( 香水工場の )
香る生活
シガーの香り、年間200万円を燃す男達
阿片は、依存性が強く危険な麻薬=ハードドラッグに分類されますが、大麻(マリファナ)はどうでしょうか?アムステルダムでは、大麻はコーヒーショップで楽しまれる嗜好品。
オランダやベルギーでは合法のソフトドラッグ(ハードドラッグよりは危険性の少ない麻薬)として扱われ、毎日イギリスやフランスから日帰りで大麻買い出しの観光客が絶えません。
大麻はアサという植物から採れる抽出物質です。日本でもどこかの大学生が、寮のベランダでガーデニングしているところを逮捕されたというニュースが最近流れていましたが、世界の若者たちに浸透中のようです。
アムステルダムでは「大麻よりタバコの方がはるかに有害」という意見さえ聞かれるそうで、日本で暮らしている私には計り知れない世界が展開されているようです。
しかし、戦前の上海で暮らしていた人々の話や読み物を読むと、阿片喫茶(正式名はど忘れ)と言えるようなモノがあって、とてもハイカラに阿片を楽しんでいた話にぶつかったりします。どこかで読んだ思い出話は、阿片モクをパイプに詰めて火を灯すまでの描写が丁寧で、上海デカダンスな光景は芸術的でした。
麻薬には「依存症」(薬物中毒)というリスクがあります。
そのため多くの政府が、一般人の麻薬の使用を禁止しています。薬物中毒患者の壮絶な治療光景をテレビなどで見るにつけ「禁止は正当」と感じます。
欲を言えば、タバコも麻薬の一種ですので大儀としては禁止してしかるべきですが、実際は、国家を潤す巨額の税収とそれが支える産業、それに携わる人々の存在を考えると「とりあえず現状維持」と政治家の先生方が考えるのもムリからぬこと。
しかし、逆に言えば、麻薬とは、薬物中毒という危険を犯してでも人を踏み込ませるだけの魅力があるというです。
相当、奥が深そうです。
モルヒネは阿片と同じ成分を有する医薬品ですが、考えてみれば麻薬は機能的には医薬品そのものです。しかも「劇的な効果」を有する医薬品ということになります。最強の医薬品かもしれません。
人類の麻薬との葛藤はこれからも深く続いていくようです。
非合法な話はこれくらいにして、きょうは合法の「葉巻」です。「シガー」と呼ばれるタバコ。麻薬より安全ですが、麻薬のように男達の心を魅了する嗜好品として葉巻の人気が日本でも高まっているそうです。
私はシガー経験はありませんが、パイプなら試したことがあります。大学受験で浪人していた頃、仲良くしてた同じ浪人生の自宅に遊びに行くと、そこは「パイプの部屋」でした。
高校出たてのガキがパイプを吹かす姿はまったくサマにならないのですが、部屋を満たすその香りは芳醇でした。刻みタバコの種類によりますが、彼が見せてくれたコレクションは数十銘柄、引き出しを引くとずらりと洋モノのモクが並んでいました。
「コイツは何を考えているんだ」と思いつつその香りには感動したものです。
予想するにパイプ用刻みタバコにはフレーバーリング(味付け)が施されていますが、その香りの奥深さはすばらしく、ウイスキーのように木材による味付けか?とも考えたりしました。詳細は不明です。
パイプの場合、吸っている本人より周囲が幸福になれると思います。シャーロック・ホームズが好きな人なら一度は試してみたいパイプのはずですが、しかし、日本ではイマイチ普及しませんでした。
シガーの香りもすばらしいに違いありません。
先日打ち合わせをしたある会社さんは、シガーの世界的ブランドの輸入商社さん。香水についての打ち合わせですが、打ち合わせの合間にシガーの世間話になり、いろいろ話をお聞きしました。
個人的にはタバコ同様、社会的には減少に向かって欲しい一品ですが、その話は、私にはもうまったく別世界。香りという意味では香水に通じる世界です。
シガー(葉巻)とは、文字通りタバコの葉っぱを刻まずに何枚か重ねて巻いただけのタバコです。
彼によると葉っぱは一定期間、発酵・熟成させた後、一番美味しいところだけをカットして数種類の葉っぱの重ね合わせて巻き込むそうです。一本吸い終わるまでにプレミアムシガーなら数十分から1時間。ハンドメイドのキューバ産やドミニカ産最高級シガーになると相当のお値段。
「一度はまると抜けられませんよ」とにっこり。
彼が知っているシガー愛好者は、年間200万円をシガーに使っているそうです。そこまで行かなくとも大枚を惜しげもなくつぎ込む男達は日本にも少なくないそうで、その話は、かなり別世界でパワーがあります。
「フレンチを食べに行くよりは安いかもしれませんが、まあ、一万円札を燃やしているようなもんですね」
燃してなくなる・・・富の完璧なまでの償却。真の贅沢とはこういうことかもしれません。
(2008-04-19)
オランダやベルギーでは合法のソフトドラッグ(ハードドラッグよりは危険性の少ない麻薬)として扱われ、毎日イギリスやフランスから日帰りで大麻買い出しの観光客が絶えません。
大麻はアサという植物から採れる抽出物質です。日本でもどこかの大学生が、寮のベランダでガーデニングしているところを逮捕されたというニュースが最近流れていましたが、世界の若者たちに浸透中のようです。
アムステルダムでは「大麻よりタバコの方がはるかに有害」という意見さえ聞かれるそうで、日本で暮らしている私には計り知れない世界が展開されているようです。
しかし、戦前の上海で暮らしていた人々の話や読み物を読むと、阿片喫茶(正式名はど忘れ)と言えるようなモノがあって、とてもハイカラに阿片を楽しんでいた話にぶつかったりします。どこかで読んだ思い出話は、阿片モクをパイプに詰めて火を灯すまでの描写が丁寧で、上海デカダンスな光景は芸術的でした。
麻薬には「依存症」(薬物中毒)というリスクがあります。
そのため多くの政府が、一般人の麻薬の使用を禁止しています。薬物中毒患者の壮絶な治療光景をテレビなどで見るにつけ「禁止は正当」と感じます。
欲を言えば、タバコも麻薬の一種ですので大儀としては禁止してしかるべきですが、実際は、国家を潤す巨額の税収とそれが支える産業、それに携わる人々の存在を考えると「とりあえず現状維持」と政治家の先生方が考えるのもムリからぬこと。
しかし、逆に言えば、麻薬とは、薬物中毒という危険を犯してでも人を踏み込ませるだけの魅力があるというです。
相当、奥が深そうです。
モルヒネは阿片と同じ成分を有する医薬品ですが、考えてみれば麻薬は機能的には医薬品そのものです。しかも「劇的な効果」を有する医薬品ということになります。最強の医薬品かもしれません。
人類の麻薬との葛藤はこれからも深く続いていくようです。
非合法な話はこれくらいにして、きょうは合法の「葉巻」です。「シガー」と呼ばれるタバコ。麻薬より安全ですが、麻薬のように男達の心を魅了する嗜好品として葉巻の人気が日本でも高まっているそうです。
私はシガー経験はありませんが、パイプなら試したことがあります。大学受験で浪人していた頃、仲良くしてた同じ浪人生の自宅に遊びに行くと、そこは「パイプの部屋」でした。
高校出たてのガキがパイプを吹かす姿はまったくサマにならないのですが、部屋を満たすその香りは芳醇でした。刻みタバコの種類によりますが、彼が見せてくれたコレクションは数十銘柄、引き出しを引くとずらりと洋モノのモクが並んでいました。
「コイツは何を考えているんだ」と思いつつその香りには感動したものです。
予想するにパイプ用刻みタバコにはフレーバーリング(味付け)が施されていますが、その香りの奥深さはすばらしく、ウイスキーのように木材による味付けか?とも考えたりしました。詳細は不明です。
パイプの場合、吸っている本人より周囲が幸福になれると思います。シャーロック・ホームズが好きな人なら一度は試してみたいパイプのはずですが、しかし、日本ではイマイチ普及しませんでした。
シガーの香りもすばらしいに違いありません。
先日打ち合わせをしたある会社さんは、シガーの世界的ブランドの輸入商社さん。香水についての打ち合わせですが、打ち合わせの合間にシガーの世間話になり、いろいろ話をお聞きしました。
個人的にはタバコ同様、社会的には減少に向かって欲しい一品ですが、その話は、私にはもうまったく別世界。香りという意味では香水に通じる世界です。
シガー(葉巻)とは、文字通りタバコの葉っぱを刻まずに何枚か重ねて巻いただけのタバコです。
彼によると葉っぱは一定期間、発酵・熟成させた後、一番美味しいところだけをカットして数種類の葉っぱの重ね合わせて巻き込むそうです。一本吸い終わるまでにプレミアムシガーなら数十分から1時間。ハンドメイドのキューバ産やドミニカ産最高級シガーになると相当のお値段。
「一度はまると抜けられませんよ」とにっこり。
彼が知っているシガー愛好者は、年間200万円をシガーに使っているそうです。そこまで行かなくとも大枚を惜しげもなくつぎ込む男達は日本にも少なくないそうで、その話は、かなり別世界でパワーがあります。
「フレンチを食べに行くよりは安いかもしれませんが、まあ、一万円札を燃やしているようなもんですね」
燃してなくなる・・・富の完璧なまでの償却。真の贅沢とはこういうことかもしれません。
(2008-04-19)
( 香水工場の )
香る生活
10年間使える香水を捜している!
香水ショップでよく聞かれる質問の一つに「10年間使える香水を捜している」というものがあります。
人情として共感します。
香水選びは「本当に自分の好きな香り」で「周囲にも好感度の高いモノ」などのような条件をつけていくと、それなりに大変ですので一度見つければ「デフォルトこれよ」という状態にしていれば楽です。
人は「考えること」や「選択すること」がときとして負担、面倒です。「捜しに行くこと」もそれなりに時間と労力とおカネがかかり、そして、疲れます。
私の場合、ランチどき、レストランのテーブルでメニューを拡げると「今日のオススメ」や「本日のランチ」など一番上に書かれていると、なんとなく誘導されることが多い。
この場合、突き詰めて考えると私は自分が食べたいものは何かというテーマに真剣に向き合わずに選択権を放棄しています。
しかし、四六時中何でもかんでも真剣ってのも疲れますよね。
話が少しそれました。
「10年間使える香水」を捜している方は、おそらく香水探しがそれなりに大変だということをご存知だから、そういう気持ちになられるのでしょう。
「10年間使える香水を捜している」という方が香水ショップを訪れると、香水アドバイザーの中には「それはムリ」と断言される方もおられます。
私も同じ意見です。人は時間とともに変化します。人の嗜好も体質も年齢とともに変化しますし、一日のうちでも朝と晩、オフィスと自宅では気持ちも意識も違います。
香水も「その場のシチュエーションにふさわしい香り」がありますし、「その年齢」や「その時の心境」にぴったりのものがあります。
同じ香水で「いつでも・いつまでも・私はこの香り」という考え方はせず、ファッションや服装と同じようにいろいろな香りを試して自分の香りのレンジを拡げていくという態度が、けっきょく、楽だと思います。
気張らず、あきらめず、気長に「私のお気に入り」を捜してください。お気に入りは、案外、偶然訪れることも・・・
(2008-04-18)
人情として共感します。
香水選びは「本当に自分の好きな香り」で「周囲にも好感度の高いモノ」などのような条件をつけていくと、それなりに大変ですので一度見つければ「デフォルトこれよ」という状態にしていれば楽です。
人は「考えること」や「選択すること」がときとして負担、面倒です。「捜しに行くこと」もそれなりに時間と労力とおカネがかかり、そして、疲れます。
私の場合、ランチどき、レストランのテーブルでメニューを拡げると「今日のオススメ」や「本日のランチ」など一番上に書かれていると、なんとなく誘導されることが多い。
この場合、突き詰めて考えると私は自分が食べたいものは何かというテーマに真剣に向き合わずに選択権を放棄しています。
しかし、四六時中何でもかんでも真剣ってのも疲れますよね。
話が少しそれました。
「10年間使える香水」を捜している方は、おそらく香水探しがそれなりに大変だということをご存知だから、そういう気持ちになられるのでしょう。
「10年間使える香水を捜している」という方が香水ショップを訪れると、香水アドバイザーの中には「それはムリ」と断言される方もおられます。
私も同じ意見です。人は時間とともに変化します。人の嗜好も体質も年齢とともに変化しますし、一日のうちでも朝と晩、オフィスと自宅では気持ちも意識も違います。
香水も「その場のシチュエーションにふさわしい香り」がありますし、「その年齢」や「その時の心境」にぴったりのものがあります。
同じ香水で「いつでも・いつまでも・私はこの香り」という考え方はせず、ファッションや服装と同じようにいろいろな香りを試して自分の香りのレンジを拡げていくという態度が、けっきょく、楽だと思います。
気張らず、あきらめず、気長に「私のお気に入り」を捜してください。お気に入りは、案外、偶然訪れることも・・・
(2008-04-18)
( 香水工場の )
香る生活
花の芳香を弱める排ガス
春ですね。日々新緑が目に染みる季節です。
昔のことですが、中学のとき「沈黙の春」という本を読みました。人類の環境破壊に対するとっても古い警告本だったのですが、正直、あまり実感は湧きませんでした。(そもそも最後まで読み切れませんでした)
子供心にもそれなりに公害や環境破壊には心を痛めていましたが、アクションとなると「田舎のガキに何ができる?」と自問すればやはり「とりあえず現状維持」と妙にお役所的な態度でした。
しかし、環境問題は、近年いよいよ待ったなしの時代に突入してきた感じです。せめて今の私に出きることといえば・・・
歩いて行けるところは車を使わず、歩く、チャリにするというせめてもの生活態度。これだけだけでも多くの人々が実践すれば、それなりの効果が期待できるかもしれません。なにより自分自身の健康にいいし、ご飯が美味しくなります。一石三鳥です。
歩くことを楽しもう、と強引に思いこんで生活しています。
ところで、環境汚染はさまざま問題を引き起こしていますが、「花の芳香を弱めている」という研究結果が発表され欧米の新聞で広く取り上げられています。中国の英字新聞にも取り上げられていることを見つけました(Pollutants take the fragrance out of spring、汚染物質が春の香りを損なう)。言論統制が厳しい中国でも環境問題は待ったなし、比較的欧米の情報も流していいのでしょう。
空気汚染が花の芳香に悪影響を与えていることは体験的に感じることで、何を今さらという感がないでもないですが、こういうことは数値データを取って論文に落とすことで政治的・マーケティング的なパワーを持ちます。
さっそくさわりをご紹介します。
文中に「ミツバチ集団失踪現象」とでてきますが私の意訳です。2006年くらいから米国の西南部を中心に一夜にしてミツバチがいなくなる怪現象が多発しており「蜂群崩壊症候群、Colony Collapse Disorder、CCD」と命名されています。日本語では「いないいない病」とふざけたネーミングが付けられています。
ミツバチの受粉に頼るアーモンドや林檎の収穫に大きな被害が発生している模様です。
Study Indicates Flowers' Fragrance Diminished By Air Pollution
「大気汚染が引き起こす、花の芳香への悪影響」最新の研究が示す
バージニア大学の最新の研究によると、火力発電所や自動車から排出される排ガス・大気汚染が花の芳香に悪影響を及ぼし、その結果、芳香を頼りに花々を移動する昆虫たちの活動を阻害している可能性があることが発表されました。
この事実は、カリフォルニア州やオランダで起きているミツバチ集団失踪現象の説明になる可能性があると主張しています。
「花から放出される芳香は、大気汚染が少なかった1800年代は1〜1.2キロメートル漂うと推測されることに対して、現在、大気が汚染された主要都市では200〜300メートル程度です」と環境科学の教授は指摘します・・・
---------------QUOTE--------------
Study Indicates Flowers' Fragrance Diminished By Air Pollution
4/15/2008 Air pollution from power plants and automobiles is destroying the fragrance of flowers and thereby inhibiting the ability of pollinating insects to follow scent trails to their source, a new University of Virginia study indicates. This could partially explain why wild populations of some pollinators, particularly bees ・which need nectar for food ・are declining in several areas of the world, including California and the Netherlands.
The study appears online in the journal Atmospheric Environment.
"The scent molecules produced by flowers in a less polluted environment, such as in the 1800s, could travel for roughly 1,000 to 1,200 meters; but in today's polluted environment downwind of major cites, they may travel only 200 to 300 meters," said Jose D. Fuentes, a professor of environmental sciences at the University of Virginia and a co-author of the study. "This makes it increasingly difficult for pollinators to locate the flowers."
---------------QUOTE--------------
(2008-04-17)
昔のことですが、中学のとき「沈黙の春」という本を読みました。人類の環境破壊に対するとっても古い警告本だったのですが、正直、あまり実感は湧きませんでした。(そもそも最後まで読み切れませんでした)
子供心にもそれなりに公害や環境破壊には心を痛めていましたが、アクションとなると「田舎のガキに何ができる?」と自問すればやはり「とりあえず現状維持」と妙にお役所的な態度でした。
しかし、環境問題は、近年いよいよ待ったなしの時代に突入してきた感じです。せめて今の私に出きることといえば・・・
歩いて行けるところは車を使わず、歩く、チャリにするというせめてもの生活態度。これだけだけでも多くの人々が実践すれば、それなりの効果が期待できるかもしれません。なにより自分自身の健康にいいし、ご飯が美味しくなります。一石三鳥です。
歩くことを楽しもう、と強引に思いこんで生活しています。
ところで、環境汚染はさまざま問題を引き起こしていますが、「花の芳香を弱めている」という研究結果が発表され欧米の新聞で広く取り上げられています。中国の英字新聞にも取り上げられていることを見つけました(Pollutants take the fragrance out of spring、汚染物質が春の香りを損なう)。言論統制が厳しい中国でも環境問題は待ったなし、比較的欧米の情報も流していいのでしょう。
空気汚染が花の芳香に悪影響を与えていることは体験的に感じることで、何を今さらという感がないでもないですが、こういうことは数値データを取って論文に落とすことで政治的・マーケティング的なパワーを持ちます。
さっそくさわりをご紹介します。
文中に「ミツバチ集団失踪現象」とでてきますが私の意訳です。2006年くらいから米国の西南部を中心に一夜にしてミツバチがいなくなる怪現象が多発しており「蜂群崩壊症候群、Colony Collapse Disorder、CCD」と命名されています。日本語では「いないいない病」とふざけたネーミングが付けられています。
ミツバチの受粉に頼るアーモンドや林檎の収穫に大きな被害が発生している模様です。
Study Indicates Flowers' Fragrance Diminished By Air Pollution
「大気汚染が引き起こす、花の芳香への悪影響」最新の研究が示す
バージニア大学の最新の研究によると、火力発電所や自動車から排出される排ガス・大気汚染が花の芳香に悪影響を及ぼし、その結果、芳香を頼りに花々を移動する昆虫たちの活動を阻害している可能性があることが発表されました。
この事実は、カリフォルニア州やオランダで起きているミツバチ集団失踪現象の説明になる可能性があると主張しています。
「花から放出される芳香は、大気汚染が少なかった1800年代は1〜1.2キロメートル漂うと推測されることに対して、現在、大気が汚染された主要都市では200〜300メートル程度です」と環境科学の教授は指摘します・・・
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Study Indicates Flowers' Fragrance Diminished By Air Pollution
4/15/2008 Air pollution from power plants and automobiles is destroying the fragrance of flowers and thereby inhibiting the ability of pollinating insects to follow scent trails to their source, a new University of Virginia study indicates. This could partially explain why wild populations of some pollinators, particularly bees ・which need nectar for food ・are declining in several areas of the world, including California and the Netherlands.
The study appears online in the journal Atmospheric Environment.
"The scent molecules produced by flowers in a less polluted environment, such as in the 1800s, could travel for roughly 1,000 to 1,200 meters; but in today's polluted environment downwind of major cites, they may travel only 200 to 300 meters," said Jose D. Fuentes, a professor of environmental sciences at the University of Virginia and a co-author of the study. "This makes it increasingly difficult for pollinators to locate the flowers."
---------------QUOTE--------------
(2008-04-17)
( 香水工場の )
香る生活
生命が発する香り、菜の花
スイレンやハス(ロータス)は、瞑想中の大仏さまの台座として描かれるため神秘的な印象を人々に与え続けます。これは仏教の影響を受けた地域の人々だけの話かと思いきや、エルメスのトワレ「Un Jardin sur le Nil(ナイルの庭)」のパッケージに描かれたロータスを見たとき、日本的な印象を受け、ヨーロッパ人がロータスに抱く神秘的なイメージを垣間見た気がしました。
私は仏教系幼稚園に通い、朝に感謝・夕べに祈りという生活を過ごしました。お寺のいたるところに彫り物や置物として装飾されるスイレンやハス。また、法事・仏事で焚かれる線香の匂いや、葬儀やお通夜で見たスイレンやハスを象った走馬燈が強く記憶に残り、私にとってスイレンやハスは天国とイメージがリンクしています。
※ちなみに私にはスイレンとハスの違いがあまりつきません。
しかし、どちらかというとスイレンやハスは「死語の世界」のイメージです。神秘的で永遠で深く孤高です。
一方、私にとってもう一つ天国にイメージがリンクする花が「菜の花」と「れんげ」です。これらはどちらかというと現世に近いというか、庶民的な天国の花のイメージです。
え「彼岸花」?、いやいや。それもまた奥が深いのですが、その話題はまた後日させていただくとして、今日は今東京で真っ盛りの「菜の花」について。
私の叔母は若い頃、胸の病気で死にかけましたが、10時間以上に及び手術を受け一命をとりとめました。手術中天井が一面、菜の花畑の大パノラマになったそうです。
そして、そこには清流が流れ、穏やかな空気が漂っていました。吸い込まれるように菜の花畑に入り込もうとすると呼ぶ声が聞こえ、はっと目を覚ますと手術がちょうど終わったところでした。
なんとか下界に戻れて、感謝の気持ちで満たされる話です。
そのお花畑を今でも彼女は「本当に綺麗だった」と回顧しています。
「その小川を渡りきっていたらどうなっていたか?」と空想しながらこの話を私は聞くわけですが、これも日本中で体験者が絶えない「三途の川伝説」でしょうか。
このような危機的状況では自分もそういう幻影をビジュアルに大画面で見る機会が来るかもしれないと感じています。
この究極のシチュエーションで大地を覆い尽くす花が菜の花であることは、私たち日本人にとって菜の花がどれくらい特別な花か、その一面を物語ります。
何年も前から社内的に「菜の花、お願いします」と企画を上げていますが、あのオシッコ臭い独特の香りは「気は確か?」と言われます。
菜の花は晴れた日、暖かくなるととたんに香りを強めます。ミツバチを呼び寄せているに違いありません。香りの質まで濃厚になっていきます。そのため菜の花の香りには静寂の中に響く「ミツバチの羽音」と「暖かくほがらかな日」というイメージがリンクしています。
今年も東京には菜の花の季節が来ています。思うに菜の花は、香水のように液体の自然揮発を利用した芳香ではなく、能動的に生命活動として香りを発しています。菜の花の香り作りを困難にしている一つの原因です。
生命の香りにかなう訳がありません。
仮に「菜の花オードパルファン」ができても世間の笑いモノになるか「ウケ狙い?」ととられ、ビジネス的には有望と言えないこのプロジェクト。何年かかけて実現したいと考えています。
(2008-04-15)
私は仏教系幼稚園に通い、朝に感謝・夕べに祈りという生活を過ごしました。お寺のいたるところに彫り物や置物として装飾されるスイレンやハス。また、法事・仏事で焚かれる線香の匂いや、葬儀やお通夜で見たスイレンやハスを象った走馬燈が強く記憶に残り、私にとってスイレンやハスは天国とイメージがリンクしています。
※ちなみに私にはスイレンとハスの違いがあまりつきません。
しかし、どちらかというとスイレンやハスは「死語の世界」のイメージです。神秘的で永遠で深く孤高です。
一方、私にとってもう一つ天国にイメージがリンクする花が「菜の花」と「れんげ」です。これらはどちらかというと現世に近いというか、庶民的な天国の花のイメージです。
え「彼岸花」?、いやいや。それもまた奥が深いのですが、その話題はまた後日させていただくとして、今日は今東京で真っ盛りの「菜の花」について。
私の叔母は若い頃、胸の病気で死にかけましたが、10時間以上に及び手術を受け一命をとりとめました。手術中天井が一面、菜の花畑の大パノラマになったそうです。
そして、そこには清流が流れ、穏やかな空気が漂っていました。吸い込まれるように菜の花畑に入り込もうとすると呼ぶ声が聞こえ、はっと目を覚ますと手術がちょうど終わったところでした。
なんとか下界に戻れて、感謝の気持ちで満たされる話です。
そのお花畑を今でも彼女は「本当に綺麗だった」と回顧しています。
「その小川を渡りきっていたらどうなっていたか?」と空想しながらこの話を私は聞くわけですが、これも日本中で体験者が絶えない「三途の川伝説」でしょうか。
このような危機的状況では自分もそういう幻影をビジュアルに大画面で見る機会が来るかもしれないと感じています。
この究極のシチュエーションで大地を覆い尽くす花が菜の花であることは、私たち日本人にとって菜の花がどれくらい特別な花か、その一面を物語ります。
何年も前から社内的に「菜の花、お願いします」と企画を上げていますが、あのオシッコ臭い独特の香りは「気は確か?」と言われます。
菜の花は晴れた日、暖かくなるととたんに香りを強めます。ミツバチを呼び寄せているに違いありません。香りの質まで濃厚になっていきます。そのため菜の花の香りには静寂の中に響く「ミツバチの羽音」と「暖かくほがらかな日」というイメージがリンクしています。
今年も東京には菜の花の季節が来ています。思うに菜の花は、香水のように液体の自然揮発を利用した芳香ではなく、能動的に生命活動として香りを発しています。菜の花の香り作りを困難にしている一つの原因です。
生命の香りにかなう訳がありません。
仮に「菜の花オードパルファン」ができても世間の笑いモノになるか「ウケ狙い?」ととられ、ビジネス的には有望と言えないこのプロジェクト。何年かかけて実現したいと考えています。
(2008-04-15)
( 香水工場の )
香る生活
香水ファンの嘆き「愛用製品の生産中止」
お客さまからのコメントです。
「15年来、○○というメーカーのティーローズのトワレを愛用していたのですが、製造元がなくなってしまったらしく(今はまだあちこちのお店で在庫が売られているようですが)・・・」
この嘆きは、香水ファンの典型的な嘆き「愛用の製品が生産中止になった」の一つです。このメーカーさんは製造を中止したわけではないようですが、消費者から見えれば「愛用製品の生産中止」です。
先日、別のお客さまからこういうメールをいただきました。
「以前、ミニボトルで「星座」の香水を購入し、とても気に入りましたので、『花火』が少なくなったら購入しようと思っておりました。最近ようやく念願かなえて購入しましたが、ミニボトルのものとかおりが異なるようなのです。当時は新しい瓶ではなかったので、リニューアルした際に新しくかおりも変わって発売されたのでしょうか。・・・」
ご指摘の通りです。昨年「星座」を行いました。このお客さまは、ちょうどリニューアルの時期をまたいでご購入いただいたようです。
「星座」のリニューアルは一部の原料が生産中止になったためです。香水類は原料は、天然香料であれ合成香料であれ、入手できなくなる場合がかなり頻繁に発生しています。
それに加え行政規制や自主規制などで毎年使えなくなる香料がでています。反面新しい香料も毎年作り出され香料メーカーや原料メーカーなどからリリースされています。
「星座」のリニューアルは、オリジナルの香りをそれなりに再現していますが、微妙に違うのも事実です。原料が違うと素直に再現できるモノもありますが、完全な復元が困難な場合も少なくありません。
この辺は香水の運命で、さまざまなメーカーで生産中止になっていくプロダクトが多い一方で消費者の強い要望があるにもかかわらず再リリースできない一つの原因になっています。
「星座」の新バージョンは一般の方には受け入れやすいようで以前より若干人気が上がりましたが、香りは個人ごとの嗜好が強いですので(その方が香水文化のレベルが高い)、このお客さまのように残念に思われる方もおられます。避けがたい宿命です。
香水の歴史には数々の「名香」伝説が残されていますが、現在の私たちがそれを試したいと思っても製造中止になっているものも少なくなく残念です。それだけの知名度やブランド力があれば再リリースしても充分にビジネスとして採算ラインに乗りそうな気がするのに・・・
以前のこの辺の裏事情を「廃盤になった香水の復刻」というタイトルで投稿させていただきました。一度廃盤になるとやっぱり廃盤でいたいとう気がしないでもないです。
(2008-04-14)
「15年来、○○というメーカーのティーローズのトワレを愛用していたのですが、製造元がなくなってしまったらしく(今はまだあちこちのお店で在庫が売られているようですが)・・・」
この嘆きは、香水ファンの典型的な嘆き「愛用の製品が生産中止になった」の一つです。このメーカーさんは製造を中止したわけではないようですが、消費者から見えれば「愛用製品の生産中止」です。
先日、別のお客さまからこういうメールをいただきました。
「以前、ミニボトルで「星座」の香水を購入し、とても気に入りましたので、『花火』が少なくなったら購入しようと思っておりました。最近ようやく念願かなえて購入しましたが、ミニボトルのものとかおりが異なるようなのです。当時は新しい瓶ではなかったので、リニューアルした際に新しくかおりも変わって発売されたのでしょうか。・・・」
ご指摘の通りです。昨年「星座」を行いました。このお客さまは、ちょうどリニューアルの時期をまたいでご購入いただいたようです。
「星座」のリニューアルは一部の原料が生産中止になったためです。香水類は原料は、天然香料であれ合成香料であれ、入手できなくなる場合がかなり頻繁に発生しています。
それに加え行政規制や自主規制などで毎年使えなくなる香料がでています。反面新しい香料も毎年作り出され香料メーカーや原料メーカーなどからリリースされています。
「星座」のリニューアルは、オリジナルの香りをそれなりに再現していますが、微妙に違うのも事実です。原料が違うと素直に再現できるモノもありますが、完全な復元が困難な場合も少なくありません。
この辺は香水の運命で、さまざまなメーカーで生産中止になっていくプロダクトが多い一方で消費者の強い要望があるにもかかわらず再リリースできない一つの原因になっています。
「星座」の新バージョンは一般の方には受け入れやすいようで以前より若干人気が上がりましたが、香りは個人ごとの嗜好が強いですので(その方が香水文化のレベルが高い)、このお客さまのように残念に思われる方もおられます。避けがたい宿命です。
香水の歴史には数々の「名香」伝説が残されていますが、現在の私たちがそれを試したいと思っても製造中止になっているものも少なくなく残念です。それだけの知名度やブランド力があれば再リリースしても充分にビジネスとして採算ラインに乗りそうな気がするのに・・・
以前のこの辺の裏事情を「廃盤になった香水の復刻」というタイトルで投稿させていただきました。一度廃盤になるとやっぱり廃盤でいたいとう気がしないでもないです。
(2008-04-14)
( 香水工場の )
香る生活
贋物(ニセモノ)でもハッピー
テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」のおかげで骨董品ブームが起きたり古美術品に関心を抱く人が増えました。逆に古美術品を投機目的、商売として参入する層も増えて骨董品市場の混乱気味になっていないかと余計な心配もしてしまいます。
「開運!なんでも鑑定団」の功罪は、いろいろ賛否両論あると思いますが、番組自体はエンターテイメント・ショーですので娯楽として割り切って楽しんでいる方も少なくありません。
掘り下げた分析より、ショーらしく「ホンモノ」「ニセモノ」そして「いくら」と、わかりやすく一刀両断にスパッと行くところに、茶の間の私たちも、出品者と同じくドキドキハラハラしながら期待と失望を共感できます。
番組を見ていると見事な絵画や渋い陶器がアップでグーと映し出されると・・・「オレなら欲しい!」とテレビを見ていて心中声に出すことがあります。
ところが、多大な期待も、鑑定結果で「ニセモノ」と宣言され、会場から爆笑を浴びたり、本物でも極端に市場価格が安かったりすると出品者の表情がうつろに緩むみます。その微かな哀愁がまたなんとも人生の悲哀を感じさせます。
骨董収集が転売目的なら「ホンモノ」か「ニセモノ」かは、売上のリアルな分かれ目ですが、自分の趣味で集めているコレクターさんなら自分が「好き」かどうかが価値の分かれ目であり、自分が持ち込んだ特別な一品が、仮にも「ニセモノ」と鑑定されても、好きなら気にしないし、持ち続けるし、使い続けるコレクターが多いのではないかと思います。
鑑定団で付けられるプライスの定義を私は知りませんが、常識的に考えてると「予想市場価格」でしょうか?
持ち主がそれを販売できる価格でもなければ、鑑定人がそれを買い取る価格でもなく、鑑定人がもし市場でそれを売りさばくとしたら「自分なら、これくらいの値段を付ける」という値段で、売れるかどうかは別問題。
プライスの決定は、それを欲しがる人は多いか、希少性があるかなどマーケティング事情が重要であり、作品の芸術的価値や資料的価値、モノのよさとは必ずしも連動していません。
だから、真のコレクターには、肩書きにはとらわれず、品質・内容重視で、好きならニセモノでもいいという人も少なくないかもしれません。
ながながと骨董ファンの話をしてきましたが、香りファンも似たようなことが言えるかもしれません。
先日、あるお客さまから海外で購入したある精油が100%ナチュラルピュアかどうか判断できませんか?という質問をいただきました。現地で気に入り海外旅行のお土産に購入されたそうですが、帰国後、現地で説明されたように本当に「100%ナチュラルピュア」かどうしても気になるそうです。理由は「お値打ち」だったからのようです。
「その香りは好きですか?使い心地に問題はありませんか?」
とても気に入っているし、日本でも売っていたらもっと買いたいくらいとのこと。それなら問題はないと思います。
「100%ナチュラルピュア」かどうかはそもそも技術的に判別不可能です。先日投稿した「花の香気成分はナゾだらけ、ガスクロ体験」は香気分析の限界に触れました。
ヨーロッパでは100%ナチュラルピュアと言いながら合成香料がよく使用されると聞いています。それは天然香料の定義が日本と違うためですが、「オーガニック」「有機栽培」「無農薬」なども同様な状況を呈しています。近年はオーガニックなどのサーティフィケイト(有機証明書)を発行する認証会社によって定義されはじめましたが、まだまだ混沌としています。
たとえば、バラのある香気成分はバラからも採れますし、石油からも合成可能ですが、出来上がった成分はそれがバラ由来か石油由来か分子構造的に判別不可能です。あるヨーロッパの香料会社の方はそれをどちらも「天然香料」と説明していました。会社の正式な見解かどうかは不明ですが、腰を抜かしたものです。
天然由来成分は一般に純度が低く雑多な微量成分や農薬、さらに言えばヒ素や水銀などの重金属などが微量に混じっていることが多いので、変な話ですが、これらが観察されると天然由来の証拠の一つになります。
逆に不純物の混入が少なく純度が極めて高いと合成香料の可能性が高いです。合成香料は純度が高いため医薬業界からは愛されます。
このように分析には技術的に限界がありますし、分析コストの問題もありますので、香水メーカーでさえ原料香料の仕入れは、トレーサビリティがしっかりしていて、信用できる取引先から仕入れるというスタンス的な取り組みを重視しています。
「どこかの貿易会社や商社で安く売っていたから」とか「知らない営業マンが行商に来たから」というプライスだけの理由で仕入先を決定するのは恐ろしくてなかなか取り引きできないものです。
(余談ですが、信じがたいような価格で化粧品原料が売りに出されることがありますが、ちゃんとした事情があるものもあるはずですが、一般の化粧品はそのスポット的なお値打ちには手を出さないところも多いと思います。)
そんな背景があり「100%ナチュラルピュア」かと質問されても、お答えできない状況です。だから、自分の感性と理性とで判断し選んで頂くしかありませんとお答えするのがやっとです。一応原則は「購入は信用できるショップで」であること。
一回限りの出店や出品したショップなどでは手を出さす、何年も専門的にやってきているショップなら仕入れも信用のあるルートを使用しているでしょうし、自分達である程度品質を知っていますので鑑識眼もありデタラメな商品は扱わないと思います。観光地のお土産やさんで販売されているものは私などは若干心配です。
しかし、最終的には使う本人が自分が気に入るかどうかが最大の分かれ目であり、それが「好き」で、使用しても問題が起こらなければ、天然であろうと合成であろうと関係ないと私は考えています。
ある方から持ち込まれた精油は鼻が利かない私でも「これは天然だけではムリ」と即断したものがありますが、ご本人は心底その香りに惚れられていました。これが大切です。
(2008-04-13)
「開運!なんでも鑑定団」の功罪は、いろいろ賛否両論あると思いますが、番組自体はエンターテイメント・ショーですので娯楽として割り切って楽しんでいる方も少なくありません。
掘り下げた分析より、ショーらしく「ホンモノ」「ニセモノ」そして「いくら」と、わかりやすく一刀両断にスパッと行くところに、茶の間の私たちも、出品者と同じくドキドキハラハラしながら期待と失望を共感できます。
番組を見ていると見事な絵画や渋い陶器がアップでグーと映し出されると・・・「オレなら欲しい!」とテレビを見ていて心中声に出すことがあります。
ところが、多大な期待も、鑑定結果で「ニセモノ」と宣言され、会場から爆笑を浴びたり、本物でも極端に市場価格が安かったりすると出品者の表情がうつろに緩むみます。その微かな哀愁がまたなんとも人生の悲哀を感じさせます。
骨董収集が転売目的なら「ホンモノ」か「ニセモノ」かは、売上のリアルな分かれ目ですが、自分の趣味で集めているコレクターさんなら自分が「好き」かどうかが価値の分かれ目であり、自分が持ち込んだ特別な一品が、仮にも「ニセモノ」と鑑定されても、好きなら気にしないし、持ち続けるし、使い続けるコレクターが多いのではないかと思います。
鑑定団で付けられるプライスの定義を私は知りませんが、常識的に考えてると「予想市場価格」でしょうか?
持ち主がそれを販売できる価格でもなければ、鑑定人がそれを買い取る価格でもなく、鑑定人がもし市場でそれを売りさばくとしたら「自分なら、これくらいの値段を付ける」という値段で、売れるかどうかは別問題。
プライスの決定は、それを欲しがる人は多いか、希少性があるかなどマーケティング事情が重要であり、作品の芸術的価値や資料的価値、モノのよさとは必ずしも連動していません。
だから、真のコレクターには、肩書きにはとらわれず、品質・内容重視で、好きならニセモノでもいいという人も少なくないかもしれません。
ながながと骨董ファンの話をしてきましたが、香りファンも似たようなことが言えるかもしれません。
先日、あるお客さまから海外で購入したある精油が100%ナチュラルピュアかどうか判断できませんか?という質問をいただきました。現地で気に入り海外旅行のお土産に購入されたそうですが、帰国後、現地で説明されたように本当に「100%ナチュラルピュア」かどうしても気になるそうです。理由は「お値打ち」だったからのようです。
「その香りは好きですか?使い心地に問題はありませんか?」
とても気に入っているし、日本でも売っていたらもっと買いたいくらいとのこと。それなら問題はないと思います。
「100%ナチュラルピュア」かどうかはそもそも技術的に判別不可能です。先日投稿した「花の香気成分はナゾだらけ、ガスクロ体験」は香気分析の限界に触れました。
ヨーロッパでは100%ナチュラルピュアと言いながら合成香料がよく使用されると聞いています。それは天然香料の定義が日本と違うためですが、「オーガニック」「有機栽培」「無農薬」なども同様な状況を呈しています。近年はオーガニックなどのサーティフィケイト(有機証明書)を発行する認証会社によって定義されはじめましたが、まだまだ混沌としています。
たとえば、バラのある香気成分はバラからも採れますし、石油からも合成可能ですが、出来上がった成分はそれがバラ由来か石油由来か分子構造的に判別不可能です。あるヨーロッパの香料会社の方はそれをどちらも「天然香料」と説明していました。会社の正式な見解かどうかは不明ですが、腰を抜かしたものです。
天然由来成分は一般に純度が低く雑多な微量成分や農薬、さらに言えばヒ素や水銀などの重金属などが微量に混じっていることが多いので、変な話ですが、これらが観察されると天然由来の証拠の一つになります。
逆に不純物の混入が少なく純度が極めて高いと合成香料の可能性が高いです。合成香料は純度が高いため医薬業界からは愛されます。
このように分析には技術的に限界がありますし、分析コストの問題もありますので、香水メーカーでさえ原料香料の仕入れは、トレーサビリティがしっかりしていて、信用できる取引先から仕入れるというスタンス的な取り組みを重視しています。
「どこかの貿易会社や商社で安く売っていたから」とか「知らない営業マンが行商に来たから」というプライスだけの理由で仕入先を決定するのは恐ろしくてなかなか取り引きできないものです。
(余談ですが、信じがたいような価格で化粧品原料が売りに出されることがありますが、ちゃんとした事情があるものもあるはずですが、一般の化粧品はそのスポット的なお値打ちには手を出さないところも多いと思います。)
そんな背景があり「100%ナチュラルピュア」かと質問されても、お答えできない状況です。だから、自分の感性と理性とで判断し選んで頂くしかありませんとお答えするのがやっとです。一応原則は「購入は信用できるショップで」であること。
一回限りの出店や出品したショップなどでは手を出さす、何年も専門的にやってきているショップなら仕入れも信用のあるルートを使用しているでしょうし、自分達である程度品質を知っていますので鑑識眼もありデタラメな商品は扱わないと思います。観光地のお土産やさんで販売されているものは私などは若干心配です。
しかし、最終的には使う本人が自分が気に入るかどうかが最大の分かれ目であり、それが「好き」で、使用しても問題が起こらなければ、天然であろうと合成であろうと関係ないと私は考えています。
ある方から持ち込まれた精油は鼻が利かない私でも「これは天然だけではムリ」と即断したものがありますが、ご本人は心底その香りに惚れられていました。これが大切です。
(2008-04-13)
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