( 香水工場の )
香る生活
キャロンを使った香水はありますか?
(2025/08/14)
(夏の海は記憶に残りやすい)
若い頃、マリンノートの香水を愛用されていたとのこと。年齢を重ね、またあの頃の香りを付けたくなり、市販の香水を数点購入されたが、ちょっと違っていた。
武蔵野ワークスさんにキャロンを使った香水はありますか?というご質問でした。
Calone(カロン、キャロン)とはメロンや水のような匂いの香料。オゾンノート(別名、マリンノート、アクアノート)の香調を演出するアーティフィシャルな原料。
(※キャロンは昔、私が書いた記事「マリーン・タイプ(海をイメージ) 後編」を参照)
当社はキャロンに対してあまり好みを感じられず、キャロンを使った製品は製造していない。だから素朴に「ございません」の一言の返事しかできない。
製品があれば商品名はこれで、こんな香りです、ぜひお買物をご検討願う!という流れになるのですが・・
ないので「残念ながらございません」という返事となった。これでこの会話は終了したが、感じることがあったので記事にしてみた。
これは香水好きには、共感する衝動かも。
香水好きな人は多いが、一生絶え間なく使うという人はむしろ少数派。
10代で背伸びして手にした香水・・はじめての香水に驚き魅了され使うようになっても30過ぎて止める人は多い。
とくに女性は妊娠でやめてる人の話はよく聞く。
出産し子育てして子供が大きくなって手離れすると、また香水を使ってみたくなる人とそのまま香水への関心は失われる人がいて、どちらの比率が高いのか調べたことはないが、後者のような気がする。
一部の人は若い頃に愛用していた香水をもう一度使いたいという人も出てくるだろう。
そういう人々には、その香水は、たんなる香りではなく過去の記憶=あの頃の人生の記憶となっているはず。
オゾンノートは1980年代の後半から世界的な人気を得るようになり、1990年代の香水業界はオゾンの大いなる隆盛を見た。
イッセイミヤケ『ロードゥ・イッセイ』やブルガリ『プールオム』などからはじまり、『アクア○○』『マリン○○』といったオゾン系がこれでもかと世界中でリリースされた。
日本でもオゾン系は、とくに男性香水で人気だった。このときはじめて香水を買った人も多いでしょう。
仮に20代で香水を使い出し、何らかの理由で30代に使わなくなり、50代で再度使ってみれば、あの頃の思い出・・片思いしていた頃、仕事で芽が出ずにもがいていた頃、いろいろな苦い記憶や必死だった頃の記憶が走馬燈のように思い出されるかもしれない。
いろいろと考えさせてくれるご質問だった。

(2025-08-14)

お問合せ
若い頃、マリンノートの香水を愛用されていたとのこと。年齢を重ね、またあの頃の香りを付けたくなり、市販の香水を数点購入されたが、ちょっと違っていた。
武蔵野ワークスさんにキャロンを使った香水はありますか?というご質問でした。
Calone(カロン、キャロン)とはメロンや水のような匂いの香料。オゾンノート(別名、マリンノート、アクアノート)の香調を演出するアーティフィシャルな原料。
(※キャロンは昔、私が書いた記事「マリーン・タイプ(海をイメージ) 後編」を参照)
当社はキャロンに対してあまり好みを感じられず、キャロンを使った製品は製造していない。だから素朴に「ございません」の一言の返事しかできない。
製品があれば商品名はこれで、こんな香りです、ぜひお買物をご検討願う!という流れになるのですが・・
ないので「残念ながらございません」という返事となった。これでこの会話は終了したが、感じることがあったので記事にしてみた。
昔愛用していた香りを再度付けてみたくなる
これは香水好きには、共感する衝動かも。
香水好きな人は多いが、一生絶え間なく使うという人はむしろ少数派。
10代で背伸びして手にした香水・・はじめての香水に驚き魅了され使うようになっても30過ぎて止める人は多い。
とくに女性は妊娠でやめてる人の話はよく聞く。
出産し子育てして子供が大きくなって手離れすると、また香水を使ってみたくなる人とそのまま香水への関心は失われる人がいて、どちらの比率が高いのか調べたことはないが、後者のような気がする。
一部の人は若い頃に愛用していた香水をもう一度使いたいという人も出てくるだろう。
そういう人々には、その香水は、たんなる香りではなく過去の記憶=あの頃の人生の記憶となっているはず。
90年代のオゾン系ブーム
オゾンノートは1980年代の後半から世界的な人気を得るようになり、1990年代の香水業界はオゾンの大いなる隆盛を見た。
イッセイミヤケ『ロードゥ・イッセイ』やブルガリ『プールオム』などからはじまり、『アクア○○』『マリン○○』といったオゾン系がこれでもかと世界中でリリースされた。
日本でもオゾン系は、とくに男性香水で人気だった。このときはじめて香水を買った人も多いでしょう。
仮に20代で香水を使い出し、何らかの理由で30代に使わなくなり、50代で再度使ってみれば、あの頃の思い出・・片思いしていた頃、仕事で芽が出ずにもがいていた頃、いろいろな苦い記憶や必死だった頃の記憶が走馬燈のように思い出されるかもしれない。
いろいろと考えさせてくれるご質問だった。

(2025-08-14)
( 香水工場の )
香る生活
Loveラベンダープレゼント
(2025/08/14)
( Loveラベンダー 4mLボトル )
今年10月1日に「四季香水セット」をリリースする。これに何か小さなプレゼントを付けたいと検討の結果、Loveラベンダー(ラブ・ラベンダー)に決定した。
Loveラベンダーは今まで何度か配布しているので、知っている方もおられ重複になるが、こんな商品ですを記事にした。
文字通りラベンダーのルームフレグランス。机上香(きじょうこう)として小さな空間で香らせることを想定している。
よって化粧品申請はしておらず、お肌に付けることを想定した化粧品ではない。
原料自体は化粧品グレードを使用しているので、お肌に触れて危険などといったことはないので安心してほしい。
また、ほぼおられないと思うが、飲んだり・なめたり・食べたりといったこともお止めください。
(ロシアでは香水を飲む人が以前かなりいたとかで、そういう方々を想定して念のため)
机上香の失敗しがちな点は、小さなお子さんやペットがボトルを倒すケース、ご注意ください。手が届かないところ、ペットが行かないところでの設置をお願いします。
実例はまだ聞いたことがないが、起こりうると思いますので、こちらも早めに注意喚起させていただきます。
( 商品内容:Loveラベンダー本体、ムエット、ペラ説明書、外装箱 )
一番メインの原料はラベンダー精油。正確にはラベンダーの変種ラバンジングロッソというハーブの精油がメイン成分。
ラベンダーのあの甘くて爽やかな香りが空間を満たす。ラベンダー好きには癒やされる香りではなかろうか・・しかしラベンダー嫌いな方には不要な商品ですね・・
今回のLoveラベンダー容器は当社の4mLキューブボトルを利用する。4mLなので、中身は案外あっという間に飛んでいく。
私がテストした限りでは開封設置から1週間程度で中身が揮発し、そこから数日程度香りの余韻が残る感じでした。
(はかない香りですね・・)
( Loveラベンダーのサイズ感 )
毎日液面が下がっていく姿もはかなく味わいがありました。
市販されているルームフレグランスは揮発スピードをコントロールするために揮発調整剤を添加するものだが、今回のLoveラベンダーは調整剤を入れていない。
ラベンダー精油の自然な揮発だけで香る・・室温や湿度、お部屋内の気流の流れ方によって揮発の仕方は変わってくるでしょう。お好きなことを祈る・・

(2025-08-14)

10月1日からのプレゼント
今年10月1日に「四季香水セット」をリリースする。これに何か小さなプレゼントを付けたいと検討の結果、Loveラベンダー(ラブ・ラベンダー)に決定した。
Loveラベンダーは今まで何度か配布しているので、知っている方もおられ重複になるが、こんな商品ですを記事にした。
Loveラベンダーとは?
文字通りラベンダーのルームフレグランス。机上香(きじょうこう)として小さな空間で香らせることを想定している。
よって化粧品申請はしておらず、お肌に付けることを想定した化粧品ではない。
原料自体は化粧品グレードを使用しているので、お肌に触れて危険などといったことはないので安心してほしい。
また、ほぼおられないと思うが、飲んだり・なめたり・食べたりといったこともお止めください。
(ロシアでは香水を飲む人が以前かなりいたとかで、そういう方々を想定して念のため)
机上香の失敗しがちな点は、小さなお子さんやペットがボトルを倒すケース、ご注意ください。手が届かないところ、ペットが行かないところでの設置をお願いします。
実例はまだ聞いたことがないが、起こりうると思いますので、こちらも早めに注意喚起させていただきます。

香りの特徴
一番メインの原料はラベンダー精油。正確にはラベンダーの変種ラバンジングロッソというハーブの精油がメイン成分。
ラベンダーのあの甘くて爽やかな香りが空間を満たす。ラベンダー好きには癒やされる香りではなかろうか・・しかしラベンダー嫌いな方には不要な商品ですね・・
すぐになくなる4mLボトル
今回のLoveラベンダー容器は当社の4mLキューブボトルを利用する。4mLなので、中身は案外あっという間に飛んでいく。
私がテストした限りでは開封設置から1週間程度で中身が揮発し、そこから数日程度香りの余韻が残る感じでした。
(はかない香りですね・・)

毎日液面が下がっていく姿もはかなく味わいがありました。
市販されているルームフレグランスは揮発スピードをコントロールするために揮発調整剤を添加するものだが、今回のLoveラベンダーは調整剤を入れていない。
ラベンダー精油の自然な揮発だけで香る・・室温や湿度、お部屋内の気流の流れ方によって揮発の仕方は変わってくるでしょう。お好きなことを祈る・・

(2025-08-14)
( 香水工場の )
香る生活
暑いため一部商品の販売休止
(2025/07/22)
( 高温リスクのため販売休止 )
昨年、お届けしたねりこ(練り香水)が液状化していたというトラブルが発生しました。
ねりこやベタガードは気温40度を超えると表面からうっすら溶解がはじまり、60度を超えると液体となります。
冷えれば自然に固まり問題なく使えますが、溶けた状態で開封するとこぼれるなどトラブルも発生しがちです。
屋内ポストや宅配BOXではこのようなトラブルのご連絡は現状ありませんが、夏場屋外で直射日光を長時間受けるとポスト内だと40度を超える場合がありますのでご注意ください。
このリスクを回避するため、今年から下記商品に関して「夏季・販売休止」という措置をとることになりました。
ただし問題ない環境の方が圧倒的に多いので、大丈夫と判断される場合は購入可能なページも用意しております。
この時期ご購入を検討される方は、ご自宅や受領場所の環境・事情などをご考慮の上、お買い物をお楽しみください。

(2025-07-22)

暑い夏が来ました
昨年、お届けしたねりこ(練り香水)が液状化していたというトラブルが発生しました。
ねりこやベタガードは気温40度を超えると表面からうっすら溶解がはじまり、60度を超えると液体となります。
冷えれば自然に固まり問題なく使えますが、溶けた状態で開封するとこぼれるなどトラブルも発生しがちです。
屋内ポストや宅配BOXではこのようなトラブルのご連絡は現状ありませんが、夏場屋外で直射日光を長時間受けるとポスト内だと40度を超える場合がありますのでご注意ください。
ねりこ、ベタガードを休止へ
このリスクを回避するため、今年から下記商品に関して「夏季・販売休止」という措置をとることになりました。
ただし問題ない環境の方が圧倒的に多いので、大丈夫と判断される場合は購入可能なページも用意しております。
この時期ご購入を検討される方は、ご自宅や受領場所の環境・事情などをご考慮の上、お買い物をお楽しみください。

(2025-07-22)
( 香水工場の )
香る生活
(2025年)金木犀キャンペーンの中止と四季香水リリース
(2025/07/21)
( キンモくん・・金木犀キャンペーンのキャラクタ )
毎年9月、当社では「金木犀キャンペーン」を開催してきましたが、今年は中止となりました。過去20年でおそらくはじめての中止です。
以前、金木犀香水を製造している競合他社さんはほぼ皆無でしたが、今はメーカーもベンダーも増えてお客様の選択肢は多くなりました。
香水に限らず金木犀商品はコスメ、トイレタリー、果てはトイレットペーパーまで・・
昨年の話ですが、金木犀が咲く頃、近所のドラッグストアに行くと「金木犀コーナー」ができており、金木犀コレクションができていました。スーパーへ行けば金木犀トイレットペーパーがエレベータ横に山積みされていて唖然としました。
(そこまで需要はないと思うのだが・・)
それらを見て当社の金木犀キャンペーンは「もはや来年は断念かも?・・」と脳裡をよぎりましたが、このたび社内ミーティングで正式に中止が決まりました。
数年すればブームも収束するでしょう、そうなれば、またひょっこり再開したいと密かに機会をうかがっております・・再開できる日が楽しみです。
一方、この秋は初の四季香水セットをリリースすることになりました。こちらは当社初のセット商品のリリース、お客様に喜ばれるイベントにしたいと計画中です。
( 四季香水:沈丁花、夏よ華、金木犀、ヘルシンキ空港 )
プレゼントを準備中ですが、まだ詳細が決まっていません。とりあえず決定済みの内容だけを「news:四季香水リリース 10月1日~」としてアナウンスしました。
お楽しみに!

(2025-07-21)

金木犀キャンペーン、今年は中止
毎年9月、当社では「金木犀キャンペーン」を開催してきましたが、今年は中止となりました。過去20年でおそらくはじめての中止です。
以前、金木犀香水を製造している競合他社さんはほぼ皆無でしたが、今はメーカーもベンダーも増えてお客様の選択肢は多くなりました。
香水に限らず金木犀商品はコスメ、トイレタリー、果てはトイレットペーパーまで・・
中止の背景と再開の約束
昨年の話ですが、金木犀が咲く頃、近所のドラッグストアに行くと「金木犀コーナー」ができており、金木犀コレクションができていました。スーパーへ行けば金木犀トイレットペーパーがエレベータ横に山積みされていて唖然としました。
(そこまで需要はないと思うのだが・・)
それらを見て当社の金木犀キャンペーンは「もはや来年は断念かも?・・」と脳裡をよぎりましたが、このたび社内ミーティングで正式に中止が決まりました。
数年すればブームも収束するでしょう、そうなれば、またひょっこり再開したいと密かに機会をうかがっております・・再開できる日が楽しみです。
四季香水リリース 10月1日~
一方、この秋は初の四季香水セットをリリースすることになりました。こちらは当社初のセット商品のリリース、お客様に喜ばれるイベントにしたいと計画中です。
( 四季香水:沈丁花、夏よ華、金木犀、ヘルシンキ空港 )
プレゼントを準備中ですが、まだ詳細が決まっていません。とりあえず決定済みの内容だけを「news:四季香水リリース 10月1日~」としてアナウンスしました。
お楽しみに!

(2025-07-21)
( 香水工場の )
香る生活
香りの花:葛の花
(2025/07/20)
( 案外身近に咲いているクズの花、秋の七草の一つ )
「葛(クズ)」はマメ科のツル性植物の一種だが、おもしろいことに「葛」を「カズラ」と読むと、ツル性植物全般の総称となる。ツル性植物とは自立せずに塀や柵、他の植物などに巻き付いたり這ったりして伸びていく植物のこと。
ツル性植物には非常に多くの種類がある。たとえばバラ科のノイバラやモッコウバラ、ブドウ科のブドウやヤマブドウ。野菜ではキュウリ、スイカ、カボチャなど(これらはすべてウリ科)。
そして忘れてはならないのが、『ジャックと豆の木』に登場するマメ科植物。フジやインゲン、そして今日のテーマであるクズもマメ科である。
『ジャックと豆の木』では、豆の木が一夜にして天まで伸びるが、これはツル性植物の旺盛な生命力を象徴しているように思える。ツル性植物には、巻き付いた他の植物を枯らしてしまうほど強靭なものも多く、他の植物からは“ハゲタカ”的存在として恐れられているのではないかと私は感じている。
(以前、山奥でニシキヘビのように太く成長したフジがスギやヒノキの巨木を枯らしている光景を目撃して以来、そう思うようになった)
クズはそんなツル性植物の一つで、日本全国の山野に広く自生している。都市部の河川沿いや公園などでもごく普通に見かける存在だ。秋の七草の一つでもある。
クズの根からは多量のデンプンが採れるため古くから「葛粉(くずこ)」として利用され人々の飢えを救ってきた。現在でも葛餅(くずもち)や葛切り(くずきり)などの和菓子、葛根湯(かっこんとう)や葛湯(くずゆ)といった漢方・養生食品の原料として重宝されている。
夏から初秋にかけて咲く花は赤紫色の小花がブドウの房のように密集しており、ブドウジュースのような甘くフルーティーな香りを漂わせる。強く香る個体も多く視覚よりも先に香りで「どこかに葛の花が…?」と気づくこともある。
山野を歩いているとき、ふとクズの花の甘い香りに出会うとその芳香に心が踊る。当社の香水『葛の花』は、そんな感動を元に制作した香りである。

このようにクズは、食用・薬用・観賞用の面で非常に優れている一方、成長すると幹が木質化し他の樹木に巻き付いて枯らしてしまうほどパワフルで、厄介者としての一面も持つ。人類にとって実に複雑な関係を持つ植物である。
米国ではクズは侵略的外来種に指定されている。Wikipediaによれば、クズがはじめてアメリカに紹介されたのは1876年のフィラデルフィア万国博覧会とのこと。
クズの葉は栄養価の高い牧草として、またマメ科植物であるため根に根粒菌を持ち土壌を肥沃にするメリットがあった。加えて根が深く張るため土壌流出を防ぐ目的で栽培が奨励された時期があった。
しかしフィラデルフィア万博から150年後、日本のクズはアメリカ南部を覆い尽くす勢いで拡大し続けている。
その旺盛すぎる生命力と繁殖力により送電線、建築物、そして固有植物までもが被害を受けている。駆除活動も行われているが、その除去は多くの場合困難を極める。
現在では「南部を飲み込んだ蔓(Vine that ate the South)」と呼ばれ、生態系に対する重大な脅威として認識されている。日本では米国ほどの被害はないように思うが、その差はわからない。

(2025-07-20)
( 案外身近に咲いているクズの花、秋の七草の一つ )クズとは?
「葛(クズ)」はマメ科のツル性植物の一種だが、おもしろいことに「葛」を「カズラ」と読むと、ツル性植物全般の総称となる。ツル性植物とは自立せずに塀や柵、他の植物などに巻き付いたり這ったりして伸びていく植物のこと。
ツル性植物には非常に多くの種類がある。たとえばバラ科のノイバラやモッコウバラ、ブドウ科のブドウやヤマブドウ。野菜ではキュウリ、スイカ、カボチャなど(これらはすべてウリ科)。
そして忘れてはならないのが、『ジャックと豆の木』に登場するマメ科植物。フジやインゲン、そして今日のテーマであるクズもマメ科である。
『ジャックと豆の木』では、豆の木が一夜にして天まで伸びるが、これはツル性植物の旺盛な生命力を象徴しているように思える。ツル性植物には、巻き付いた他の植物を枯らしてしまうほど強靭なものも多く、他の植物からは“ハゲタカ”的存在として恐れられているのではないかと私は感じている。
(以前、山奥でニシキヘビのように太く成長したフジがスギやヒノキの巨木を枯らしている光景を目撃して以来、そう思うようになった)
人々の生活に深く根ざすクズ
クズはそんなツル性植物の一つで、日本全国の山野に広く自生している。都市部の河川沿いや公園などでもごく普通に見かける存在だ。秋の七草の一つでもある。
クズの根からは多量のデンプンが採れるため古くから「葛粉(くずこ)」として利用され人々の飢えを救ってきた。現在でも葛餅(くずもち)や葛切り(くずきり)などの和菓子、葛根湯(かっこんとう)や葛湯(くずゆ)といった漢方・養生食品の原料として重宝されている。
クズの花と香り
夏から初秋にかけて咲く花は赤紫色の小花がブドウの房のように密集しており、ブドウジュースのような甘くフルーティーな香りを漂わせる。強く香る個体も多く視覚よりも先に香りで「どこかに葛の花が…?」と気づくこともある。
山野を歩いているとき、ふとクズの花の甘い香りに出会うとその芳香に心が踊る。当社の香水『葛の花』は、そんな感動を元に制作した香りである。

このようにクズは、食用・薬用・観賞用の面で非常に優れている一方、成長すると幹が木質化し他の樹木に巻き付いて枯らしてしまうほどパワフルで、厄介者としての一面も持つ。人類にとって実に複雑な関係を持つ植物である。
米国で嫌われるクズ
米国ではクズは侵略的外来種に指定されている。Wikipediaによれば、クズがはじめてアメリカに紹介されたのは1876年のフィラデルフィア万国博覧会とのこと。
クズの葉は栄養価の高い牧草として、またマメ科植物であるため根に根粒菌を持ち土壌を肥沃にするメリットがあった。加えて根が深く張るため土壌流出を防ぐ目的で栽培が奨励された時期があった。
しかしフィラデルフィア万博から150年後、日本のクズはアメリカ南部を覆い尽くす勢いで拡大し続けている。
その旺盛すぎる生命力と繁殖力により送電線、建築物、そして固有植物までもが被害を受けている。駆除活動も行われているが、その除去は多くの場合困難を極める。
現在では「南部を飲み込んだ蔓(Vine that ate the South)」と呼ばれ、生態系に対する重大な脅威として認識されている。日本では米国ほどの被害はないように思うが、その差はわからない。

(2025-07-20)
( 香水工場の )
香る生活
香りの花:フジバカマ
平安貴族を彷彿させる優雅な香り (Updated:2025/07/18, Posted:2021/10/03)
( 秋の七草、藤袴 = フジバカマ )
いろいろな資料にフジバカマは中国~朝鮮半島原産とあり日本には奈良時代に伝えられ、その後日本の大地に帰化したとされる。
もともと日本列島は朝鮮半島と陸続きだった説が有力なので朝鮮半島が原産地なら日本原産の可能性もあるし、奈良時代以前にも日本土着というか日本固有のフジバカマがあってもおかしくないと思う。調べるとそういう説もあるようだ。
フジバカマは、万葉集や源氏物語にも登場するくらいで日本古来から日本人に親しまれた花ということは間違いない。
フジバカマは、中国でも愛される花で、漢名では「蘭草」「香草」「香水蘭」(Wikipedia)と表記されるそうで、名前の通り香りの花として認識されている。日本同様、匂い袋や入浴剤として利用されているという。
(それにしても「香水蘭」とは、本当にスーパー芳香植物と考えられているんですね・・)
平安時代の超絶・長編小説『源氏物語』は恋愛や宮廷内の政争などドロドロの人間模様を描いた世界的な古典だが、その中に「藤袴」というタイトルの「帖」(現代風に言えば「章」)がある。
藤袴帖では、夕霧(ゆうぎり)が父の光源氏(ひかるげんじ)の使いで玉鬘(たまかずら)のもとを訪れ、フジバカマの花を差し出すという場面がある(私は実際に読んでいないのでここは受け売り)。
悩める女性の心をいたわる描写をフジバカマによって象徴的に描いているな~と感じさせるクールな場面ではないか。そして実際の宮廷生活でフジバカマが利用されていたことがわかる章でもある。
フジバカマは着物の香り付けや室内の香り付けとして利用され、あるいは匂い袋の材料になっていたようだ。Wikipediaには「平安時代の女性は、藤袴の香を焚きこめて、香りを身につけていた」とあるが、みなさまの目の前に「藤袴の香を焚き」こめた女性が現れたら、まばゆいばかりにセクシーなことよ・・と感じられるだろう。
私は香水ビジネスに入る以前、フジバカマに関して名前も姿もまったく認知していなかった。
はじめて認識したのは20年くらい前、お香の老舗、京都「松栄堂」さんの店頭でのこと。エントランスでかすかな風に花を揺らしていた鉢植のフジバカマが咲いていた。小さな無数の花が素朴に可愛く、そして微かな香りを漂わせていた。
見とれていると「これがフジバカマです」と店員さんに説明された。ただし全体の形姿は「雑草?」と思う程度の普通の草だった。
(秋の七草とはそういうものである)とも思った。
しかしその香りをイメージした松栄堂さんのお香は和的で懐かしかった。聞けばフジバカマは奈良時代・平安時代の宮廷で愛されていた花・香りとのこと。はじめてフジバカマの名前を知り魅力を体験した。
お香の説明には、生花には香りはなく「花穂を刈り取って束ね、しばし陰干しにしてドライフラワーにすると、にわかに上品でみやびな香りを放つようになる」と書かれていた。
「源氏物語の薫の君や匂宮は、近づくとこんな匂いがしたのだろうか」という一文もあり空想をかき立てられた。
まあ、つまり雅で優雅な香りなのだ。
成分的にはクマリンが香りの特徴的な主体を担っているだけに桜餅のあの懐かしく情緒的な甘さに和んでしまう。
フジバカマの生花には香りはないとされるが、あのとき松栄堂さんのフジバカマに、私は確かに開花した花の香りを感じた気がした、今でもあれは何だったのか?と疑問のままである。
女王クレオパトラ7世は、宮廷をバラの花の香りで満たし、自身もバラ風呂に入り、バラの香油を全身に付け、その香りは多くの権力者たちを魅了したと伝えられている。
日本の平安貴族たちもフジバカマで宮中や自身を香らせた・・時代や場所は違っても案外似ている。
どの時代でも権力者がその権力と権威を誇示するためにファッションと香りは必須アイテムであることを人類の歴史は示している。
フジバカマの繁殖力は強く庭などに不用意に植えると地下茎が猛烈な勢いで拡大し制御不能に陥ると言った園芸愛好家さんの記事がネットで散見できる。
しかしそんなパワフルなフジバカマなのに、一方で絶滅危惧種に指定されている。河川の岸など湿った土地を好むフジバカマだが、なんでも護岸工事などで急速に生息地を失い数を減らしているという。
この説明はもっともに聞こえるものの疑問も感じる。生命力旺盛な植物は生息地が狭まっても荒れ地に生活圏を拡大するものだが、それができないということは、他の植物との競争力に弱いということではないか。
(人の場合も、このタイプ=競争力に弱い人は多い。日本人自体このタイプかも)
私は山野をよく歩く方だが、実際自生しているフジバカマにはなかなか出会わない。このまま減少してしまうと考えると、なんとも惜しい気持ちになる。
20年前、当社にはオードパルファム「藤袴(フジバカマ)」なる香水が存在した。
いつしかひっそりと廃盤となった。原料調達の問題で止めたのか、それとも人気不足でそうなったのか、今となっては定かでない。
20年前の『藤袴』はまだ早すぎたのかもしれない。今ならどうだろう?・・
処方はどこかに残っているだろう。原料がもし入手できるなら香水『藤袴』をリバイバル可能かもしれない・・
復活できればうれしいが、原料はおそらく入手不可で肝心の商業的な採算性と持続性は?・・おそらく厳しいだろう、こちらも悩める課題である。

(2025-07-18)
( 秋の七草、藤袴 = フジバカマ )東アジア原産?・・
いろいろな資料にフジバカマは中国~朝鮮半島原産とあり日本には奈良時代に伝えられ、その後日本の大地に帰化したとされる。
もともと日本列島は朝鮮半島と陸続きだった説が有力なので朝鮮半島が原産地なら日本原産の可能性もあるし、奈良時代以前にも日本土着というか日本固有のフジバカマがあってもおかしくないと思う。調べるとそういう説もあるようだ。
フジバカマは、万葉集や源氏物語にも登場するくらいで日本古来から日本人に親しまれた花ということは間違いない。
フジバカマは、中国でも愛される花で、漢名では「蘭草」「香草」「香水蘭」(Wikipedia)と表記されるそうで、名前の通り香りの花として認識されている。日本同様、匂い袋や入浴剤として利用されているという。
(それにしても「香水蘭」とは、本当にスーパー芳香植物と考えられているんですね・・)
源氏物語の中のフジバカマ
平安時代の超絶・長編小説『源氏物語』は恋愛や宮廷内の政争などドロドロの人間模様を描いた世界的な古典だが、その中に「藤袴」というタイトルの「帖」(現代風に言えば「章」)がある。
藤袴帖では、夕霧(ゆうぎり)が父の光源氏(ひかるげんじ)の使いで玉鬘(たまかずら)のもとを訪れ、フジバカマの花を差し出すという場面がある(私は実際に読んでいないのでここは受け売り)。
悩める女性の心をいたわる描写をフジバカマによって象徴的に描いているな~と感じさせるクールな場面ではないか。そして実際の宮廷生活でフジバカマが利用されていたことがわかる章でもある。
フジバカマは着物の香り付けや室内の香り付けとして利用され、あるいは匂い袋の材料になっていたようだ。Wikipediaには「平安時代の女性は、藤袴の香を焚きこめて、香りを身につけていた」とあるが、みなさまの目の前に「藤袴の香を焚き」こめた女性が現れたら、まばゆいばかりにセクシーなことよ・・と感じられるだろう。
フジバカマの思い出、初のフジバカマ
私は香水ビジネスに入る以前、フジバカマに関して名前も姿もまったく認知していなかった。
はじめて認識したのは20年くらい前、お香の老舗、京都「松栄堂」さんの店頭でのこと。エントランスでかすかな風に花を揺らしていた鉢植のフジバカマが咲いていた。小さな無数の花が素朴に可愛く、そして微かな香りを漂わせていた。
見とれていると「これがフジバカマです」と店員さんに説明された。ただし全体の形姿は「雑草?」と思う程度の普通の草だった。
(秋の七草とはそういうものである)とも思った。
しかしその香りをイメージした松栄堂さんのお香は和的で懐かしかった。聞けばフジバカマは奈良時代・平安時代の宮廷で愛されていた花・香りとのこと。はじめてフジバカマの名前を知り魅力を体験した。
甘く懐かしい香り
お香の説明には、生花には香りはなく「花穂を刈り取って束ね、しばし陰干しにしてドライフラワーにすると、にわかに上品でみやびな香りを放つようになる」と書かれていた。
「源氏物語の薫の君や匂宮は、近づくとこんな匂いがしたのだろうか」という一文もあり空想をかき立てられた。
まあ、つまり雅で優雅な香りなのだ。
成分的にはクマリンが香りの特徴的な主体を担っているだけに桜餅のあの懐かしく情緒的な甘さに和んでしまう。
フジバカマの生花には香りはないとされるが、あのとき松栄堂さんのフジバカマに、私は確かに開花した花の香りを感じた気がした、今でもあれは何だったのか?と疑問のままである。
宮廷&香り=世界の共通性
女王クレオパトラ7世は、宮廷をバラの花の香りで満たし、自身もバラ風呂に入り、バラの香油を全身に付け、その香りは多くの権力者たちを魅了したと伝えられている。
日本の平安貴族たちもフジバカマで宮中や自身を香らせた・・時代や場所は違っても案外似ている。
どの時代でも権力者がその権力と権威を誇示するためにファッションと香りは必須アイテムであることを人類の歴史は示している。
フジバカマ=絶滅危惧種
フジバカマの繁殖力は強く庭などに不用意に植えると地下茎が猛烈な勢いで拡大し制御不能に陥ると言った園芸愛好家さんの記事がネットで散見できる。
しかしそんなパワフルなフジバカマなのに、一方で絶滅危惧種に指定されている。河川の岸など湿った土地を好むフジバカマだが、なんでも護岸工事などで急速に生息地を失い数を減らしているという。
この説明はもっともに聞こえるものの疑問も感じる。生命力旺盛な植物は生息地が狭まっても荒れ地に生活圏を拡大するものだが、それができないということは、他の植物との競争力に弱いということではないか。
(人の場合も、このタイプ=競争力に弱い人は多い。日本人自体このタイプかも)
私は山野をよく歩く方だが、実際自生しているフジバカマにはなかなか出会わない。このまま減少してしまうと考えると、なんとも惜しい気持ちになる。
香水『藤袴』復活は?
20年前、当社にはオードパルファム「藤袴(フジバカマ)」なる香水が存在した。
いつしかひっそりと廃盤となった。原料調達の問題で止めたのか、それとも人気不足でそうなったのか、今となっては定かでない。
20年前の『藤袴』はまだ早すぎたのかもしれない。今ならどうだろう?・・
処方はどこかに残っているだろう。原料がもし入手できるなら香水『藤袴』をリバイバル可能かもしれない・・
復活できればうれしいが、原料はおそらく入手不可で肝心の商業的な採算性と持続性は?・・おそらく厳しいだろう、こちらも悩める課題である。

(2025-07-18)
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