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( 香水工場の )

香る生活


香水は爆発物?税関で没収の憂き目
カナダ在住の方からのご注文で、いつものようにEMSで出荷したものの荷物がカナダ税関で没収されました。荷物は開封され香水ボトルのみが抜き取られた模様。香水はその30日後現地にて廃棄されるとの連絡を受けたという情報をお客様よりいただきました。

なんでも香水は「爆発物」や「危険物」との判断らしいのです。ちなみに同時に練り香水もご購入いただいたいましたが、こちらは配送箱の中に残されていたとのこと。

郵政グループのEMSの規定では、香水は危険物や爆発物の対象になっていませんが、現地ではそうなのかもしれません。

企業間の輸出入では抜き打ちで荷物の一部を開封・チェックすることはよくありますが、個人向け商品が開封されたことはあまり経験がなかったのでこれもショックでした。カナダには何度も香水を発送していますが、今回のような措置を受けたのははじめてです。

カナダ税関から直接連絡をいただいたわけでなく、また現地の関税法にも明るくなく何が起きているのか詳細は現状不明です。

これもロンドンで起きた例の液体爆弾未遂テロの余波でしょうか。機内への液体持ち込みが禁止されるようになり、香料の輸入にも何かと制約が多くなってきました。そして、個人向けの香水の輸出も危なくなってきたのか?、どうなのか?

それとも世界同時不況の余波で100ドル超えは一律チェック、疑わしきは罰する方式なのか、逆に世界同時不況で流通商品数が激減、その結果いままで実は香水は禁止されていたけれど忙しくてスルーさせてきた荷物に対しても税務官が丹念にチェックする余裕ができだけの話なのか・・・推測だけはいろいろですが、まだ判断しかねています。

数日前にも米国とドイツへ香水を発送しましたが、こちら問題ないようでカナダだけの問題なのか、海外発送を継続するには世界税関事情をもっと勉強する必要がありそうです。
(2009-02-22)
( 香水工場の )

香る生活


香水の種類分け #9
「香水の種類と分類」の最終回。
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(1). フローラル・タイプ(花束をイメージ)
(2). アルデハイド・タイプ(モダンなイメージ)
(3). グリーン・タイプ(緑をイメージ、ユニセックス)
(4). フルーティ・タイプ(果物をイメージ)
(5). ウッディ・タイプ(樹木をイメージ、知的)
(6). シプレー・タイプ(オークモスとベルガモット、格調)
(7). フゼア・タイプ(メンズ)
(8). タバック・レザー・タイプ(葉巻タバコと皮革、ダンディ)
(9). オリエンタル・タイプ(東洋、エキゾチック)
(10).シトラスコロン・タイプ(柑橘系、爽やか)
(11).マリーン・タイプ(海をイメージ)
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書き連ねてみると長くなって9回の連載になりました。今日は最終回。統括します。

香水の原点は「花」です。異論は多いと思いますが、私は個人的にそう感じています。

「香木」は、もちろん香水成分としのプレゼンス(存在感)は多大ですが、その起源は瞑想など心理的な影響力が大きいため宗教儀式の中で利用されたと考えられており、個人がファッションや癒しとして楽しむ香水となると香水の起源「花」が一番しっくり想像できます。

香水に対する憧れ・モチベーションとして花は大きな目標でした。香水が生まれたヨーロッパでは、花の香りを再現し自分で所有したいと思う女性が多かったに違いありません。花を絞ったり(コールドプレス)、焚いたり(水蒸気蒸留)、溶かしたり(溶剤抽出)して香りのエッセンスを取り出す試行錯誤の中から香水文化が生まれました。

香水の都グラースの歴史はまさに南仏プロバンス地方の穏やかな丘陵地帯に生育する数々の花々の恵みの上に成立しました。フローラルタイプ香水の全盛です。

一方、大航海時代になると新大陸発見やインド航路が開拓され、香辛料やムスクやサンダルウッド(白檀)などヨーロッパ人が今まで知らなかった香料が西洋に運び込まれることになります。それはゴールドやプラチナよりも高価というだけでなく、香水の分野では「今まで体験したことがない新しい香り」だったはずです。

彼らは東洋の香料を一般に「エキゾチック」なものと感じ、これらはオリエンタルタイプ香水と呼ばれるようになります。

さらに時代が進むと化学的プロセスによって次々に合成香料が生み出されるようになります。そんな一つの合成香料クマリンを配合したフジェール・ロワイヤルという製品が大人の男性の香り・メンズ香水として大人気になります。

純度が高い合成香料クマリンが「今まで体験したことがない新しい香り」を演出したのです。

さらにシャネルNo.5によって一大香水トレンドが創り出されます。香水に人の香りとセクシーさを加えた、その立役者は言うまでもなく合成香料アルデハイドでした。この合成香料であるアルデハイドも「今まで体験したことがない新しい香り」でした。

そして、1990年前後、人類にまた新しい香水トレンドが生まれました。アクア系・オゾン系香水です。これを生み出した香料はニューケミカルのキャロンでした。キャロンも「今まで体験したことがない新しい香り」でした。びっくりするおニューな香水でした。

このように香りの種類と歴史を眺めていくと、香水の歴史を大きく動かす瞬間には必ず「今まで体験したことがない新しい香り」、つまり「新しい香料」の存在があります。

次の時代に香水の歴史を動かすモノ、新しい香料は何でしょう?・・・深海を除き地上には人類が踏み込んだことがない秘境はもはや残されておらず、新成分の発見があまり期待できないだけに、次のエポックメイキングな香料もニューケミカルになる可能性は充分に高いと考えられます。

そして、それを狙って世界の香料メジャーたちは今日も分子構造をあれこれ変化させるシミュレーションをコンピュータ上で回しているのではないかと空想します。最先端の新薬開発のように。

一方で、香水の原点フローラルタイプは未だナゾのままです。人類は花の香りの完全な再現という夢を実現していません。それどころか、花に芳香に含まれる成分の完全な解明されできていない状態です。

ニューケミカルを作り出せる最先端技術を駆使できても、香水の原点であるフローラルを極めることができないというのも、また自然の偉大さの側面ですね。

長い連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。

(2009-02-12)
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香る生活


香水の種類分け #8
「香水の種類と分類」の8回目。下記は香水タイプ・種類分類方法の一つです。

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(1). フローラル・タイプ(花束をイメージ)
(2). アルデハイド・タイプ(モダンなイメージ)
(3). グリーン・タイプ(緑をイメージ、ユニセックス)
(4). フルーティ・タイプ(果物をイメージ)
(5). ウッディ・タイプ(樹木をイメージ、知的)
(6). シプレー・タイプ(オークモスとベルガモット、格調)
(7). フゼア・タイプ(メンズ)
(8). タバック・レザー・タイプ(葉巻タバコと皮革、ダンディ)
(9). オリエンタル・タイプ(東洋、エキゾチック)
(10).シトラスコロン・タイプ(柑橘系、爽やか)
(11).マリーン・タイプ(海をイメージ)
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きょうは(11). マリーン・タイプ(海をイメージ)の続編です。


1980年代の後半、世界のパフューマーたちはこの水の匂いを求めていました。そこで登場したのが、合成香料の「キャロン」です。(※私はフランス人やアメリカ人がどんな風に発音しているのか知りません。私は「キャロン」といいますが「カロン」や「キャローン」と呼ばれることもあるようです)

合成香料や合成物質というと何かすべてが悪事の賜物にようなイメージを抱いておられる方がおられますが、実はかなり自然なモノが多いのです。たとえば、ビタミンC。私たちの毎日の食品や薬品やサプリメントに配合されるビタミン類はほぼ100%合成で製造されていることはご存じの通りです。

合成香料や合成物質の多くは、自然界に存在する優れた天然成分を分子レベルで再現することで得られます。ところが、一方で合成香料や合成物質の中には自然界に存在しないモノで化学的プロセスを経て人工的に作り出されるものがあります。これが「ニューケミカル」(アーティフィシャル=人工物質)です。

キャロンは完全なニューケミカル。自然回帰というトレンドにおけるヒットの立役者がキャロン!?・・・ニューケミカルがヒット立役者だったという事実は皮肉です。

「自然界に存在しない物質=ニューケミカル」に対しては様々な賛否両論があり簡単に白黒つくものではありませんが、少なくとも安全性の検証という観点からすれば、10年や20年、どうかすると半世紀や一世紀後に発ガン性や環境ホルモン問題がわかるようなものもあるので、扱いが大変難しいことは間違いありません。

自然界に存在しないアーティフィシャル物質は「作らない」・「使わない」・「捨てない」という「アーティフィシャル3原則」を唱える人々が多いことも事実です。また一方で炭素繊維や新素材の分野ではもはや後戻りできないほど人類はそれまで自然界に存在しないか、存在してもごく微量にしか存在しなかったモノを大量に生産し、そしてすでにどっぷりと依存していることも事実かもしれません。この問題は奥が深く今後も論争は続くと思います。

さて、キャロンに戻ります。ネットでマリーン・タイプやオゾンノート系の香水の説明を読むと「朝霧にかすむ森林の中の透明感のある香り」のような説明があります。キャロン香水の説明、万事この類で、歯が浮くような褒め言葉に満ちているものが多いようです。

それはちょっと褒めすぎのような気もします。日本人にはキャロンが強すぎると具合が悪くなる人が多いことは経験的に感じることです。おそらく海外の人々も具合が悪くなる人は多く、近年、欧米でも香水を嫌う人が増え始めていますが、そのきっかけはキャロンや合成ムスクではないかと個人的に考えています。

キャロンについて貴重な資料がありますのでご紹介します。

なお、キャロンは英語で「Calone」と書きます。

下の記事にはコム・デ・ギャルソンの香水の調香を担当しているシムライズ社(メジャー香料会社の一つ)のパフューマーの話が掲載されています。「彼はその匂いが嫌いだった。しかし、その静かで、通り抜けるような拡散効果に魅了された(hated the smell but loved the effect, that quiet, penetrating radiance)」という表現が見えます。個人的にこれがCaloneの特徴をよく言い表している気がしています。

●要約:
「ファイザー製薬の科学者が1966年にトランキライザー(精神安定剤)に分子構造が似ている奇妙な分子構造の成分のパテントを申請しました。匂いはなかったのですが、あえて表現すれば「メロンのような」匂いでした。

ファイザー製薬は当時買収したグラースの香水メーカー"Camilli Albert Laloue"社にその物質を渡します。彼らは社名にちなんで「Calone」(キャロン)と命名しました。しかし、その後この物質は長い間放置されました。

1989年、イヴ・タンギーというパフューマーは「水の匂いの香水の時代が来た」(the time for watery notes had come)と考え「New West」という製品をリリースします。その数年以内にエスケープ、ケンゾーオム、ロードイッセイなどにキャロンは採用されていきました。」


---------------QUOTE--------------
Calone
NZZ Folio 09/07 - Thema: Sicherheit Inhaltsverzeichnis
Calone
By Luca Turin

In August 1966, chemists at the drug giant Pfizer filed a patent for a strange molecule that looked like a tranquilizer (distantly related to Valium) and smelled like nothing on earth, or “melon” as they prosaically described it. Pfizer had bought the venerable Grasse firm of Camilli Albert Laloue two years earlier, so they handed the beast over to their perfumed friends who christened it Calone after the firm’s initials. There it slept for twenty years, while the patent ran out. Then in 1989 perfumer Yves Tanguy understood that the time for watery notes had come and composed New West. Within three years Escape, Kenzo Homme and Eau d’Issey had put Calone at the forefront of perfumery, where it still is. (略)

Synchronicity: I called Mark Buxton, a Symrise perfumer who did many Comme des Garcons fragrances and, almost alone, created the new aesthetic of transparent woody florals that everyone is imitating. I asked him how it all started. He said “Calone”. He hated the smell but loved the effect, that quiet, penetrating radiance. (略)
---------------QUOTE--------------


(2009-02-09)
( 香水工場の )

香る生活


香水の種類分け #7
「香水の種類と分類」の7回目。下記は香水タイプ・種類分類方法の一つです。

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(1). フローラル・タイプ(花束をイメージ)
(2). アルデハイド・タイプ(モダンなイメージ)
(3). グリーン・タイプ(緑をイメージ、ユニセックス)
(4). フルーティ・タイプ(果物をイメージ)
(5). ウッディ・タイプ(樹木をイメージ、知的)
(6). シプレー・タイプ(オークモスとベルガモット、格調)
(7). フゼア・タイプ(メンズ)
(8). タバック・レザー・タイプ(葉巻タバコと皮革、ダンディ)
(9). オリエンタル・タイプ(東洋、エキゾチック)
(10).シトラスコロン・タイプ(柑橘系、爽やか)
(11).マリーン・タイプ(海をイメージ)
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きょうは(11). マリーン・タイプ(海をイメージ)です。

このマリーン・タイプは、1990年代初頭という比較的最近に登場したタイプです。アクア系・オゾン系ともいわれます。要は「水系」です。

80年代は世界的に平和と経済的発展・繁栄の時代でした。アメリカで生まれた大量生産・大量流通・大量消費というライフスタイルが世界中に拡散していく時代です。

それはそれまで人類が体験したことがないような豊かなモノ社会である反面、その反動として人々の心にナチュラル志向・自然回帰の現象が起きた時代です。スピリチュアル志向トレンドも盛んになる時代です。そしてこれらのトレンドは現在も続いています。

ナチュラル志向・自然回帰は香水の分野でも模索され、その結果生み出されたニュータイプの香水トレンドが「マリーン・タイプ」や「オソン・タイプ」「アクア・タイプ」と呼ばれる水の匂いを感じさせる系統の香水でした。

アクア系のいくつかの製品が出た後「ロードイッセイ」という香水が「キャロン」という合成香料が使用し、「オゾンノート」「マリンノート」「アクアノート」という新ジャンルを打ち立てました。その後堰を切ったようにキャロン香水が登場するようになり、現在もその流れは止まりません。

水に匂いがあるか?という問いは難しい問題です。

私は「ない」と思います。しかし、何かのはずみで「水のような匂い」をふと感じる瞬間は誰でもあると思います。外で干していた洗濯物を取り込むとき「ふと」感じるあれです。にわか雨が降り出したとき、海岸を歩いているとき、磯の匂いとは別の「水っぽい匂い」の何か。蛍光灯やテレビの近くで発生しているオゾンにも「水っぽい匂い」を感じる人は少なくありません。

私的表現をすれば水の匂いとは「ブブとした匂い」です。

オゾンや海辺のナゾの匂いが「水の匂い」かどうかは別として、これらは「マリンノート」「オゾンノート」「アクアノート」と命名されるようになりました。

(続く)

(2009-02-07)
( 香水工場の )

香る生活


香水の種類分け #6
「香水の種類と分類」の6回目。下記は香水タイプ・種類分類方法の一つです。

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(1). フローラル・タイプ(花束をイメージ)
(2). アルデハイド・タイプ(モダンなイメージ)
(3). グリーン・タイプ(緑をイメージ、ユニセックス)
(4). フルーティ・タイプ(果物をイメージ)
(5). ウッディ・タイプ(樹木をイメージ、知的)
(6). シプレー・タイプ(オークモスとベルガモット、格調)
(7). フゼア・タイプ(メンズ)
(8). タバック・レザー・タイプ(葉巻タバコと皮革、ダンディ)
(9). オリエンタル・タイプ(東洋、エキゾチック)
(10).シトラスコロン・タイプ(柑橘系、爽やか)
(11).マリーン・タイプ(海をイメージ)
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きょうは(10). シトラスコロン・タイプ(柑橘系、爽やか)です。


レモンやグレープフルーツの香りは誰もが体験・経験があり記憶のある香りなので非常にわかりやすいと思います。シトラス・タイプはしばしばコロンに多用されます。

その理由は芳香分子量が小さく揮発性が高く香りも成分も飛びやすいからです。コロンのようにライトで後に香りを残さないタイプの香水に向いています。

逆にパルファムのようにある程度の残香が期待される香水には不向きです。もちろん、パルファムにシトラス成分を配合していけないということはまったくありませんが、すぐに飛びますのでパルファムでしたら、シトラス・タイプはトップノートの演出にしばしば利用される傾向があります。

シトラス系精油の成分はリモネン、シトラール(ネラール・ゲラニアール)、リナロールなどのテルペン類(とくにモノテルペンを指す。モノテルペンとは炭素原子数10を基本とする有機化合物で花などの芳香成分)がメインです。

シトラス自体は、生物学的にフルーツの一部ですので本来は香りの種類・分類として「フルーティ・タイプ」の一部になるはずです。が、フルーツ・タイプの甘さを考えるとシトラスだけはフルーツの中で「別物」グループとして扱われることが普通です。

このような理由で「シトラス・タイプ」として独立した分類になっていると思われます。

さて、明日はオゾンノートです。

お楽しみに。


(2009-02-06)
( 香水工場の )

香る生活


香水の種類分け #5
「香水の種類と分類」の5回目。下記は香水タイプ・種類分類方法の一つです。

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(1). フローラル・タイプ(花束をイメージ)
(2). アルデハイド・タイプ(モダンなイメージ)
(3). グリーン・タイプ(緑をイメージ、ユニセックス)
(4). フルーティ・タイプ(果物をイメージ)
(5). ウッディ・タイプ(樹木をイメージ、知的)
(6). シプレー・タイプ(オークモスとベルガモット、格調)
(7). フゼア・タイプ(メンズ)
(8). タバック・レザー・タイプ(葉巻タバコと皮革、ダンディ)
(9). オリエンタル・タイプ(東洋、エキゾチック)
(10).シトラスコロン・タイプ(柑橘系、爽やか)
(11).マリーン・タイプ(海をイメージ)
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きょうは(9). オリエンタル・タイプ(東洋、エキゾチック)です。

文字通り「東洋的な香り」という意味ですが、かなり広い。日本人からする「東洋的」がカバーする範囲は中国・東南アジアあたり?自国の日本は「日本的」「和的」であり、東洋的とは心理的にちょっと距離がないでしょうか? 

しかし、世界的な視点から考えれば日本も「東洋」=「The Orient、オリエント、アジア」であることは間違いありません。異議なしです。

では、インドはアジアか?・・・インドはアジアの大国ですが、インドにはインド独自のイメージがあって東洋のイメージかな〜?

パキスタンは?・・・ちょっとアラビアっぽい。中東かな?

イランは?・・・これは中東でしょう。

トルコも中東でしょう。え?EUに加盟しようとしている。ヨーロッパに入りたいのかな?

私のイメージはこんな感じですが、ヨーロッパ人にすれば、トルコのイスタンブル(イスタンブール)より向こうは、全部ひっくるめて「アジア」です。イスタンブルは東西文化の接点、融合の地。イスタンブルのボスポラス海峡にかかる大橋を渡ればそこはアジアのような記述が普通です。

オリエント急行の終着駅であるイスタンブル駅を降りるとすぐにボスポラス海峡が眼前に広がります。ヨーロッパの人々は遠く旅してきてボスポラス海峡の海辺に立ったとき、ここが世界を2つに分けている、まさにその「ヘソに来た」と感慨深く物思いに耽ったことでしょう。

でもそれはちょっと大雑把すぎないかと思わないこともありません。

イスラム世界と東アジアでは人種も文化も歴史もかなり分断したものがあります。だいたいヨーロッパから日本に辿り着くまでに、イスラム文化圏、インド文化圏、東南アジア文化圏、中国文化圏とそれぞれ歴史的にも文化的にもヨーロッパ文明に匹敵する文化圏が3つ4つもあるわけですから。

そんなわけで香水の「オリエンタル・タイプ」も相当広いです。オリエンタル・タイプに含まれる香りのタイプはアジアで採取される香料が使用され、それまでのヨーロッパ伝統の香り(フローラル)と印象がかなりちがったものを指します。

ムスクやシベットなどの動物性香料、サンダルウッド(白檀)や伽羅などの香木類、ミルラやオリバナムなどの樹脂系香料、コリアンダーやクローブなどアジア産香辛料・ハーブ系香料などが使用されていると、なんとなく「オリエンタル」です。

アラビアンナイトのイメージとともに、それらは異国情緒でセクシーで官能的だったのでしょうか。

オリエンタル・タイプの香水は「エキゾチック」や「ミステリアス」と表現されることがあります。これもヨーロッパ人がそれまで体験してこなかった香りという事情と背景が多分にあるでしょう。

しかし、それらの香料は産地の人からすればエキゾチックでもなんでもなく、故郷の香り・故郷の味・お母さんの味であることは言うまでもありません。

現代のヨーロッパ人は、たとえばイギリスでは20年前まで食べる人がほとんどいなかったコリアンダーでさえ、今ではイギリスのトップ3に入る人気ハーブ。イギリスの現代っ子は生まれたときからコリアンダーを食べていますので、コリアンダーをエキゾチックと感じる人は次の時代にはいなくなり、むしろコリアンダーは「ママの味」「懐かしい香り」「故郷の香り」になります。

香料ではありませんが、寿司だってあと10年もすれば世界の標準食でしょう。オリエンタルなんかではなくなると思います。

そんなわけで、次の時代「オリエンタル・タイプ」の「エキゾチック」や「ミステリアス」という説明文が生き残れるかどうかはやや不安です。アルデハイドタイプの香水をモダンな香りと表現することがかなり怪しくなってきた事情と似ています。


(2009-01-30)
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