
この協会では春・秋の年2回、フレグランスセミナーが開催されています。
2015年秋のセミナーは10月3日(土)です →
◆「フレグランス香調トレンドセミナー2015 秋」
◆2015年10月3日(土)14:00〜16:00
◆ハロー会議室淡路町(東京メトロ丸ノ内線 淡路町駅近く)
こちらのセミナーの特徴は、私的に言えば、世界でリリースされた「新製品フレグランスを味わおうセミナー」。
通常は、過去半年くらいの間にリリースされた世界の新作フレグランスの中からチョイスされた製品数点を、グループワーク形式で実際に嗅ぎながら行われます。
今回、題材に取り上げられる製品は当日のお楽しみです。
新作フレグランスには、各ブランドさんによる新作発表会やプロモーションなどのセミナーもありますが、これらは「売る」ためのイベントです。
調香技術普及協会さんのセミナーは、最前線フレグランスの香りの官能評価などを通じて香りの新しいトレンドや技術を研究することが目的ですので、香りに対してより純粋な立場で学べると思います。
申込期限の前日にこんなお知らせをするのも気が引けます。すみません。私がうっかりしていたためご案内が遅れました。
しかし、定期的に開催されているセミナーなので、今回がダメでも次回があります。ご関心ある方はご検討されてはいかがでしょうか?
詳細 → 日本調香技術普及協会
(2015-09-17)
新作フレグランス・セミナー(写真はイメージでセミナーとは無関係です)
日本調香技術普及協会とは?
プロのパフューマーさんが多く集まるコミュニティです。調香関連分野の関係者が集まり、情報交換や切磋琢磨して調香技術の向上をはかることが会の趣旨です。
しかし、「調香って何だ?」や「調香って楽しい!」を啓蒙する活動も行われていますので、一般の方々にも公開されたコミュニティです。
春・秋のフレグランスセミナー
この協会では春・秋の年2回、フレグランスセミナーが開催されています。
2015年秋のセミナーは10月3日(土)です →
◆「フレグランス香調トレンドセミナー2015 秋」
◆2015年10月3日(土)14:00〜16:00
◆ハロー会議室淡路町(東京メトロ丸ノ内線 淡路町駅近く)
セミナーの特徴
こちらのセミナーの特徴は、私的に言えば、世界でリリースされた「新製品フレグランスを味わおうセミナー」。
通常は、過去半年くらいの間にリリースされた世界の新作フレグランスの中からチョイスされた製品数点を、グループワーク形式で実際に嗅ぎながら行われます。
今回、題材に取り上げられる製品は当日のお楽しみです。
新作フレグランスには、各ブランドさんによる新作発表会やプロモーションなどのセミナーもありますが、これらは「売る」ためのイベントです。
調香技術普及協会さんのセミナーは、最前線フレグランスの香りの官能評価などを通じて香りの新しいトレンドや技術を研究することが目的ですので、香りに対してより純粋な立場で学べると思います。
申込みは9月18(金)まで
申込期限の前日にこんなお知らせをするのも気が引けます。すみません。私がうっかりしていたためご案内が遅れました。
しかし、定期的に開催されているセミナーなので、今回がダメでも次回があります。ご関心ある方はご検討されてはいかがでしょうか?
詳細 → 日本調香技術普及協会
(2015-09-17)
( 香水工場の )
香る生活
新作「金木犀2015」、現在生産中
(後日補足) 結果的に本製品は、商品化され、12月1日リリースされました → 金木犀2015
キンモクセイの香りを求めて、今年も試行錯誤してきました。奇跡は起きませんでしたが、すばらしい香りができました(2015/09/01)
キンモクセイの花の香りは、とっても人気がありますし、私自身、惹きつけられる香りです。しかし、これを香水で再現しようとすると、何か次元が違うんですよね。
現在ではハイテクな分析機があり、非常に微量な成分まで解析可能です。そして、それらの成分を混ぜ合わせるとキンモクセイの香りになるはずです。が、これが、それらしくはあるのですが、あの憧れる香りにはなりません。
キンモクセイの天然香料は使用しますが、天然香料自体、キンモクセイからは遠い香りです(でも使った方がリアルになるようです)。
多くのパフューマーさんがトライして、似た結果になっています。
武蔵野ワークスでは、今年、新作オードパルファム「金木犀2015」を制作しました。
昨年から試作してきましたが、社内だけでは間に合わず外部のパフューマーさんにも参加いただき、ようやく8月末に処方をフィックスして製造ラインに入れました。
新作オードパルファム「金木犀2015」(4mL 非売品)
新作「金木犀2015」は、生花のキンモクセイにはまだ遠いと思いますが、世界市場では到達可能なトップクラスのキンモクセイでしょう。
香りは、ナチュラルなフルーティーさが出ていますし、キンモクセイの嫌みや雑味のようなクセの部分も出ています。
フルーティさだけですとリアリティがなく子ども向けキャンディのような軽さになるので、嫌みな部分が大切ですが、生花の究極のアコードには、まだ秘密が隠されているようです。
キンモクセイの生花も、一部の方には苦手に感じられる香りですが、当然、金木犀2015もすべての方におすすめする香りではありません。
金木犀2015 ミニキューブ・ボトル
今年、金木犀キャンペーンを開催します。金木犀2015はキャンペーンプレゼントになりました。当社の金木犀フルボトルをご購入される方、ぜひ金木犀2015をお楽しみください。
詳細は → 金木犀キャンペーン(10/1-10/24)
(2015-09-01)
キンモクセイの香りを求めて、今年も試行錯誤してきました。奇跡は起きませんでしたが、すばらしい香りができました(2015/09/01)
憧れのキンモクセイ
キンモクセイの花の香りは、とっても人気がありますし、私自身、惹きつけられる香りです。しかし、これを香水で再現しようとすると、何か次元が違うんですよね。
現在ではハイテクな分析機があり、非常に微量な成分まで解析可能です。そして、それらの成分を混ぜ合わせるとキンモクセイの香りになるはずです。が、これが、それらしくはあるのですが、あの憧れる香りにはなりません。
キンモクセイの天然香料は使用しますが、天然香料自体、キンモクセイからは遠い香りです(でも使った方がリアルになるようです)。
多くのパフューマーさんがトライして、似た結果になっています。
新作「金木犀2015」
武蔵野ワークスでは、今年、新作オードパルファム「金木犀2015」を制作しました。
昨年から試作してきましたが、社内だけでは間に合わず外部のパフューマーさんにも参加いただき、ようやく8月末に処方をフィックスして製造ラインに入れました。
新作オードパルファム「金木犀2015」(4mL 非売品)
金木犀2015の特徴
新作「金木犀2015」は、生花のキンモクセイにはまだ遠いと思いますが、世界市場では到達可能なトップクラスのキンモクセイでしょう。
香りは、ナチュラルなフルーティーさが出ていますし、キンモクセイの嫌みや雑味のようなクセの部分も出ています。
フルーティさだけですとリアリティがなく子ども向けキャンディのような軽さになるので、嫌みな部分が大切ですが、生花の究極のアコードには、まだ秘密が隠されているようです。
キンモクセイの生花も、一部の方には苦手に感じられる香りですが、当然、金木犀2015もすべての方におすすめする香りではありません。
金木犀2015 ミニキューブ・ボトル
キャンペーンプレゼントとして
今年、金木犀キャンペーンを開催します。金木犀2015はキャンペーンプレゼントになりました。当社の金木犀フルボトルをご購入される方、ぜひ金木犀2015をお楽しみください。
詳細は → 金木犀キャンペーン(10/1-10/24)
(2015-09-01)
( 香水工場の )
香る生活
2015年、ブルガリアローズできばえ
ブルガリアでは5月からダマスクローズが一斉に開花し花の収穫が始まります。このハーベストシーズンは6月前半にはおおむね終了します。今年は非常によい品質ながら記録的な不作となりました(2015/08/31)
2016年の記事はこちら
(2015年クロップのローズオイルと2014年、2013年の比較スメリング)
今年もブルガリアでは、例年通り収穫を終え、蒸留されたローズオイルは、数週間の熟成期間を経て、早ければ7月には世界中のマーケットに向けて出荷されます。
予約しておいたローズオイルが当社に届いたのは8月上旬でした。
届いた日に、さっそく残っているスタッフを集めてスメリングです。今年の品質は「Not bad」と聞いていましたが、目を閉じるとムエットの先から香るダマスクローズは、パワフルで華やかさが輝いていました。
念のため 2014年、2013年のローズオイルをひっぱりだして比較してみます。
やはり、輝きがある香りです。
「今年はよい出来映えだなー」
その夜、ブルガリアの取引先には「今年の出来映えは、明るくパワフルだ!」とメールしました。ショッキングな返信はその数日後にきました。
品質は悪くないが、収穫量は例年の「7割減だった」という内容です。
ここ数年、天候は大荒れ。地球温暖化の影響か、暑すぎる年が多くなる一方、記録的な長雨と冷夏に見舞われることもあり、ブルガリアローズの栽培には試練が続いています。
しかし、70%の減産?・・・ビジネス運営も、ひどく厳しいのではと感じられ唖然としました。
私は昔、穀物商社に入りたいと思い、そんな会社さんを調べた時期がありましたが、彼らが農家ではなく商社になるこを目指した理由の一つが、農家の宿命である不作・豊作のリスクを非常に嫌っていたからということを知りましたが、今回のメールでも厳しさを思い知らされました。
今年の天候は比較的穏やかで恵まれていました。不作の原因は、3月頃の霜という説もありますが、総合すると不明なようです。とにかくなぜか花の付きが悪かったとのこと。
花の付き方は、前年の7月から8月ころの気候とコンディションの影響を受けるという学説があるらしく、昨年の驚異的な長雨と冷夏が原因の可能性も考え得るとの意見でした。
また、ネットで拾った現地の新聞などによると花摘み(季節労働者)の「労働力不足」や「労使関係の悪化」といった経営上の問題も顕在化してきているようです。
とにかくローズの摘み取りは短期決戦型で、一時に大多数の労働力の集中投下が必要です。これができないと途端に収穫量に影響を与えます。そんなに都合よく労働力を集めることは世界中厳しいはずです。
香料植物のプランテーションは、典型的な労働集約型の産業です。そのため先進国では、おおむね成立しないとされます。当然、日本も香料植物の生産が産業として成立するケースはきわめて希です。
富良野のラベンダー畑のように観光化するなど多角化がない限り厳しいでしょう。
ブルガリアは、1990年代の共産党政権の崩壊時から長年、経済不況に苦しんできましたが、経済的な安定と成長が始まるとこの問題は避けがたいと思われます。
お隣のトルコもダマスクローズの世界的な生産国ですが、こちらも生産量減産のニュースがありました。
Rose oil prices in Turkey expected to skyrocket as production falls
(不作によるローズオイル高騰、トルコ)
7千トンの予想が、5千5百トンとまりとなったというニュースです。4年連続の不作で、このうち今年は最悪の年となった模様です。原因は「極端な暑さと霜」とのこと。こちらも大きな天候不順をかかえているようです。
当然、品薄からローズオイルは高騰します。この高騰には「skyrocket」(スカイロケット)という表現が使用されており、どんなけ高くなるのかと恐怖しました。
ただでさえ、円はユーロに対して相当弱いですが、世界的なローズオイル不足で、さらに高騰するかと思うとややインパクトを感じます。
高くなるだけでなく、そもそもローズオイルを入手できないという事態も発生するでしょう。
そういう状況も知らずに当社は例年通りのレートでローズオイルを購入できました。
取引先からは何も言われていませんが、取引先の好意だったのかと、この記事を書きながら確信しています。
もともと当社は、ローズオイルに対して厳かな気持ちというか、今時の言い方なら「リスペクト」を払ってきました。ローズオイルの香りは神聖にさえ感じられるローズバカです。
しかし、これだけ希少になってくるとこの気持ちもますます強くなります。
今年もよいローズジェルを制作したいし、ローズ香水もよりいっそう大切な気持ちで制作したいと思います。
※武蔵野ワークスでは、ブルガリア産ダマスクローズ(ブルガリアンローズ)から香水の『ブルガリアンローズ・ジェル』『ローズの贈り物』などを生産しております。
(2015-08-31)
2016年の記事はこちら
(2015年クロップのローズオイルと2014年、2013年の比較スメリング)
2015年ローズオイルの到着
今年もブルガリアでは、例年通り収穫を終え、蒸留されたローズオイルは、数週間の熟成期間を経て、早ければ7月には世界中のマーケットに向けて出荷されます。
予約しておいたローズオイルが当社に届いたのは8月上旬でした。
今年のオイルのできばえは?
届いた日に、さっそく残っているスタッフを集めてスメリングです。今年の品質は「Not bad」と聞いていましたが、目を閉じるとムエットの先から香るダマスクローズは、パワフルで華やかさが輝いていました。
念のため 2014年、2013年のローズオイルをひっぱりだして比較してみます。
やはり、輝きがある香りです。
「今年はよい出来映えだなー」
その夜、ブルガリアの取引先には「今年の出来映えは、明るくパワフルだ!」とメールしました。ショッキングな返信はその数日後にきました。
信じがたい不作の年
品質は悪くないが、収穫量は例年の「7割減だった」という内容です。
ここ数年、天候は大荒れ。地球温暖化の影響か、暑すぎる年が多くなる一方、記録的な長雨と冷夏に見舞われることもあり、ブルガリアローズの栽培には試練が続いています。
しかし、70%の減産?・・・ビジネス運営も、ひどく厳しいのではと感じられ唖然としました。
私は昔、穀物商社に入りたいと思い、そんな会社さんを調べた時期がありましたが、彼らが農家ではなく商社になるこを目指した理由の一つが、農家の宿命である不作・豊作のリスクを非常に嫌っていたからということを知りましたが、今回のメールでも厳しさを思い知らされました。
記録的な不作の原因は?
今年の天候は比較的穏やかで恵まれていました。不作の原因は、3月頃の霜という説もありますが、総合すると不明なようです。とにかくなぜか花の付きが悪かったとのこと。
花の付き方は、前年の7月から8月ころの気候とコンディションの影響を受けるという学説があるらしく、昨年の驚異的な長雨と冷夏が原因の可能性も考え得るとの意見でした。
また、ネットで拾った現地の新聞などによると花摘み(季節労働者)の「労働力不足」や「労使関係の悪化」といった経営上の問題も顕在化してきているようです。
とにかくローズの摘み取りは短期決戦型で、一時に大多数の労働力の集中投下が必要です。これができないと途端に収穫量に影響を与えます。そんなに都合よく労働力を集めることは世界中厳しいはずです。
香料植物のプランテーションは、典型的な労働集約型の産業です。そのため先進国では、おおむね成立しないとされます。当然、日本も香料植物の生産が産業として成立するケースはきわめて希です。
富良野のラベンダー畑のように観光化するなど多角化がない限り厳しいでしょう。
ブルガリアは、1990年代の共産党政権の崩壊時から長年、経済不況に苦しんできましたが、経済的な安定と成長が始まるとこの問題は避けがたいと思われます。
隣国トルコでも不作
お隣のトルコもダマスクローズの世界的な生産国ですが、こちらも生産量減産のニュースがありました。
Rose oil prices in Turkey expected to skyrocket as production falls
(不作によるローズオイル高騰、トルコ)
7千トンの予想が、5千5百トンとまりとなったというニュースです。4年連続の不作で、このうち今年は最悪の年となった模様です。原因は「極端な暑さと霜」とのこと。こちらも大きな天候不順をかかえているようです。
当然、品薄からローズオイルは高騰します。この高騰には「skyrocket」(スカイロケット)という表現が使用されており、どんなけ高くなるのかと恐怖しました。
ただでさえ、円はユーロに対して相当弱いですが、世界的なローズオイル不足で、さらに高騰するかと思うとややインパクトを感じます。
高くなるだけでなく、そもそもローズオイルを入手できないという事態も発生するでしょう。
感謝の気持ちがアップしてしまう
そういう状況も知らずに当社は例年通りのレートでローズオイルを購入できました。
取引先からは何も言われていませんが、取引先の好意だったのかと、この記事を書きながら確信しています。
もともと当社は、ローズオイルに対して厳かな気持ちというか、今時の言い方なら「リスペクト」を払ってきました。ローズオイルの香りは神聖にさえ感じられるローズバカです。
しかし、これだけ希少になってくるとこの気持ちもますます強くなります。
今年もよいローズジェルを制作したいし、ローズ香水もよりいっそう大切な気持ちで制作したいと思います。
※武蔵野ワークスでは、ブルガリア産ダマスクローズ(ブルガリアンローズ)から香水の『ブルガリアンローズ・ジェル』『ローズの贈り物』などを生産しております。
(2015-08-31)
( 香水工場の )
香る生活
香りと脳の関係 (8)・・・嗅覚のメカニズム
脳科学は驚異的な進歩を遂げていますが、人の脳はまだまだ未知の世界のようです。嗅覚の仕組みも不明なことが多く、メカニズム解明にはまだ遠い道のりがありそうです。
鼻腔内にの上皮には、香り分子をキャッチするレセプター(受容体)があります。ここでキャッチされた分子によって嗅神経が興奮し微弱な電位変化を起こします。これが電気信号とした脳に伝達されます。
このレセプターから脳までの神経回路は、解剖学的にかなり判明しています。
・鼻腔内の香りレセプター →
・嗅神経 →
・嗅球(きゅうきゅう=嗅神経の1次ニューロン) →
・嗅索(きゅうさく=嗅神経の2次ニューロン) →
・扁桃体(へんとうたい) →
・海馬
「扁桃体」とは脳の重要なパーツで、感情や情動の中心的な役割を担うとされます。
鼻腔内でキャッチされた香りの信号は、嗅覚細胞の神経(軸索)に伝わり、その先の「嗅球」という部分でシナプス結合している「嗅索」という神経にわたされます。
それが扁桃体に繋がっていることがわかっていますが、嗅索は扁桃体だけでなくその周辺の脳の様々なパーツにも繋がっています。
複雑なので、ここでは扁桃体だけに繋がっているとして、扁桃体は「海馬」(かいば)というパーツに連絡しています。
扁桃体までは単線的なルートでしたが、扁桃体は大脳の一部でありこの先の物理的なルートは複雑に交差しあい信号がどのように、そして、どこに伝達されるかわかりにくくなっています。
(※脳内の信号は、もしかしたら選択的なルートで伝達されるのではなく繋がっている回路全方向にブロードキャストして受け取る側で選択的にアクティブになっているのかも)
最先端のfMRI装置などで観察すると、香りの信号は下記のパーツに伝達されることがかわってきました:
・視床下部 → 視床 → 大脳皮質の嗅覚野(きゅうかくや)
・海馬 → ?
「視床下部」とは自律神経の最高中枢です。血圧・呼吸・体温・ホルモンの分泌など生体を24時間安定運用させるための指令中枢です。
「海馬」は、記憶とくに短期記憶の形成と保持を担うとされます。海馬は認知症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病などで萎縮が発生することでも知られています。海馬はストレスによってダメージを受けやすい反面、脳内では珍しく再生可能な脳とも考えられています。
扁桃体・視床下部・海馬は「大脳辺縁系」(だいのうへんえんけい)と呼ばれます。
大脳辺縁系は、理論的な思考を担う「大脳皮質」と比較して、脳の進化における初期に形成された原始的な脳と考えられます。
嗅覚は人間の五感の中で特殊です。見る・聞く・味わう・触るなどの他の感覚は、脳の視床を経て大脳皮質の視覚野・聴覚野などに伝達されますが、嗅覚だけは大脳辺縁系に直結します。
この事実は、香りやニオイはそれだけダイレクトな刺激を脳に与えることができると予想される根拠の一つになっています。香りで強烈な記憶再生のフラッシュバックが発生する一因もここにあるのかもしれません。
どのように香りの信号が、脳のどの部分に伝わり、どうのように信号が処理されているのか、まだ未知の部分が大きくはっきりとしたこはわかっていません。
これは嗅覚だけの問題でなく脳科学全般に言えることです。解剖学によって脳の物理的な構造、神経繊維のつながり方などはある程度判明していますが、生命活動における脳内の情報の生成・伝達・処理方法はあまりわかっていません。
嗅覚の働きの解明は、現在、fMRIという装置が活躍しているそうです。これは最先端の装置で、脳内の血流の動的な変化をビジュアルに表現し記録できます。生体を傷つけずに脳内を観察できる驚くべき装置です。
しかし、脳神経の活動と血流の相関関係は事実としても、血流は脳内の情報処理そのものの活動ではありません。逆に言えば、脳内のこのパーツが活動しているというくらいしか判断できません。最先端の装置をもってしても脳の活動を解明するためには、道のりはまだまだ険しいですね。
戻る
※この記事は(8)嗅覚のメカニズム)
香りと脳の関係 (8)嗅覚のメカニズム
香りと脳の関係 (7)香りで痩せる
香りと脳の関係 (6)リアルに蘇る記憶
香りと脳の関係 (5)香り成分は脳に届く?
香りと脳の関係 (4)再生可能な嗅神経
香りと脳の関係 (3)香りと脳内血流
香りと脳の関係 (2)香りと認知症
香りと脳の関係 (1)なぜ脳の話
(2015-08-29)
鼻から脳までの道筋
鼻腔内にの上皮には、香り分子をキャッチするレセプター(受容体)があります。ここでキャッチされた分子によって嗅神経が興奮し微弱な電位変化を起こします。これが電気信号とした脳に伝達されます。
このレセプターから脳までの神経回路は、解剖学的にかなり判明しています。
・鼻腔内の香りレセプター →
・嗅神経 →
・嗅球(きゅうきゅう=嗅神経の1次ニューロン) →
・嗅索(きゅうさく=嗅神経の2次ニューロン) →
・扁桃体(へんとうたい) →
・海馬
扁桃体から先は?
「扁桃体」とは脳の重要なパーツで、感情や情動の中心的な役割を担うとされます。
鼻腔内でキャッチされた香りの信号は、嗅覚細胞の神経(軸索)に伝わり、その先の「嗅球」という部分でシナプス結合している「嗅索」という神経にわたされます。
それが扁桃体に繋がっていることがわかっていますが、嗅索は扁桃体だけでなくその周辺の脳の様々なパーツにも繋がっています。
複雑なので、ここでは扁桃体だけに繋がっているとして、扁桃体は「海馬」(かいば)というパーツに連絡しています。
扁桃体までは単線的なルートでしたが、扁桃体は大脳の一部でありこの先の物理的なルートは複雑に交差しあい信号がどのように、そして、どこに伝達されるかわかりにくくなっています。
(※脳内の信号は、もしかしたら選択的なルートで伝達されるのではなく繋がっている回路全方向にブロードキャストして受け取る側で選択的にアクティブになっているのかも)
最先端のfMRI装置などで観察すると、香りの信号は下記のパーツに伝達されることがかわってきました:
・視床下部 → 視床 → 大脳皮質の嗅覚野(きゅうかくや)
・海馬 → ?
「視床下部」とは自律神経の最高中枢です。血圧・呼吸・体温・ホルモンの分泌など生体を24時間安定運用させるための指令中枢です。
「海馬」は、記憶とくに短期記憶の形成と保持を担うとされます。海馬は認知症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病などで萎縮が発生することでも知られています。海馬はストレスによってダメージを受けやすい反面、脳内では珍しく再生可能な脳とも考えられています。
扁桃体・視床下部・海馬は「大脳辺縁系」(だいのうへんえんけい)と呼ばれます。
大脳辺縁系は、理論的な思考を担う「大脳皮質」と比較して、脳の進化における初期に形成された原始的な脳と考えられます。
香りは大脳辺縁系をダイレクトに刺激する
嗅覚は人間の五感の中で特殊です。見る・聞く・味わう・触るなどの他の感覚は、脳の視床を経て大脳皮質の視覚野・聴覚野などに伝達されますが、嗅覚だけは大脳辺縁系に直結します。
この事実は、香りやニオイはそれだけダイレクトな刺激を脳に与えることができると予想される根拠の一つになっています。香りで強烈な記憶再生のフラッシュバックが発生する一因もここにあるのかもしれません。
しかし、あまりわからない
どのように香りの信号が、脳のどの部分に伝わり、どうのように信号が処理されているのか、まだ未知の部分が大きくはっきりとしたこはわかっていません。
これは嗅覚だけの問題でなく脳科学全般に言えることです。解剖学によって脳の物理的な構造、神経繊維のつながり方などはある程度判明していますが、生命活動における脳内の情報の生成・伝達・処理方法はあまりわかっていません。
嗅覚の働きの解明は、現在、fMRIという装置が活躍しているそうです。これは最先端の装置で、脳内の血流の動的な変化をビジュアルに表現し記録できます。生体を傷つけずに脳内を観察できる驚くべき装置です。
しかし、脳神経の活動と血流の相関関係は事実としても、血流は脳内の情報処理そのものの活動ではありません。逆に言えば、脳内のこのパーツが活動しているというくらいしか判断できません。最先端の装置をもってしても脳の活動を解明するためには、道のりはまだまだ険しいですね。
戻る
※この記事は(8)嗅覚のメカニズム)
香りと脳の関係 (8)嗅覚のメカニズム
香りと脳の関係 (7)香りで痩せる
香りと脳の関係 (6)リアルに蘇る記憶
香りと脳の関係 (5)香り成分は脳に届く?
香りと脳の関係 (4)再生可能な嗅神経
香りと脳の関係 (3)香りと脳内血流
香りと脳の関係 (2)香りと認知症
香りと脳の関係 (1)なぜ脳の話
(2015-08-29)
( 香水工場の )
香る生活
香りと脳の関係 (7)・・・香りで痩せる
グレープフルーツの香りにダイエット効果があることがわかり、2002年頃、ちょっとした「香りダイエット」ブームが起こりました。香りとダイエットの関係にもやはり脳が大きな役割を果たしています。
肥満の原因は、必要以上に脂肪を蓄積すること。だから燃焼させればよいわけです。そこで食事制限しながらスポーツなどカラダを動かす。これがダイエットの基本。ですがダイエットのためだけのスポーツって、ちょっと辛いものがあります。
もし運動しなくて脂肪が燃焼するなら?・・・と思うのは多くの人に共通した心理ですよね。そんなうまい話あるわけないのですが、これがなんとありうる話だったのです。
しかも使用するツールが凄い。グレープフルーツなどのフルーツやハーブ。安心な食材の香りで痩せるとなれば、当然、多くの消費者の関心を引きます。
資生堂さんの「スリミング理論」「新スリミング理論」はそんな夢のような話を実現してくれる考え方です。スリミング(slimming)とはスリム(Slim)になること、つまり痩身法を差します。
一言で言えば、このような考え方です:
・スリミング理論・・・白色脂肪細胞内の中性脂肪はカフェインで分解され、遊離脂肪酸として血中に放出される
・新スリミング理論・・・血中の遊離脂肪酸は、エネルギーとして消費(燃焼)されないと、そのまま中性脂肪に再合成される。しかしUCPがあれば運動なしで消費(燃焼)可能
同じタイミングでカネボウさんからは、ラズベリーの香り成分(Raspberry Ketone)が体脂肪を分解するとする研究発表がありました。
こちらも食品の香りによるダイエット法で、資生堂・カネボウという日本を代表する化粧品ブランドから続け話題のダイエット商品がマーケットインされたことで相乗効果もあり、しばらく「香りダイエット」に香り業界は沸きました。
「新スリミング理論」のキーとなる物質がUCPという体内物質。UCPとはUncoupling protein = カップリングされていないタンパク質、専門用語では「脱共役タンパク質」と言うそうです。
ミトコンドリアの内膜に存在するタンパク質で脂肪燃焼を促進する働きがあるそうです・・・私には、見たことも触ったこともない物質なので、このへんはもう「だそうです」の連続です。
ミトコンドリアは細胞内にあって糖分(ブドウ糖)をベースに活動源になるエネルギーを生産・貯蔵(ATP合成)する、まさに「ヒトのエンジン」。
しかし、UCPは糖分をATP合成には利用せず、熱エネルギーへと変換します。たとえば、冬眠中の動物が体温を維持できるメカニズムの一つがUCPによる発熱と考えられています。
多食しても太らない人や動物は、一般にUCPをたくさん持っている人と言われています。
ですので、UCPを活性化させれば、運動なしに脂肪を燃焼させることができるのではないか!がこの理論のベースとなる考え方であり目標です。以前の話ですが、偶然ですが、たまたまこの研究をされていた研究員の方とお話しする機会がありました。このへんのお話には信憑性を感じました。
UCPが脂肪を燃焼させる効果があるなら、どうやってUCPを増加させるかが問題になります。UCPの増加にはノルアドレナリンが影響しています。
ノルアドレナリンは、一般に脳内ホルモンと呼ばれる神経伝達物質です。ノルアドレナリンは闘争・危険など強いストレス反応として脳内で分泌され臨戦態勢へとカラダをドライブするホルモンです。
同じく強いストレス反応で多く分泌されるアドレナリンは、副腎髄質で分泌され、体内を巡り呼吸数・心拍数・血圧などを上げるホルモンです。アドレナリンとノルアドレナリンは似た分子構造を持っています。
ストレス反応ホルモンであるノルアドレナリンとアドレナリンは、交感神経系の活動によって分泌が促されますが、交感神経自体が、「Fight and Flight(闘争&逃走)」神経と呼ばれるだけに、激しい活動や刺激によりアクティブになります。
よって交感神経系をアクティブにする行為は、脂肪を燃焼させるUCPの生産にも影響が与えるわけですが、その刺激要因の一つが「香り」です。
つまり、香りが脳を刺激し、交感神経を活性化させることで結果的に脂肪が燃焼するというフローチャートができあがります。
1) 香り →
2) 大脳辺縁系を刺激 →
3) 交感神経を活性化 →
4) ノルアドレナリン分泌 →
5) ミトコンドリアないのUCP発現 →
6) 遊離脂肪酸の燃焼 →
7) 脂肪低下
正直「風が吹けば桶屋が儲かる」方式のかなり遠い因果関係ですが、事実なんです。
香りは、嗅覚で捕捉され電気信号が伝達されるだけで、香り成分が直接、脳に伝達されるわけではありません。
脳は香りの信号で交感神経を興奮させ、ノルアドレナリンを分泌して結果的に脂肪を燃焼させるわけですから、ここでもダイエットの司令塔は脳自身ということになります。
しかし、この理論から行けば、交感神経を活性化をすればよいわけで、必ずしも香りである必要はないわけでよね。このブログは、香りの重要性をお伝えすることですが、香りだけがスペシャルにダイエットに効くとも言えない事実もお知らせします。
交感神経を活性化する要因は、定性的にはいろいろあるわけですが、いかにローコストで消費者の負担が少なく、かつ定量的に効果が出やすいモノとして「香り」は有望ということでしょう。
交感神経のスイッチを押してくるものは日常生活の中にいろいろあります。もちろん、私のイチ押しは「香り」です。しかし、心に刺激を与えるものはおおむね交感神経をオンにしてくれます:
・スポーツ・運動・ストレッチ
交感神経はカラダをドライブさせる役割があるので、逆にカラダをドライブさせことで交感神経もオンになります。とくのゲーム性があるスポーツは、心理的な興奮も加わり刺激があります。
・深呼吸
酸素の吸入。ターボチャージャーのように多少多めの酸素を体内に送り込むことで、交感神経もオンされるようです。具体的にはわかりませんが、そんな気がします。
・楽しい会話、笑い
笑いは酸素の強制吸入を発生させます。ある論文によると楽しい会話や笑いは、その最中では交感神経を刺激し、その後は逆に副交感神経を刺激し、血圧や血糖値を下げカラダをリラックスへとドライブするそうです。
楽しい会話や爆笑後の幸福感・満足感は多くの人が体験しますが、この体験と自律神経系の上記の動作は納得できる話に見えます。
また、食事や睡眠は、リラックス系の刺激であり副交感神経を刺激します。しかし、交感神経 → 副交感神経 → 交感神経といったメリハリがある刺激は、交感神経系全体を刺激するもので全体として好ましい方向に向かうのではないでしょうか。
香りダイエットは、このように交感神経を刺激する香りで脳を刺激して結果的に脂肪を燃焼させようという話でした。
実証的にノルアドレナリンが分泌される香りの種類を調べていくと、資生堂さんではグレープフルーツ・ペッパー・フェンネル・エストラゴン(タラゴン)が効果が出やすいという精油として発表されました。
これ以外にも当然、もっと多数のハーブや精油がテストされていると思われますが、一般にアロマテラピーで交感神経を刺激するとされる精油はおおむね脂肪燃焼にも役立つと予想されます。
というわけで、この話題がネットを回っているとき、私も実際に実験してみました。研究所で行う厳密なテストではなく、消費者レベルでテキトーにやってダイエット効果が出るかというテストです。
これで結果が出れば、俄然おもしろいのですが、数週間、多めのカフェイン摂取と同時にグレープフルーツの香りに囲まれてみましたが、体重の変化は「測定誤差の範囲内」という結論になりました。テスト方法が悪かったと思います。
香りによる刺激という環境設定が、ちょっと難しいとも考えられます。わたしの場合、部屋に精油を香らせるだけでなく、ポマンダー(香り付けしたペンダントのようなもの)を下げておりましたが、常時同じ香りに曝されると脳への刺激は持続しないのではないかと推測しています。
「一種類の香りが脳を刺激し続ける持続時間と強度」という問題を感じています。人は同じ香りにはすぐに慣れて感じなくなり(嗅覚疲労)、同時に脳内でも刺激を受けなくなることが予想されるからです。
資生堂さんの香りダイエットは、日本コカ・コーラ社も巻き込んでダイエット飲料も発売される盛況ぶりでしたが、ダイエット効果を実感した人は私の周囲ではいませんでした。
ブームは数年で収束しましたが、香りとダイエットの関係が否定されたわけではありません。一般消費者が気楽でテキトーにやってもある程度現実的な効果が出る製品が将来出てくると予想しています。
(続く・・・)
<-戻る | 次へ->
※この記事は[(7)香りで痩せる]
香りと脳の関係 (8)嗅覚のメカニズム
香りと脳の関係 (7)香りで痩せる
香りと脳の関係 (6)リアルに蘇る記憶
香りと脳の関係 (5)香り成分は脳に届く?
香りと脳の関係 (4)再生可能な嗅神経
香りと脳の関係 (3)香りと脳内血流
香りと脳の関係 (2)香りと認知症
香りと脳の関係 (1)なぜ脳の話
(2015-08-28)
センセーショナルだった「香りダイエット」
肥満の原因は、必要以上に脂肪を蓄積すること。だから燃焼させればよいわけです。そこで食事制限しながらスポーツなどカラダを動かす。これがダイエットの基本。ですがダイエットのためだけのスポーツって、ちょっと辛いものがあります。
もし運動しなくて脂肪が燃焼するなら?・・・と思うのは多くの人に共通した心理ですよね。そんなうまい話あるわけないのですが、これがなんとありうる話だったのです。
しかも使用するツールが凄い。グレープフルーツなどのフルーツやハーブ。安心な食材の香りで痩せるとなれば、当然、多くの消費者の関心を引きます。
ダイエットの原理
資生堂さんの「スリミング理論」「新スリミング理論」はそんな夢のような話を実現してくれる考え方です。スリミング(slimming)とはスリム(Slim)になること、つまり痩身法を差します。
一言で言えば、このような考え方です:
・スリミング理論・・・白色脂肪細胞内の中性脂肪はカフェインで分解され、遊離脂肪酸として血中に放出される
・新スリミング理論・・・血中の遊離脂肪酸は、エネルギーとして消費(燃焼)されないと、そのまま中性脂肪に再合成される。しかしUCPがあれば運動なしで消費(燃焼)可能
カネボウさんのラズベリー香りダイエット
同じタイミングでカネボウさんからは、ラズベリーの香り成分(Raspberry Ketone)が体脂肪を分解するとする研究発表がありました。
こちらも食品の香りによるダイエット法で、資生堂・カネボウという日本を代表する化粧品ブランドから続け話題のダイエット商品がマーケットインされたことで相乗効果もあり、しばらく「香りダイエット」に香り業界は沸きました。
UCPが脂肪を燃やす
「新スリミング理論」のキーとなる物質がUCPという体内物質。UCPとはUncoupling protein = カップリングされていないタンパク質、専門用語では「脱共役タンパク質」と言うそうです。
ミトコンドリアの内膜に存在するタンパク質で脂肪燃焼を促進する働きがあるそうです・・・私には、見たことも触ったこともない物質なので、このへんはもう「だそうです」の連続です。
ミトコンドリアは細胞内にあって糖分(ブドウ糖)をベースに活動源になるエネルギーを生産・貯蔵(ATP合成)する、まさに「ヒトのエンジン」。
しかし、UCPは糖分をATP合成には利用せず、熱エネルギーへと変換します。たとえば、冬眠中の動物が体温を維持できるメカニズムの一つがUCPによる発熱と考えられています。
多食しても太らない人や動物は、一般にUCPをたくさん持っている人と言われています。
ですので、UCPを活性化させれば、運動なしに脂肪を燃焼させることができるのではないか!がこの理論のベースとなる考え方であり目標です。以前の話ですが、偶然ですが、たまたまこの研究をされていた研究員の方とお話しする機会がありました。このへんのお話には信憑性を感じました。
戦闘態勢へドライブするノルアドレナリン
UCPが脂肪を燃焼させる効果があるなら、どうやってUCPを増加させるかが問題になります。UCPの増加にはノルアドレナリンが影響しています。
ノルアドレナリンは、一般に脳内ホルモンと呼ばれる神経伝達物質です。ノルアドレナリンは闘争・危険など強いストレス反応として脳内で分泌され臨戦態勢へとカラダをドライブするホルモンです。
同じく強いストレス反応で多く分泌されるアドレナリンは、副腎髄質で分泌され、体内を巡り呼吸数・心拍数・血圧などを上げるホルモンです。アドレナリンとノルアドレナリンは似た分子構造を持っています。
ストレス反応ホルモンであるノルアドレナリンとアドレナリンは、交感神経系の活動によって分泌が促されますが、交感神経自体が、「Fight and Flight(闘争&逃走)」神経と呼ばれるだけに、激しい活動や刺激によりアクティブになります。
よって交感神経系をアクティブにする行為は、脂肪を燃焼させるUCPの生産にも影響が与えるわけですが、その刺激要因の一つが「香り」です。
なぜ香りで痩せるのか?
つまり、香りが脳を刺激し、交感神経を活性化させることで結果的に脂肪が燃焼するというフローチャートができあがります。
1) 香り →
2) 大脳辺縁系を刺激 →
3) 交感神経を活性化 →
4) ノルアドレナリン分泌 →
5) ミトコンドリアないのUCP発現 →
6) 遊離脂肪酸の燃焼 →
7) 脂肪低下
正直「風が吹けば桶屋が儲かる」方式のかなり遠い因果関係ですが、事実なんです。
ダイエットの司令塔は脳
香りは、嗅覚で捕捉され電気信号が伝達されるだけで、香り成分が直接、脳に伝達されるわけではありません。
脳は香りの信号で交感神経を興奮させ、ノルアドレナリンを分泌して結果的に脂肪を燃焼させるわけですから、ここでもダイエットの司令塔は脳自身ということになります。
香りだけではない
しかし、この理論から行けば、交感神経を活性化をすればよいわけで、必ずしも香りである必要はないわけでよね。このブログは、香りの重要性をお伝えすることですが、香りだけがスペシャルにダイエットに効くとも言えない事実もお知らせします。
交感神経を活性化する要因は、定性的にはいろいろあるわけですが、いかにローコストで消費者の負担が少なく、かつ定量的に効果が出やすいモノとして「香り」は有望ということでしょう。
交感神経をアクティブにさせる方法
交感神経のスイッチを押してくるものは日常生活の中にいろいろあります。もちろん、私のイチ押しは「香り」です。しかし、心に刺激を与えるものはおおむね交感神経をオンにしてくれます:
・スポーツ・運動・ストレッチ
交感神経はカラダをドライブさせる役割があるので、逆にカラダをドライブさせことで交感神経もオンになります。とくのゲーム性があるスポーツは、心理的な興奮も加わり刺激があります。
・深呼吸
酸素の吸入。ターボチャージャーのように多少多めの酸素を体内に送り込むことで、交感神経もオンされるようです。具体的にはわかりませんが、そんな気がします。
・楽しい会話、笑い
笑いは酸素の強制吸入を発生させます。ある論文によると楽しい会話や笑いは、その最中では交感神経を刺激し、その後は逆に副交感神経を刺激し、血圧や血糖値を下げカラダをリラックスへとドライブするそうです。
楽しい会話や爆笑後の幸福感・満足感は多くの人が体験しますが、この体験と自律神経系の上記の動作は納得できる話に見えます。
また、食事や睡眠は、リラックス系の刺激であり副交感神経を刺激します。しかし、交感神経 → 副交感神経 → 交感神経といったメリハリがある刺激は、交感神経系全体を刺激するもので全体として好ましい方向に向かうのではないでしょうか。
実際にグレープフルーツの香りでテスト
香りダイエットは、このように交感神経を刺激する香りで脳を刺激して結果的に脂肪を燃焼させようという話でした。
実証的にノルアドレナリンが分泌される香りの種類を調べていくと、資生堂さんではグレープフルーツ・ペッパー・フェンネル・エストラゴン(タラゴン)が効果が出やすいという精油として発表されました。
これ以外にも当然、もっと多数のハーブや精油がテストされていると思われますが、一般にアロマテラピーで交感神経を刺激するとされる精油はおおむね脂肪燃焼にも役立つと予想されます。
というわけで、この話題がネットを回っているとき、私も実際に実験してみました。研究所で行う厳密なテストではなく、消費者レベルでテキトーにやってダイエット効果が出るかというテストです。
これで結果が出れば、俄然おもしろいのですが、数週間、多めのカフェイン摂取と同時にグレープフルーツの香りに囲まれてみましたが、体重の変化は「測定誤差の範囲内」という結論になりました。テスト方法が悪かったと思います。
香りによる刺激という環境設定が、ちょっと難しいとも考えられます。わたしの場合、部屋に精油を香らせるだけでなく、ポマンダー(香り付けしたペンダントのようなもの)を下げておりましたが、常時同じ香りに曝されると脳への刺激は持続しないのではないかと推測しています。
香りの場合、刺激の与え方が問題かも
「一種類の香りが脳を刺激し続ける持続時間と強度」という問題を感じています。人は同じ香りにはすぐに慣れて感じなくなり(嗅覚疲労)、同時に脳内でも刺激を受けなくなることが予想されるからです。
資生堂さんの香りダイエットは、日本コカ・コーラ社も巻き込んでダイエット飲料も発売される盛況ぶりでしたが、ダイエット効果を実感した人は私の周囲ではいませんでした。
ブームは数年で収束しましたが、香りとダイエットの関係が否定されたわけではありません。一般消費者が気楽でテキトーにやってもある程度現実的な効果が出る製品が将来出てくると予想しています。
(続く・・・)
<-戻る | 次へ->
※この記事は[(7)香りで痩せる]
香りと脳の関係 (8)嗅覚のメカニズム
香りと脳の関係 (7)香りで痩せる
香りと脳の関係 (6)リアルに蘇る記憶
香りと脳の関係 (5)香り成分は脳に届く?
香りと脳の関係 (4)再生可能な嗅神経
香りと脳の関係 (3)香りと脳内血流
香りと脳の関係 (2)香りと認知症
香りと脳の関係 (1)なぜ脳の話
(2015-08-28)
( 香水工場の )
香る生活
香りと脳の関係 (6)・・・リアルに蘇る記憶
今日は香りが引き起こす「リアルに蘇る記憶」。香りに起因する記憶には、他の記憶では発生しにくい特徴があります。
香りの業界では大変有名な心理学用語です。フランスの作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』に出てくる描写から命名されました。
プルーストさんは医学用語になることを意図していたとは考えにくいのですが、マドレーヌを食べた瞬間、ある夏の光景が走馬燈のように蘇るという描写に、多くの人の「それ、あるある」の共感を呼んだのだと思います。
プルースト現象について以前、香りで記憶のフラッシュバック、プルースト効果にて詳しく書かせてもらいました。
プルースト現象による記憶の再生は、たとえば、英語単語のや歴史年号の記憶とはかなり異質です。また、通常の思い出とも異なります。
(1)ときにビジュアルであること・・・時として目の前に大スペクタクルな映像が再現されるような臨場感を伴う
(2)激しい感情が伴う・・・そのときその場で感じていたこと、切なさや喜びが、エモーショナルな波動となって体全体を覆うことがある
つまり、そのときその場に立ち、そのとき感じたことまでが蘇る、まるでその場にワープしたかのような臨場感になる点です。
脳内で何が起きているかはわかっていません。また、香り以外でこのような臨場感があるフラッシュバック再生はなかなか発生しにくいようです。
私は、記憶とは塩基配列で構成されたタンパク質、つまり物質と感じています。
この予想だと記憶はたんなるデジタルデータ。なので感情が伴うことはありません。感情も実は記憶として再生可能なデジタルデータになりうるとしたらまた別の話になりますが、ここでは感情は記憶として固定できないと仮定すると、ではプルースト現象の臨場感は何だろう?と感じます。
プルースト現象が発生した場合、おそらく記憶の再生と同時にドーパミンやセロトニンといった脳内ホルモンも分泌されているのではないかと信じています。香りが脳内ホルモンをコントロールできる、ということになるとおもしろいのですね。
麻薬は、この世のモノとは思えないほどの至福の幸福感をもたらすそうです。
その原因は脳内ホルモンと似た作用を脳に与えるためですが、脳内に運ばれた麻薬成分が脳を破壊するリスクがありますし、依存症リスクも高く危険です。
しかし、香りが脳内ホルモンをコントロールしたり活性化できるなら、安全である可能性が高く、まったく空想の話ですが「香り麻薬」なんていう製品が商品化されるという時代がこないとも言えません。
「香り麻薬」というネーミングではイメージが悪すぎますので製品名は別名にするにしろ、香りで物理的に幸福感いっぱいになれる薬かサプリメント(ただし、鼻に吸入するモノ)ができるかもしれません。かなり先ですが。
(続く・・・)
<-戻る | 次へ->
※この記事は[(6)リアルに蘇る記憶]
香りと脳の関係 (8)嗅覚のメカニズム
香りと脳の関係 (7)香りで痩せる
香りと脳の関係 (6)リアルに蘇る記憶
香りと脳の関係 (5)香り成分は脳に届く?
香りと脳の関係 (4)再生可能な嗅神経
香りと脳の関係 (3)香りと脳内血流
香りと脳の関係 (2)香りと認知症
香りと脳の関係 (1)なぜ脳の話
(2015-08-22)
プルースト現象
香りの業界では大変有名な心理学用語です。フランスの作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』に出てくる描写から命名されました。
プルーストさんは医学用語になることを意図していたとは考えにくいのですが、マドレーヌを食べた瞬間、ある夏の光景が走馬燈のように蘇るという描写に、多くの人の「それ、あるある」の共感を呼んだのだと思います。
プルースト現象について以前、香りで記憶のフラッシュバック、プルースト効果にて詳しく書かせてもらいました。
ビジュアルで感情まで伴う香り記憶
プルースト現象による記憶の再生は、たとえば、英語単語のや歴史年号の記憶とはかなり異質です。また、通常の思い出とも異なります。
(1)ときにビジュアルであること・・・時として目の前に大スペクタクルな映像が再現されるような臨場感を伴う
(2)激しい感情が伴う・・・そのときその場で感じていたこと、切なさや喜びが、エモーショナルな波動となって体全体を覆うことがある
つまり、そのときその場に立ち、そのとき感じたことまでが蘇る、まるでその場にワープしたかのような臨場感になる点です。
脳内で何が起きているかはわかっていません。また、香り以外でこのような臨場感があるフラッシュバック再生はなかなか発生しにくいようです。
香りで脳内ホルモンのコントロール?
私は、記憶とは塩基配列で構成されたタンパク質、つまり物質と感じています。
この予想だと記憶はたんなるデジタルデータ。なので感情が伴うことはありません。感情も実は記憶として再生可能なデジタルデータになりうるとしたらまた別の話になりますが、ここでは感情は記憶として固定できないと仮定すると、ではプルースト現象の臨場感は何だろう?と感じます。
プルースト現象が発生した場合、おそらく記憶の再生と同時にドーパミンやセロトニンといった脳内ホルモンも分泌されているのではないかと信じています。香りが脳内ホルモンをコントロールできる、ということになるとおもしろいのですね。
香り麻薬の製品化
麻薬は、この世のモノとは思えないほどの至福の幸福感をもたらすそうです。
その原因は脳内ホルモンと似た作用を脳に与えるためですが、脳内に運ばれた麻薬成分が脳を破壊するリスクがありますし、依存症リスクも高く危険です。
しかし、香りが脳内ホルモンをコントロールしたり活性化できるなら、安全である可能性が高く、まったく空想の話ですが「香り麻薬」なんていう製品が商品化されるという時代がこないとも言えません。
「香り麻薬」というネーミングではイメージが悪すぎますので製品名は別名にするにしろ、香りで物理的に幸福感いっぱいになれる薬かサプリメント(ただし、鼻に吸入するモノ)ができるかもしれません。かなり先ですが。
(続く・・・)
<-戻る | 次へ->
※この記事は[(6)リアルに蘇る記憶]
香りと脳の関係 (8)嗅覚のメカニズム
香りと脳の関係 (7)香りで痩せる
香りと脳の関係 (6)リアルに蘇る記憶
香りと脳の関係 (5)香り成分は脳に届く?
香りと脳の関係 (4)再生可能な嗅神経
香りと脳の関係 (3)香りと脳内血流
香りと脳の関係 (2)香りと認知症
香りと脳の関係 (1)なぜ脳の話
(2015-08-22)
search