Home > ブログ
リスト表示 | (edit)
( 香水工場の )

香る生活


石鹸で頭を洗いますか?
次バージョン「香るシャワージェル」は、水で流せば「洗剤がきれいに流れ落ちる」ようにしたいので植物由来の石鹸系にすることにしましたが、石鹸で髪の毛を洗うとゴワゴワになりますよね。合成洗剤系のシャンプーは、髪の毛を保護し指通りをよくするための成分を配合しますが、これはお肌にはヌメリとして感じられるため、一つの製品でボディーと髪の毛を両方カバーするのはやや大変です。

それどころか、刺激に比較的敏感な顔にはフェース用ソープ、刺激には強いけど洗浄力や素早い泡切れ、殺菌力を重視したい手にはハンドソープなど、ボディー用洗剤は「ヘア、フェース、ハンド、ボディー」と4種類くらいに分けるメーカーさんがほとんど。

しかし、「香るシャワージェル」は欲張りにもこの4パートをカバーしたいと考えています。すべてをパーフェクトにカバーする必要はなく(実際、不可能ですし)基本機能を満たして、手軽で楽しく使えれることを重視しています。そこで「石鹸で髪の毛を洗うと髪の毛がゴワゴワになる」という問題をどうクリアするか?という悩みがでてきます。

シャワージェル基材の処方を担当している開発スタッフと話し合いました。彼女はおもしろい話をしてくれました。

それは以前自分が開発したトリートメント剤の効果を検証するため自分の髪の毛をわざとゴワゴワにする必要があり、1ヶ月間「石けんシャンプー」を使い続けたそうです。石けんシャンプーとは、シャンプーなのですが一般に市販されている合成洗剤系シャンプーに対して、液体石鹸の成分(ヤシ油などの天然成分)をメインにしたシャンプーです。

石鹸系シャンプーは流通量も種類も少ないので、あえて「石けんシャンプー」と呼ぶメーカーが多いことから広く使用される言葉になったようです。生協さんやナチュラル系ショップなどで販売されています。

さて、その使い心地は?・・・

「はじめは驚きました。髪の毛がギシギシになって指が全然通らない。汚れが落ちなかったのでは?と考えました。ところが、慣れてくるとだんだん髪の毛がイキイキしてきます。一ヶ月もすると病み付きになりました。石けんシャンプーで洗った髪の毛はトリートメントの吸収性が格段に良く、髪の毛がうれしいくらいにまとまります」

彼女の話では「シャンプー」は洗い上がり感触が「石けんシャンプー」より優れているものの、その後のヘアケアは「石けんシャンプー」の方が有利という意見でした。これはすべての石けんシャンプーですべての人に共通する結果かどうかわかりません。あくまで彼女の体験談です。彼女は現在通常のシャンプーに戻ったり石けんシャンプーに行ったりを繰り返している模様です。仕事も絡んでいますので。

そこで一般の方々の意見を調査すべく「シャンプー」VS「石けんシャンプー」をテーマにインターネットで検索をしてみました。

出てくる出てくる・・・

そこにあったのは「石けんシャンプー」賛成派から「石けんシャンプー」信者とも言える人々の熱い訴え。一方「石けんシャンプー」反対派の「ギシギシ嫌い派」から石鹸は禿げの原因とする「ハゲ伝説派」まで。ヘアケアのプロという方の危ない理論と信念まで、素直に信じていたらどこに連れて行かれるのか、インターネット情報は混乱気味のようです。反面、みなさんには関心のあるテーマだからこそ様々な意見がうごめいているのだろうと関心しました。

調査結果を簡単にレビューしてみると・・・

石鹸で髪の毛を洗うと石鹸のアルカリ成分が髪の毛にダメージを加えるためよくないという意見があります。一方、現在の石鹸は普通中性か弱アルカリ性で、しかも肌につけるとすぐに中和されますのでダメージ論には反対意見も多いようです。どれくらい強いペイハー濃度で実験すればキューティクルのダメージが観察されるのかデータは見つけられませんでした。

10代〜20代の男性諸氏を震え上がらせている都市伝説「石鹸で頭を洗うとハゲる」。石鹸が髪の毛のキューティクルにダメージを与えるという人でさえ、頭皮にダメージを与えるという意見はありませんでした。むしろ、ハゲは頭皮や毛根のダメージからの影響が大きいはずです。頭皮は毛根が密集しているため性器周辺とともに体内でももっとも体外成分を皮膚吸収しやすい部分。ケミカル物質を多用するシャンプーの方が石鹸より毛根への影響は大きいように感じます。みなさんはどう感じますか?

一方、石けんシャンプーでハゲが直るという意見がありました。それはどうでしょうか?・・・

「シャンプーでカラダを洗っていいのか?」という疑問も見られました。シャンプーには髪の毛用の成分が多く配合されていますので害ではないもののムダである、という意見が多いようです。しかし、私個人的には髪の毛用の成分にはシリコンなどの表面コート剤が含まれている場合もありますので、できるならボディーには使用しない方がオススメです。ヌメリも気持ちよくありませんし。それにどうしてもシャンプーの方が環境負荷が大きい可能性が高いので。


ユーザーの意見に耳を傾け、コンセプトを満たしつつ一番バランスのよい解決点を探るしかないようです。
(2007-09-26)
( 香水工場の )

香る生活


江戸時代の男性美肌ブーム・・・お洒落心は深い
男性化粧品の市場が急拡大とのニュースがありました。

男性美肌ブームの背景 江戸中期も今も「平和」が要因

振り返れば、江戸時代にも男性美肌ブームが起きていたという。

「江戸初期のびょうぶ絵などには、もみあげを伸ばし、口ひげを生やした男性が描かれていたが、江戸中期になると、もみあげも口ひげも生やさず、体毛もない男性が登場するようになった。」

確かに江戸時代のスーパースターは歌舞伎役者でしたし、彼らは「千両役者」と呼ばれ時代の超高給取り(もともとの意味は年収が千両以上の役者に対して呼ばれたそうです)。歌舞伎役者たるものお肌の手入れは行き届いていたと推測されますが、スーパースターに憧れ、そのスタイルを似せてみようとするのは、我ら庶民の悲しいサガ。江戸時代の男たちが美肌に走ったのは充分納得できる話です。

逆に平和だからこその現象であれば、むしろ喜んでもよいかもしれません。

記事はこう続きます。

「ただし、江戸時代の美肌ブームは明治維新で終焉を迎えた。徳川幕府が敗れ、西郷隆盛のような強靱な男に人気を奪われたからだ。」

多くの天才たちが相い差し違えて死んでいった幕末は血吹雪を流す男たちであふれますが、こういう時代になれば男性のお化粧も吹っ飛びそうです。

それでもダンディな坂本龍馬や土方歳三は、戦乱の中でも香水を付けていたらしいというウワサがあるので、お洒落心は相当深い欲望に根ざしている違いありません。

しかし、そういう欲望こそが人を魅力的にするようにも感じます。


(2007-09-25)
( 香水工場の )

香る生活


マスマーケットに向かうラグジュアリー4
多くの企業がラグジュアリーマーケットへと向かう中、商品の情緒的なストーリーを確立(creating an emotional rapport between the consumer and the product)し、そしてラグジュアリーを維持するために夢を与え続けるための努力が必要と筆者は説きます。その一つは商品ラインの拡張です。この節では紳士服のブランド、エルメネジルド・ゼニアと同じくイタリアの宝飾ブランド、ブルガリが登場します。

-------------(原文訳)--------------
どちらの言い分が正しいのでしょうか?退屈な会社も消費者へのアピールを強めるために商品ラインを拡張していることを考えるとどちらの主張も地固めができておらず、現象としてラグジュアリーマーケットへの志向は多くの企業に広がっているようです。しかし、明白に言えることは消費者と商品の間に心情的に信頼できる関係を築けるかどうかが、この勝負の鍵を握るようです。もし消費者がそれをラグジュアリーと見なしてくれれば、購入に結びつきます。

ラグジュアリービジネスを展開する上での困難は「夢を維持する技術」です。それはお客様に繰り返し喜びを与え続けるという技術です。品質とデザインにおいて常に最高の製品を出し続けるなければならない競争において強い伝統と歴史に裏打ちされたトップブランドは、この点において「手に届くラグジュアリープレイヤー」より一日の長があります。

伝統の紳士服のブランド、エルメネジルド・ゼニアのミラノオフィスを訪問してみると現CEOの祖父が1910年に建てた毛織り工場の写真を見ることができます。そこは現在でもエルメネジルド・ゼニアの多く商品の供給工場です。「ブランドの背景を知りたいと考えるお客様が増えてきました」。このブランドでは30万円程度のスーツを数多く出荷していますが、過去4年間で香水やサングラスも商品ラインアップに加えました。そしてこの秋には男性下着もリリース予定です。

たとえ伝統のある老舗企業でさえこのようにブランドの商品アイテムを拡大することはリスクが伴うのも事実です。「商品の多品種化はこの種のゲームの基本ルールですが、すべての商品に拡大しよいという意味ではありません」とブルガリのCEOは警告します。ブルガリではホテル事業に進出したりスキンケア化粧品にリリースしたりゲームを善戦中ですが「もし何かでヘマをしでかせば、そのプロジェクトの投資額を失うだけでなくブランド全体への影響は避けがたいでしょう」。
-------------(原文訳ここまで)--------------

マスマーケットに向かうラグジュアリー7
マスマーケットに向かうラグジュアリー6
マスマーケットに向かうラグジュアリー5
マスマーケットに向かうラグジュアリー4
マスマーケットに向かうラグジュアリー3
マスマーケットに向かうラグジュアリー2
マスマーケットに向かうラグジュアリー1

---------------QUOTE--------------
So who's right? Neither side is on particularly solid ground, because even the stuffiest companies are stretching themselves wide to appeal to a range of consumers. What's unquestionable, though, is that the key to luxury today lies in creating an emotional rapport between the consumer and the product. If enough consumers believe it's luxury and are prepared to shell out accordingly, then luxury it is.

The hard part is what Stefania Saviolo at Milan's Bocconi University calls the "art of dream maintenance." It means thrilling your customers and bringing them back again and again. For the accessible-luxury players, the challenge is keeping up quality and design as they produce wave after wave of new products. The big-name houses have an easier time because of their tradition of craftsmanship and strong legacies.

Visit the Milan office of Ermenegildo Zegna, CEO of the eponymous men's wear firm, and you'll find a picture of his grandfather's woolen mill in Trivero, where the firm began in 1910 and where much of its production is still based. "More and more customers want to know what is behind the brand," Zegna says. The firm sells a lot of $2,500 suits, of course, but in the past four years it has also rolled out its own fragrance and sunglasses. This fall it will introduce a line of underwear.

Stretching your brand like this can be risky, even for the most history-laden houses. "Diversification is the rule of the game, but you can't do everything," warns Francesco Trapani, CEO of Italian high-end jeweler Bulgari, which has gotten into hotels and is about to launch a line of skin-care products. "The danger is, you do something badly, and then you don't just lose money but your reputation."
---------------QUOTE--------------


(2007-09-24)
( 香水工場の )

香る生活


香も食も、体力あってこそ

現場で生産立ち会い


先日は、この秋の分の香水の生産のため終日工場に詰めていました。

生産作業は10人以上のスタッフで行います。私も香水製造に参加することが多々あります。

ところで、工場に行くタイミングは、様々な製品開発のミーティングの機会でもあるのですが、今回は香水製造の合間に開発スタッフと「香るシャワージェル」の打ち合わせを行いました。

成分選択や配合比率はまだまだ悩みそうです。


ニオイで疲れる一人のスタッフ


今回「香るシャワージェル」の基材の処方開発を行っているのは女性のスタッフ。現在妊娠中。見るからに顔色が優れないのでお聞きすると「匂いで疲れる」とのこと。

化粧品工場のさぞキツイ薬品臭を想像される方もおられるかもしれませんが、この工場ではある大手さんの精油(エッセンシャル・オイル)のボトリングも行っていて、工場全体がラベンダー、グレープフルーツ、カモミールなどのうっとりさせる香りに包まれています。

ラベンダーが香る工場は、O-157もインフルエンザも寄せ付けず、人をますます健康にさせてくれそうですが、

「仕事を終えて帰宅すると通常の2倍くらい疲れを感じる」

とのこと。香りの楽しさを味わうにも体力がいるのが実感させられました。


香りがかわらなくなった闘病生活


前に、フローラル・フォーシーズンズをお買い上げいただいたお客様が、直後病気のため入院することになりましたが、闘病中は「香りがわからなくなった」とおっしゃておられました。


ニオイで吐き気、闘病生活


私の場合、何年か前、ベトナムを旅行中のことです。ホーチミンの屋台で食中毒をもらい、発病したフエのホテルではまるまる2日間、ベッドから起き上がることができない状態になりました。

ベトナムの京都と呼ばれるフエですが、観光どころの話ではありません。トイレに行くにはほふく前進。苦しかったです。

そのときは、一切の食事の匂いが吐き気を催すというありさま。ちょっとでも食べ物の匂いがしてくるといたたまれない気分の悪さ。

体力あってこそ


香りの楽しさ・香水の楽しさは、健康あってこそ、健康の上に成り立っていることを思い知らされます。

(2007-09-23)
( 香水工場の )

香る生活


マスマーケットに向かうラグジュアリー3
前回は、さまざまなラグジュアリープレイヤーが出現したこととラグジュアリーという意味の混乱、そしてプレイヤー同士のバトルを見てきましたが、今日はその続きです。巨人たちの激闘を垣間見ます。

-------------(原文訳)--------------
豪華なヴィトンの店舗デザイナーPeter Marino氏が語るところによれば、ラグジュアリーの真髄は、限られた人にしか手に入らないという点に集約されるとのことです。彼は言います。

「コーチなどは、ラグジュアリーとは無縁です。ああいうお店は鉄鉱石でも何でも売っていてもおかしくはないのですが、たまたまバッグを売っているという感じです。ラグジュアリー・バッグの制作とは、中国で若い娘さんに縫製機を与えて作るよなものとはワケが違いす。精選された素材だけを使用し職人の手による高度な技術と希少性がモノを言う世界なのです。」

グッチでは、グループ内のステラ・マッカートニーがH&Mのためにデザインした2005年コレクションをこのように酷評しています:

「あれは、ブランドというよりH&Mの知名度を上げる一度限りの販促プロモーションのようなもの」


一方「手に届くラグジュアリー」プレイヤーたちも毅然としています。Mizrahi氏はターゲット社とのコラボに対する非難を「ブランド差別主義者たち」と反論します。「本当にラグジュアリーであるためには様々な要素を必要とするし、現実を直視したらどうでしょうか」と。コーチのCEO、Frankfort氏も黙っていません。「彼らは、以前ブランドは民主主義化されたと言っていたものですが、自分たちの発言を忘れたんでしょうかね?」。コーチは品質に関してこのように主張します。コーチのバッグの原料は一部はヨーロッパのブランドが仕入れるまったく同じなめし革工場から仕入れます。完成度もなんら引けは取りません。途上国での生産はコストカットできる分を消費者に還元できるのです。
-------------(原文訳ここまで)--------------


「みんなが買えるわけでないからこそ、ラグジュアリーなのだ」という理論は本音ながら大胆です。そのあとに続くコーチへの辛辣なこき下ろし「has nothing to do with luxury」(コーチはラグジュアリーと無関係)は、取材した記者さんが何か相当焚き付けたあとやや高揚した発言でないかと勘ぐりたくなります。

ヴィトンとコーチには根深い対立があるのかもしれません。ニュースを調べると、2005年ヴィトンによるコーチの事業妨害疑惑がありました。日本市場で立ち上がるコーチの営業妨害を行ったとしてコーチが公正取引委員会に是正を求める申立書を提出したとのこと。妨害の事実は不明ですが、悪いReputation(評判)を起こさせないことをブランドの信条とするヴィトンには痛手の事件だったに違いありません。

この後に記事に日本で20代女性のヴィトン製品普及率90%以上という内容ができていますが、もしこの数字が本当だとするとヴィトンの「限られた人だけだからラグジュアリー」戦略には迷いが感じられます。あるいは日本市場は例外中の例外なのかもしれません。

マスマーケットに向かうラグジュアリー7
マスマーケットに向かうラグジュアリー6
マスマーケットに向かうラグジュアリー5
マスマーケットに向かうラグジュアリー4
マスマーケットに向かうラグジュアリー3
マスマーケットに向かうラグジュアリー2
マスマーケットに向かうラグジュアリー1

---------------QUOTE--------------
Peter Marino, who designs those costly Vuitton stores, argues that the whole point of luxury is that it isn't accessible to everyone. "Coach has nothing to do with luxury," he says. "It could be selling iron ore, but it just happens to sell handbags. This is not about girls in China with a sewing machine, but about workmanship, exclusivity, and the sheer gloriousness of the materials." At Gucci, Polet plays down Stella McCartney's 2005 collection for H&M. "It was just a one-off that reinforced the global scale and importance of the brand," he says.

The accessible-luxury crowd is equally adamant. Mizrahi decries critics of his work with Target as "brand racists" and says "it's nearly impossible to be luxurious without mixing it up and keeping it real." At Coach, CEO Frankfort concurs. "When did they last speak to a consumer?" he asks of his detractors. "Luxury has been democratized." As for quality, Frankfort insists that Coach bags "are as well made as products anywhere. We even source from some of the same tanneries as European houses. But because we manufacture in low-cost countries, we can pass the savings on to consumers."
---------------QUOTE--------------

(2007-09-22)
( 香水工場の )

香る生活


マスマーケットに向かうラグジュアリー2
「マスマーケットに向かうラグジュアリー」の2回目です。拡大するラグジュアリーは、次第にピラミッド化の様相を見せていますが「真のラグジュアリー」対「手の届くラグジュアリー」、また「ヨーロッパのラグジュアリー」対「それ以外のラグジュアリー」というバトルも目が離せません。では、さっそく・・・


-------------(原文訳)--------------
世界的に好調な経済状況を反映してラグジュアリーのセールスは今や小売りベースで25兆円市場、過去10年間で約2倍へと拡大しました。そのため今までラグジュアリーと無縁だった企業もラグジュアリー・ビジネスへと続々と参入。彼らは自分たちを「アクセシブル・ラグジュアリー=手に届くラグジュアリー」の提供者であり、上質なバリューを提供する企業であると主張しています。

コーチ社はその典型です。それまで退屈な皮革製造会社だったコーチは1990年代中頃「ルイ・ヴィットンより安いルイ・ヴィットン」と自分たちをポジショニングしなおし、その結果、コーチの4万円程度のバッグは今では飛ぶように売れています。マス・マーケッターも続々と「手に届くラグジュアリー」に参入してきました。たとえばマス・マーケティングで成長してきたH&M社やターゲット社は世界のトップデザイナーを起用するようになりました。トップデザイナーたちとのパートナーシップを通して「人々は、ハイセンスなファッションが必ずしもハイプライスであることとは関係ないことを知るようになりました」とターゲットは語ります。


しかし、このように誰でもラグジュアリー商品を販売するとなると、そもそもラグジュアリーって何?という回帰的な疑問に戻ることになります。リッツ・カールトンの社長は「最近では、ラグジュアリーというコトバは英語で最も安易に使われるコトバです。一番安い自動車でさえラグジュアリーというコトバが使用されない広告はありませんからね」

2500万円のルイ・ヴィトン タンブール トゥールビヨン ウオッチは「ラグジュアリー」に違いないでしょうが、さて3万円のヴィトン サングラスは「ラグジュアリー」でしょうか?ステラ・マッカートニーがH&Mのためにデザインしたコレクションとグッチグループ内の自身のブランド「ステラ・マッカートニー」では価値は違う?

ウォールストリートの見解はこうです:ラグジュアリーといってもそれは今や巨大なピラミッド構造になっており、頂点のカルティエ、ヴィトンから下の方のコーチまでラグジュアリーの許容範囲は広大。この分野は今後も年率10%程度の成長が見込めるでしょう。


しかし、いろいろなプレイヤーを「ラグジュアリーピラミッド」として一緒くたに扱う考え方に怒り心頭な意見もあります。ルイ・ヴィトンのCEOは、他のラグジュアリープレイヤーと一緒にされることにバカバカしさを感じています。

「私たちは、他社とは歴然たる違いがあるのです」。

「消費者はみなさんが考えるよりもっと知的ですよ。ラグジュアリーの意味を理解し、ラグジュアリーであるためのルールに敬意を払うブランドは、世界にほんの一握りしかありません」

当然、彼の心中にあるラグジュアリー・ブランドとは、伝統的栄光を受け継ぐヨーロッパのブランドを指します。そして、その条件はこうでなければいけません:

・高度な領域に達している職人精神に貫かれていること
・革新的なデザイン
・セレクティブなディストリビューション・チャネル
・純粋な直営店の存在
・ライセンス生産における厳しいコントロール
・ディスカウントに対する厳しいコントロール
・そしてブランドを傷つける可能性があるいかなるものも排除する態度
-------------(原文訳ここまで)--------------

「ACCESSIBLE LUXURY」(アクセシブル・ラグジュアリー=手に届くラグジュアリー)というコトバは印象的です。現在のラグジュアリーの状況を言い当てる妥当な表現ですが、筆者が言うように誰でも手が届くなら、そもそもラグジュアリーではないんじゃないかという疑問を湧いてくるのも自然です。


前の段落ではアクセシブル・ラグジュアリーを提供するプレイヤーが出てきた事情が書かれていますが、ここでは同一のラグジュアリーブランドが「真のラグジュアリー」と「アクセシブル・ラグジュアリー」を提供するという混乱ぶりに言及しています。しかし、世界の投資家からみればラグジュアリーもピラミッド化しており、いろんなラグジュアリーがあってもいい。プレミア価格でビジネスできるこの分野は毎年確実に儲けられるのだから、とにかく仲良くして儲けてね、と訳すのは意訳のし過ぎでしょうか。


ブランドたる条件は、ブランドの教科書に書かれていそうな内容ですが、「職人精神」と「直営店の存在」は感銘深い。ヨーロッパブランドはもともと店舗兼工房(メゾン)でクリエイターや職人を中心に家族など小規模に経営する形態が多かったものです。

1階がお店、2階が職人達の作業場。作業場には権限の強い頑固一徹の親方職人がいてお店を切り盛りするというメゾンはヨーロッパからギリシア、トルコまで広く存在しましたが、考えてみれば日本の職人産業もなんら変わりがありません。ルイ・ヴィトンのデザイナーさんやクリエイターさん達が京都の職人さんたちと交流会を持ったりすることも理解できます。そこには共通の職人魂が感じられるからに違いありません。

現代の産業形態は、本国でコンセプト・デザインを行い、中国工場で生産し、世界中で売りまくるという構図になってきました。開発者・生産者・販売者が完全に分離していますが、ブランドたるブランドは基本的にメーカーでありながら「直営店」としてブティックやショップを構えること条件としています。メゾンがもともとそういう形態だったという歴史があります。現代の「直営店」はお客さまとの直接のコミュニケーションを重視する狙いがあるのではないでしょうか。

「ラグジュアリーのルールに敬意を払うブランドは、世界にほんの一握りしかありません。それはヨーロッパの伝統的栄光を受け継ぐヨーロッパのブランドだけ」

というルイ・ヴィトンのCEOの発言は、アメリカ人からすれば、アメリカのブランドでは絶対に満たせないものであり悔しい内容かもしれません。これにはニヤリとさせられました。ここには書かれていませんが、同じヨーロッパでも、パリの「コミテ・コルベール」(コルベール委員会、パリのブランドが所属するネットワーク、60社程度、フランス人によるブランド以外は加入できない)のようにフランスのブランド以外、たとえば、プラダやアルマーニ、グッチなどは差別的に見られているようですが、このへんをを考えるとやや恐くもなります。

マスマーケットに向かうラグジュアリー7
マスマーケットに向かうラグジュアリー6
マスマーケットに向かうラグジュアリー5
マスマーケットに向かうラグジュアリー4
マスマーケットに向かうラグジュアリー3
マスマーケットに向かうラグジュアリー2
マスマーケットに向かうラグジュアリー1

---------------QUOTE--------------
Although stock prices have taken a hit in recent weeks, luxury sales have boomed along with the global economy. The world market has doubled in the past decade to about $220 billion a year in retail value. That has encouraged many companies with less pedigree to try to muscle their way in. They call themselves purveyors of "accessible luxury" and claim to be both classy and good value.

Coach (Charts) is a prime example.Starting in the mid-1990s, CEO Lew Frankfort repositioned the stodgy leather-goods firm as a less expensive Louis Vuitton and watched its $300 bags fly off the shelves. Mass marketers are getting in on the act too. H&M first teamed up with Karl Lagerfeld in 2004 and now works regularly with big-name designers. Target (Charts, Fortune 500) deals with Mossimo Giannulli and Isaac Mizrahi. Through these partnerships, says Target VP Trish Adams, "our guests have learned - and come to expect - that high fashion doesn't have to mean high prices."

This jostling for position raises a fundamental question: What does luxury mean if everybody claims to be doing it? "It has become one of the most overused words in the English language," sniffs Simon Cooper, president of Ritz-Carlton, the hotel chain once synonymous with a gilded existence and now slugging it out with a host of competitors. "You can't find an ad even for the cheapest car that doesn't have the word 'luxury' in it."

The question applies equally to the high and the low end. It's easy to understand that a $220,000 Louis Vuitton Tambour Tourbillon gold watch is a luxury item, but can the same be said of $275 Vuitton sunglasses? Is a Stella McCartney collection designed for H&M any different in status from Stella McCartney's collections for her own brand, which is part of the Gucci Group?

Wall Street's answer: Relax. Luxury has become one giant pyramid, it reckons, with brands like Cartier and Vuitton at the top and Coach near the bottom. From its perspective, anywhere in this pyramid is a great place to be, since luxury firms trade at a premium, and industry analysts predict that the market will keep growing at an annual clip of 8% to 10%.

Yet within the sector itself, there's furious resistance to the notion of lumping everyone together. Louis Vuitton chief executive Yves Carcelle is scornful of the idea that most of the others in the pyramid are even competitors. "The confusion does not exist," he says. "Consumers are much more intelligent than one imagines. There are just a limited number of houses that respect the rules of luxury." By that he means predominantly old-line European firms with time-honored traditions, the highest standards of craftsmanship, innovative design, and a selective distribution policy that usually includes a network of wholly owned stores and strict controls on licensing, discounting, and anything else that could hurt a brand's reputation.
---------------QUOTE--------------

(2007-09-21)
search
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 86 | 87 | 88 | 89 | 90 | 91 | 92 | 93 | 94 | 95 | 96 | 97 | 98 | 99 | 100 | 101 | 102 | 103 | 104 | 105 | 106 | 107 | 108 | 109 | 110 | 111 | 112 | 113 | 114 | 115 | 116 | 117 | 118 | 119 | 120 | 121 | 122 | 123 | 124 | 125 | 126 | 127 | 128 | 129 | 130 | 131 | 132 | 133 | 134 | 135 | 136 | 137 | 138 | 139 | 140 | 141 | 142 | 143 | 144 | 145 | 146 | 147 | 148 | 149 | 150 | 151 | 152 | 153 | 154 | 155 | 156 | 157 | 158 | 159 | 160 | 161 | 162 | 163 | 164 | 165 | 166 | 167 | 168 | 169 | 170 | 171 | 172 | 173 | 174 | 175 | 176 | 177 | 178 | 179 | 180 | 181 | 182 | 183 | 184 | 185 | 186 | 187 | 188 | 189 | 190 | 191 | 192 | 193 | 194 | 195 | 196 | 197 | 198 | 199 | 200 | 201 | 202 | 203 | 204 | 205 | 206 | 207 | 208 | 209 | 210 | 211 | 212 | 213 | 214 | 215 | 216 | 217 | 218 | 219 | 220 | 221 | 222 | 223 | 224 | 225 | 226 | 227 | 228 | 229 | 230 | 231 | 232 | 233 | 234 | 235 | 236 | 237 | 238 | 239 | 240 | 241 | 242 | 243 | 244 | 245 | 246 | 247 | 248 | 249 | 250 | 251 | 252 | 253 | 254 | 255 | 256 | 257 | 258 | 259 | 260 | 261 | 262 | 263 | 264 | 265 | 266 | 267 | 268 | 269 | 270 | 271 | 272 | 273 | 274 | 275 | 276 | 277 | 278 | 279 | 280 | 281 | 282 | 283 | 284 | 285 | 286 | 287 | 288 | 289 | 290 | 291 | 292 | 293 | 294 | 295 | 296 | 297 | 298 | 299 | 300 | 301 | 302 | 303 | 304 | 305 | 306 | 307 | 308 | 309 | 310 | 311 | 312 | 313 | 314 | 315 | 316 | 317 | 318 | 319 | 320 | 321 | 322 | 323 | 324 | 325 | 326
月一メルマガ

TOP