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香る生活
サンダルウッド物語#7
サンタロール
アロマテラピーで使用されるサンダルウッド(白壇)精油の効能について。
サンダルウッド(白壇)精油にはサンタロールという成分が含まれています。サンタロールはサンダルウッド(白壇)の主成分です。
このサンタロールには、生理的な鎮静作用があるとされます。
サンダルウッド精油の効能
精油は何でもいろいろと効きますし研究者ごとに様々な効果が報告されていてなかなか覚えにくいのですが、サンダルウッド(白壇)精油は、心が元気(活性化や促進系)な方向に作用するのではなく、神経の興奮を抑制する方向に作用(神経抑制系)することを覚えてください。
その結果、興奮状態の神経が鎮められ穏やかな状態へと体内は生理変化を起こします。睡眠が誘われたり、リラックスしたり、心が穏やかになります。
皮膚からの吸収
これは経皮吸収実験の結果から判明した現象です。アロマテラピーのようにキャリアオイルで薄めてサンダルウッド(白壇)精油を皮膚へ直接マッサージするとこのような現象が観察されると思います。
鼻からの吸収
一方、鼻から芳香吸入されたサンタロールもリラックス効果があるとされます。しかも、覚醒に近いリラックス感です。
一般に樹木系香料は人の心をリラックスさせるだけでなく、心を研ぎ澄ます作用が感じられるものが多いようです。ヒノキやスギの木材の香りに私は心が研ぎ澄まされます。
芳香吸入されたサンタロールには、そういう「リラックス&覚醒」に近い作用があるようです。
世界の宗教とサンダルウッド
実際、日本や中国・インドのお寺はもちろん、西洋・アラブ世界でもサンダルウッド(白壇)は教会内で多用されますし、世界的にお香として焚かれます。
スピリチュアルな働き
礼拝する人々にサンダルウッド(白壇)の香りが心の雑念を鎮め、平穏で敬虔で神聖な気持ちにさせてくるのも事実です。
そういう意味でサンダルウッド(白壇)とは、精神を活性化させるスピリチュアルな香料といえます。
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香る生活
サンダルウッド物語#6
旺盛な世界需要
サンダルウッド資源の急激な枯渇は、旺盛な世界需要と関係があります。
切り出されたサンダルウッドの利用方法は木材と精油です。インド産サンダルウッド木材はお線香の香料原料として、また彫刻物や高級家具などの調度品として使用されます。
香水原料としてのサンダルウッド
精油は主に輸出に当てられます。インド産精油の2大輸入国はアメリカとフランス。サンダルウッド精油は主に香水の原料として使用されます。
サンダルウッドはほのかな甘さを帯びた力強い香料です。
定着性が非常に強く香水に深みと持続性を与え(保留性)、しかも他の多くの香料オイルとの相性のよさが抜群です。
それゆえ香水のベース原料として多用されてきました。
当社の場合
当社でもサンダルウッドはよく使用します。当社の仕入れ先はフランスの香料会社です。
インドのサンダルウッド精油を仕入れをフランスの香料会社経由というのは、少しおもしろいと思われるかもしれません。
フランスの実力
全世界の貴重な天然香料のかなりの多くがフランスの香料会社によって押さえられている事情があります。
生産地との長年のパイプと取引を維持し、信頼関係があり、フランス人技術者などによる現地での開墾や技術指導など行ってきた歴史を考えると、アメリカ式大資本で一気に資源確保を行おうとしても一朝一夕ではフランスの香料会社のプレゼンスは揺がないと思います。
自然回帰ブームとサンダルウッド
サンダルウッド精油の急激な需要は90年代に加熱する世界的な自然回帰ブームの盛り上がりに一因があります。
アロマテラピーなどでサンダルウッド(白檀)精油がそのまま使用されるようになり飛躍的に需要が高まりました。
人々の天然志向が、皮肉なことに逆に天然サンダルウッドの枯渇にさらに厳しい拍車を掛ける結果となりました。
(高める天然志向 = 天然資源の枯渇という皮肉)
アラブ社会とサンダルウッド
さらにサウジアラビアなどの中東イスラム社会では、サンダルウッド(白檀)はたいへんな需要があります。
ラマダーンなどの宗教儀式では乳香、没薬、ムスク、アンバーグリス、ジャスミンなどが使用されますがサンダルウッドも必須の香木です。
また近年、アラブの富裕層の間でサンダルウッド木材による家具や室内装飾がブームになっており原油高騰で湧くオイルマネーがサンダルウッド(白檀)を相場を引き上げていると言われています。
(続く・・・)
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サンダルウッド物語#5
50年から100年を要するサンダルウッド
このように貴重なサンダルウッド(白檀)は、世界的に乱伐や盗伐の対象になりやすく、また植樹から精油が採取できるまでの期間が50年以上かかること。
最高級のサンダルウッド(白檀)にいたっては80年とも100年とも言われます。
いったん枯渇した資源の再生が困難であることが世界的にようやく認識され保護されるようになってきました。
世界最大の生産国・インド
世界のサンダルウッド(白檀)精油の8 - 9割を産出する最大生産国はインドです。
インドでのサンダルウッド(白檀)栽培の歴史は古く、人類の文明の起源とほぼ同じ紀元前5世紀頃と考えられています。
インド政府の対応
現在、インドのサンダルウッドはインド政府の厳重な管理下にあり個人では所有できません。
ほとんどのサンダルウッドは国有地の中で国有林として栽培され、個人所有地に生えているサンダルウッドは政府から委託を受けて育てているものと解釈されます。
また、伐採は必ずサンダルウッドの植林・植樹との抱き合わせで行うことが法律で義務付けられています。
規制強化とサンダルウッドの保護
昔、インドの街中に多かったサンダルウッド業者や仲買人はすっかり鳴りを潜め簡単には入手できないようになりました。
以前、サンダルウッド(白檀)を仕入れに行っていた人に聞くとマイソールの街などにはちょっと怪しげな流しの仲買人から立派なお店を構えた業者まで様々なサンダルウッド関連業者があったそうです。
しかし、現在は警察の取り締まりが厳しくそういった業者の多くは品替えをしてしまったそうです。
(続く・・・)
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サンダルウッド物語#4
ハワイのサンダルウッド
ハワイではニューカレドニア同様1800年代、サンダルウッド(白檀)が輸出用産物となりましたが、乱伐が進みサンダルウッド産業は衰えます。
かのカメハメハ大王は、中国向けの対イギリスサンダルウッド貿易で財をなし、西洋の最新兵器装備によってハワイ全土の統治に成功しました。
高価な樹木・サンダルウッド
いつの時代でも国防費は国家予算の中で大きな負担ですから、逆に、サンダルウッド(白檀)がいかに価値ある樹木か思い知らされます。
中国向けのサンダルウッド(白檀)なのに、貿易相手はイギリスというのがニューカレドニアの例でもあったようにこの時代の特徴です。
ヨーロッパ列強は世界中の富を旺盛に吸い上げていた時代と言えるかもしれません。
「檀島」と呼ばれるハワイ
ハワイは、中国語で「檀島」と呼ばれます。中国でハワイ産サンダルウッド(白檀)が出回っていたことを物語る痕跡ですね。
カメハメハ大王はハワイ全土統一成功後、いったんサンダルウッド(白檀)の伐採に制限をいれたようですが、現金収入としての魅力は大きく、なし崩し的にサンダルウッド(白檀)の森林は荒廃していきました。
荒廃したサンダルウッド原生林
サンダルウッド(白檀)産業衰退後、ハワイではサトウキビ、パイナップル、コーヒーへと主要農産物を変化させてきた歴史があります。
他の太平洋諸島でも状況は似ており、現在サンダルウッド(白檀)産業が成立している島は、私の知る限りニューカレドニアくらいではないかと思われます。
小笠原諸島のサンダルウッド
なお、日本では小笠原諸島にサンダルウッド(白檀)の近種であるムニンビャクダンが生育していますが、香りは強くないとのことです。
(続く・・・)
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サンダルウッド物語#3
太平洋の島々とサンダルウッド
サンダルウッド(白檀)と言えばインド。実際、当社の仕入れるサンダルウッド(白檀)もインド産がメインですが、今日はニューカレドニアのサンダルウッド(白檀)についてお話します。
ニューカレドニアやハワイなど太平洋に浮かぶ島々のサンダルウッド(白檀)貿易の歴史があったことは驚きです。
ニューカレドニアのサンダルウッド
ハワイはサンダルウッド(白檀)産業と呼べるようなものは現在残っていませんが、ニューカレドニアは現在サンダルウッド(白檀)精油の輸出国となっています。
インド政府はCITES(サイテス、ワシントン条約。野生動植物の国際取引を規制)を批准しており、CITES保護対象に含まれるサンダルウッド(白檀)に対して厳しい輸出規制を行っています。
そのためニューカレドニアのサンダルウッド(白檀)は近年目立つようになってきました。
ただし、太平洋諸島のサンダルウッド(白檀)はインド産と比較すると一般に精油の含有量が少なく香りも薄い傾向があります。
ニューカレドニア・サンダルウッドの歴史
ニューカレドニアは、ハワイ諸島を発見したジェームズ・クック(キャプテン・クック)の航海で発見されヨーロッパに紹介された島です。
彼は、はじめて見るニューカレドニア島のそびえる山々が故国スコットランドの風景に似ていることから「ニューカレドニア」と呼んだとされます。
カレドニアはスコットランドのラテン語名とのこと。しかし、現地の人々は自国を「カナキー」と呼びます。
独立運動がくすぶるニューカレドニア
日本では「天国に一番近い島」とされるニューカレドニアも、ヨーロッパ人到来後の島の歴史は、奴隷貿易なども行われかなり悲惨な状況でした。
現在はフランス領となっており、日本ではあまり報道されませんが、独立運動の火種は収まることがない島です。
このニューカレドニアの山々、特にメインランドの南部の熱帯雨林地帯には豊かなサンダルウッド(白檀)の林が密生していました。
豊かだったニューカレドニアのサンダルウッド原生林
本格的なサンダルウッド(白檀)の伐採がはじまったのが1841年。日本では明治維新に向けて国内が沸騰し始める前です(ペリー来航1853年、大政奉還1867年)。
サンダルウッド(白檀)に目を付けたのはオーストラリア人。中国から茶を購入するためにニューカレドニアのサンダルウッド(白檀)を伐採し中国に輸出しました。
ニューカレドニア・オーストラリア・中国の間の三角貿易の始まりです。
三角貿易とサンダルウッドの枯渇
この時代の三角貿易は対等な関係は少なく、航海時代以降のイギリス流のとっても儲かる黄金の図式です。この三角貿易の過程でサンダルウッド(白檀)の過剰伐採が進んだと思われます。
下の資料によると1841年だけで2000トン(現在のニューカレドニアでは、年間20〜30トン程度が適正な産出量と見なされる)のサンダルウッド(白檀)が輸出され、わずか10年程度でサンダルウッド(白檀)は枯渇し、奴隷貿易へとシフトしていきました。
教訓
成熟までに50年かかるサンダルウッド(白檀)。
安易な伐採がどれほど早く資源を枯渇に導くか、そして、後には荒廃した山肌や大地以外何も残らないという天然資源全体に共通する大きな教訓を人類に残すエピソードです。
いったん途絶えたサンダルウッド(白檀)貿易は、現在復活し計画性をもって生産と植樹が行われ、現地の人々に富をもたらしています。
ハワイのサンダルウッド三角貿易
三角貿易によるサンダルウッド(白檀)資源の枯渇は、ハワイでもまったく同じ図式で進行しハワイのサンダルウッド(白檀)産業は未だ復活する兆しはありません。
参考資料:The sandalwood tree historically in New Caledonia
http://74.125.153.132/search?q=cache:ARWmv1golz0J:www.newcaledoniatourism-south.com/pressroom/account/docs/The%2520Sandalwood%2520tree.doc+1841+sandalwood%E3%80%80new+caledonia&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
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サンダルウッド物語#2
世界のサンダルウッド事情
古来より銘木の誉れ高い樹木に「黒檀」と「紫檀」があります。
それらはチークやマホガニー、ウォールナットのように硬く重く、虫などに浸食されない耐久性と木目の美しさから、最高級木材として珍重され、仏像や仏壇、贅沢な調度品などに利用されてきました。
同じく仏像や仏壇などに利用された木材が「サンダルウッド」です。
サンダルウッドの耐久性は黒檀・紫檀に及びませんが、その代わり甘く深い芳香を放ちます。
そのままで香る木材・サンダルウッド
香木は多くの場合、火にくべたり焚いたりして熱を加えないと香りを発しないため、お香や線香に加工されてはじめて香りを楽しめます。
しかし、サンダルウッドはそのままで香る香木です。正倉院に納められたサンダルウッドの仏像は現在でも香ります(だそうです、私は試したことがない!)。
千年香るサンダルウッド
そのことから「サンダルウッドは千年香る」と言われます。要は何年香るかわからないといのが実情です。
サンダルウッドの香りの実体は、木材に含まれる精油(エッセンシャル・オイル)です。サンダルウッドの数珠や扇子をお持ちの方も多いでしょう。
扇ぐ度に奥ゆかしい香りを漂わせるサンダルウッドの扇子は、中国や日本で古来より貴婦人たち御用達のオシャレ小物です。
サンダルウッドの多様な呼び方
サンダルウッドの英語名は「Sandalwood」。フランス語では「Santal」(サンタル)。
インドのメジャーな言語・ヒンディーでは「チャンダン」。
日本語では「サンダルウッド、ビャクダン、白檀、サンタル、チャンダン」と非常に多彩な呼び名で呼ばれます。愛用者が多いことの証です。
原産地
サンダルウッドの産地として、現在では世界的にインドが圧倒的に有名ですが、原産地はインドネシアとされています。
サンダルウッドはインドネシア、オーストラリアなどで産出されるほか、ニュージーランド、ハワイ、フィジー、ニューカレドニアなど太平洋諸島には広く生息しています。
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