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香る生活


ムスクの香り#5

絶滅危惧種のジャコウジカ


天然ムスクは、近年まで中国では漢方薬、西洋では香水原料として人気が高く乱獲が進んだ結果ジャコウジカは絶滅の危機に瀕しています。

現代でも漢方薬の製造会社や研究機関などに強い需要がありますが、天然ムスクに対する現代人の意識は変化しました。

現在、一般市場に流通する香水や化粧品の原料として天然ムスクが使用されるとこはありません。天然ムスクがプラチナより高価という事情だけが理由ではありません。

ワシントン条約のため天然ムスクの国際取引は規制されており、昨今では入手することさえ困難ですが、一方では天然ムスクを使用することに倫理的問題を感じる企業文化が世界的に育ちつつあります。


ジャコウジカ飼育施設


一方、中国四川省ではジャコウジカの人工飼育が続けられ(「チャンティンファーム」という施設があるらしい)、殺さずにムスクを採取できる技術の開発が進められているそうです。

それでも動物にとっては苦痛を伴うことになるでしょうから痛々しい限りです。合成ムスクのより安全でより効率的な合成手法の確立が期待されます。 (2018-01-12)
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ムスクの香り#4

香水にムスクを入れる理由


ムスクは香水には欠かせない原料です。一般にムスクは香りに持続性と奥深さを与えるとされています。あるパフューマーはムスクをこのように表現しています:

----------------(引用)---------------
以前ムスクが高騰したとき、とりわけ高級品のトンキンムスクを、ある香水から試しに抜いてみたことがある。まるで別物になってしまった。ムスクなしの試作品の香りは、冷たく、平面的で、豊かさに欠け、みすぼらしいものに変わっていた。

改めてムスクの偉大さを思い知ったものだ。香りに「酷」、「幅」、「温かさ」、「女らしさ」、「セクシーさ」などを与え、広がりのあるものに変えてします、不思議な力をもつ物質である(中村祥二『香りの世界をさぐる』)
----------------(引用ここまで)---------------

出来上がった香水からムスクを抜くことはできませんので、おそらく様々な香水の試作品を作る過程でテストされたものと思われます。



ムスクが醸し出す「セクシーさ」


気になるのが、ムスクが醸し出す「女らしさ」と「セクシーさ」という部分です。事実ながら理解できない部分です。

そもそも麝香鹿(ジャコウジカ)にとってムスクとは?・・・

ジャコウジカは自分の縄張り(テリトリー)を他のオスのジャコウジカに示すためにムスクを分泌し、定期的に地面や岩肌に付け、かつメスのジャコウジカを呼び込む手段にしている考えられます。

すると、普通に考えればムスクとは「オスがオスらしくあるための物質」と思えるのですが、人にとっては、なぜか「女らしくセクシー」であるというのはどうでしょうか?

せっかく自分の縄張りを誇示しても、セクシーだとメスよりもオスを呼び込みそうで、これでは闘争が絶えなくなりそうです。


(2018-01-12)
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香る生活


ムスクの香り#3

天然ムスクの話


ところで、天然ムスク。天然ムスクは、中国からネパール、モンゴルの山岳地帯にかけて生育しているシカの一種、麝香鹿(ジャコウジカ)から採取されます。

「麝香」とはムスクの意味です。本来、○○シカと呼ばれていたと推測されますが、ムスクが採れるためジャコウジカと呼ばれるようになり、現在ではシカの種名になっているそうです。

ムスクは睾丸から採れるという都市伝説がありますが、睾丸ではなく香嚢というおへそと性器の間にある袋状の組織です。

香嚢にはジェル状の物質が入っており大半はコレステロールなどの動物性脂肪酸ですが、ムスクの香気成分であるムスコン(3-メチルシクロペンタデカノン)が含まれます。

ムスクはメスに対するフェロモン的な効果がある考えられています。


ムスクの香り#5(2018-01-12)
ムスクの香り#4(2018-01-12)
ムスクの香り#3(2007-09-15)
ムスクの香り#2(2007-03-12)
ムスクの香り#1(2007-03-09)
ムスクの謎(2005-12-22)

※この記事は、2007-09-15に投稿した記事を加筆訂正して新規に投稿したものです
(2018-01-12)
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香る生活


ムスクの香り#2

石鹸の残り香 = ムスク


このムスクは、石鹸、洗剤、クリーム、香水などあらゆる化粧品・トイレタリーに使用され私たちの生活を豊かにしてきました。

たとえば、石鹸で手を洗ったあと、ほのかに暖かみのある香りを残すなどの用途にこのムスクは力を発揮します。

近年、環境問題に敏感なヨーロッパがこのムスクの自粛に動いたため世界中の先進国で自粛傾向にあります。


情報公開が少ないムスク


ムスクは香料産業とって非常に大きなテーマで微妙です。研究者の間でも合成ムスクの化学的・学術的な情報が、なかなか公開されないという嘆きが聞こえてきます。


一枚岩ではなくEUの環境政策


上で「環境問題に敏感なヨーロッパが多環ムスクの自粛に動いた」と書きましたが、もちろん、ヨーロッパも一枚岩ではなくEUの環境政策には、「環境」や「安全」という大義名分による国家間の政治闘争の側面もあります。

フランスの化粧品業界のある偉い方が小さなセミナーで言った内容は印象的でした。

「化粧品の安全性の問題は、安全性の問題ではなく、むしろ政治の問題です。化粧品産業をもたない国は『安全』を交渉に利用しているのです」

EU内の複雑さを感じました。


開発が続く合成ムスク


現在では生分解性の高い合成ムスク(「大環状ムスク」、たとえばエチレンブラシレート)がムスコンの代替成分として使用されるようになりました。

香りのパワーとしてはニトロムスクに及ばないとされますが正しい方向に向かっているように感じます。

今後さらに安全性が高く、よりムスコンに近い安全な合成ムスクが開発されていのではないかと期待しています。

ムスクの香り#5(2018-01-12)
ムスクの香り#4(2018-01-12)
ムスクの香り#3(2007-09-15)
ムスクの香り#2(2007-03-12)
ムスクの香り#1(2007-03-09)
ムスクの謎(2005-12-22)

※この記事は、2007-03-12に投稿した記事を加筆訂正して新規に投稿したものです


(2018-01-12)
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香る生活


ムスクの香り#1
香水に関して要望が高い成分がムスクです。香水といえば「ムスク!」のような意見をお持ちの人もかなり多い。

また、惚れ薬的な効果を吹聴する会社さんがあったりして、魅惑の香りのイメージが形成されています。

本物の天然ムスクそれ自体はインドールなども含まれるため、アンモニア臭く動物臭も伴い鼻を押さえたくなるくらい不快なニオイです。

希釈することで妖艶な香りになるのですが、これは河豚(フグ)の毒をちょっと食べてシビレる真の河豚ファンに通じる何かがあります。


ムスクの成分 = ムスコン


ところでムスクの香り成分はムスコンと呼ばれます。ムスクとケトンから作られた造語です。

人類が知る地上最高の妖艶な香り成分であるムスコンの安全で安価な合成方法の確立が香料業界を征するといって過言ではありません。世界の香料メジャーがここでしのぎを削ります。そして、勝負はまだついていません。


合成ムスクの歴史


合成ムスクの歴史は古く1930年代には始まっています。

ところが、「ニトロムスク」と呼ばる初期の合成ムスク(たとえば、ムスクケトン)は、ムスコンとは分子構造が全然違うにもかかわらず、ムスクのように甘く粉っぽく、頭をぼーっとさせる甘美さがありました。

しかし、生分解性が低い上に発ガン性を伴いました。発ガン性の証明って難しいものがあります。

人類は、ニトロムスクの発ガン性を疑いながらもニトロムスクを半世紀以上使用し、今でもどこかで使用されているでしょう。

ニトロムスクは廃棄処理さえ困難を伴いますので環境的にも全面禁止される日が来ることを祈ります。

80年代から「多環系ムスク」と呼ばれる合成ムスクが多用されるようになりました。しかし、これは発ガン性はないとされますが、生分解性が低い(残留性が高い)という欠点があります。

ムスクの香り#5(2018-01-12)
ムスクの香り#4(2018-01-12)
ムスクの香り#3(2007-09-15)
ムスクの香り#2(2007-03-12)
ムスクの香り#1(2007-03-09)
ムスクの謎(2005-12-22)

※この記事は、2007-03-09に投稿した記事を加筆訂正して新規に投稿したものです

(2018-01-12)
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香る生活


ムスクの謎、とってもセクシーになる人
ムスク(Musk)系の香りを好まれる方は多い。


ムスクとは?


ムスクは中国やチベットの山岳地帯に生息している小型の鹿、ジャコウジカの生殖器近くの脂腺から採取される動物性香料ですが、現在天然ムスクを香水の原料として処方することはありません。


ワシントン条約


ジャコウジカは、サイテス(CITES = Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)、通称「ワシントン条約」の規制対象動物です。

日本は、国内産業保護(漢方薬などに配合される)のため、1973年のワシントン条約成立時には留保としていましたが、1980年に批准しました。


天然ムスクは入手できない


そのため、ジャコウジカから採取されるムスクの輸入さえも、学術用途など若干の抜け道があるものの基本的に困難です。

また、倫理的にも天然ムスクを配合しようとする化粧品メーカーはほとんどないと推測されます。

皆無ではありません。特に惚れ薬系香水やフェロモン系を全面に打ち出している香水の製造にはちょっと関心があるかもしれません。

しかし、基本的に、現在では世界的にムスク系の香水といえども、そのムスクは100%合成ムスクが使用されています。


謎の多きムスク


このムスク、謎の多い香料で、それ自体はほのかに甘く粉っぽいのですが、人の体臭と混じると妖艶な香りを発することがあります。

ここがミソです。体臭によっては色気がでてきちゃうというから体臭の強い西洋人にはちょっとマッチしちゃうんですよね。


ムスクで妖艶になる人・そうでない人


お客さん(日本人です)との話ですが、ムスク系香水でムラムラと妖艶な雰囲気になるお友達がいるという話を聞きました。

そのお友達はもともと体臭の強く普通の香水より、ムスク系の香水でより魅力的になるそうです。ムスクは似合う人とそれほど効果が発揮されない人がいます。

噂には聞くムスクパワー、ばっちりマッチした人と出会ったことが少ない私は、本当かどうかぜひ確かめたいと願っていますが、もともと体臭の薄い日本人はムスクの魅了が発揮されにくい民族かもしれません。


ムスクの香り#5(2018-01-12)
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